レナード・スラットキン指揮 フランス国立リヨン管弦楽団

〈Kitaraワールドオーケストラシリーズ〉

Leonard Slatkinは1944年、ロスアンジェルス生まれ。インディアナ大学、ジュリアード音楽院で学ぶ。1979年にセントルイス響の音楽監督に就任して、同響をアメリカのトップレヴェルのオーケストラに成長させた。80年代後半にはニュ―ヨーク・フィルの次期音楽監督の話もあった。96年にセントルイス響を離れ、ワシントン・ナショナル響音楽監督(96-2008)を務め、2008年からデトロイト響の音楽監督に就任、2011年からはフランス国立リヨン管音楽監督も兼任。バーンスタイン亡き後のアメリカの指揮者として世界中のほぼすべての一流オーケストラに客演している。

レナード・スラットキン指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の日本公演が開催された1988年は私が札幌に転勤してきた年であった。その折のプログラムが手元にあった。全国7都市10公演。当時の日本ツアーの演奏曲目は全公演同一プログラム。《ウォルトン:序曲「ポーツマス」》、《ドヴォルザーク:チェロ協奏曲(チェロ独奏/堤 剛)》、《チャイコフスキー:交響曲第5番》。

当時は札幌交響楽団定期会員になっていてコンサート通いも年20回ほどであった。98年からは札幌コンサートホール開館に伴う海外オーケストラやソリストの来札もあって年4・50回に増えた。その後、札幌ドームでの野球やサッカー観戦も増えて02年から数年は30回程度に減ったが、ボランテイア活動を始めた07年からはKitara通いが年60回に達していた。ここ4年は年80回になっている。
この機会に28年前のスラットキンの札幌公演を懐かしく思い起こした。当時からスラットキンはレヴァイン、M.T.トーマスと共に現役のアメリカ指揮界の“御三家”と呼ばれてきた。3人ともコンクール歴は特になく、ヨーロッパ留学体験もなく、生まれも育ちも米国である。レヴァインもトーマスも指揮台に立ち続けている。スラットキンがセントルイス響の名声を高めた話は世界に知れ渡っている。2013年のヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール(*09年辻井伸行優勝)のファイナルでフォートワース響の指揮をしていた姿をオンデマンドで観ていた。4月にN響に客演した様子がEテレで3週にわたって放映された。スラットキンがトランス=シベリア芸術祭にも参加した姿が3日前のコンサートのプログラムの写真にも載っていた。彼の世界的な活躍ぶりが窺がえた。

リヨン国立管弦楽団(Orchestre National de Lyon)は1969年創設の新しいオーケストラ。クリヴィヌの音楽監督時代(1988-2000)に国際的な評価が確立して、日系の準・メルクル(2005-11)に続いて2011-12年シーズンからスラットキンが音楽監督に就任。リヨン歌劇場のオーケストラを兼ねている。リヨン管を4管編成のオーケストラで今回の来日メンバーは104名。(*日本人女性奏者3名)。

2016年6月23日(木)  19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈Program〉
 ラヴェル:スペイン狂詩曲
       高雅で感傷的なワルツ
       ダフニスとクロエ 第2組曲
 ムソルグスキー(ラヴェル/スラットキン編曲):組曲「展覧会の絵」  

《スペイン狂詩曲》はラヴェル(1875-1937)初の大オーケストラのための作品。4曲構成でスペインのエキゾティックな雰囲気が漂う曲。第1曲「夜への前奏曲」は南国スペインならではの夜の情景が描かれる。第2曲「マラゲーニャ」。第3曲「ハバネラ」のタイトルからもスペイン情緒が漂う。第4曲「祭り」では人々の大騒ぎする模様が生き生きとしてラヴェルの特徴がよく出ている色彩豊かな音楽。

《高雅で感傷的なワルツ》はピアノ独奏曲がオリジナル。“シューベルト風のスタイルで作曲”とラベル自身が述べている。彼が大好きだったウィーンナ・ワルツをラベル流に表現したのだろう。オーケストラへの編曲は1912年でバレエ曲としてパリで初演された。第1曲から第8曲。1曲1分~3分程度の7曲のワルツと第8曲のエピロ―グから成るフランス風の典雅な雰囲気を持つ曲。

《ダフニスとクロエ》はミシェル・フォーキンの台本に基づく、合唱を伴った3部からなる舞踏音楽。ラヴェル作品の中で最大の傑作とされる。4世紀のギリシャの詩人が書いた牧歌劇羊飼いの少年と美しい少女クロエの幼い愛、やがて幸せに至る物語。バレエ音楽は第1部~第3部までの3部構成。管弦楽曲版はバレエの全曲版からから抜粋して「第1組曲」と「第2組曲」が作られた。

今回の《第2組曲》は演奏会で取り上げられる機会は多いが、今までに聴いた記憶はあまりない。楽しみにしていた曲。第1曲「夜明け」、第2曲「パントマイム」、第3曲「全員の踊り」の3曲構成。鳥のさえずり、羊飼いの遠い笛の音で明けてゆく「夜明け」の響きが秀逸。フルート・ソロで始まる得も言われぬ美しさの第2曲には思わず聴き惚れた。第3曲「全員の踊り」では幻想的で壮大な美しさがトゥッティで爆発的に広がって圧倒的なフィナーレ! まさに本日の圧巻といえる音楽であった。ドラマティックな展開を見せるストーリーは実際にバレエを鑑賞してみたい気持ちにさせられた。

ドビュッシーとは違う現代音楽の作曲家としてラヴェルが作り上げた音の世界に浸った時間はすがすがしかった。みずみずしく、ロマンティックな詩情に溢れる音楽を綴ったスラットキン率いるリヨン管の演奏に惹きつけられた。

後半の「展覧会の絵」は何度も演奏機会がある名曲で敢えて詳しい言及は避ける。2014年10月、ケント・ナガノ指揮モントリオール響でもこの曲を聴いたが、フランス系のオーケストラは管楽器が得意な印象を再び強くした。“管弦楽の魔術師”と言われるラヴェルの異才を改めて感じた。
スラットキンは情熱的で生き生きとした指揮ぶりが持ち味だと思うが、オーケストラから引き出す音は見事だと思った。今回は彼自身の編曲だというが細かいことは具体的には判らなかった。
聴き慣れた曲とあって演奏終了時にはブラヴォーの声が飛び交った。アンコールに応えてスラットキンが日本語で“ありがとう”と言って、アンコール曲をゆっくりとした話し方の英語で紹介した。2曲続けて演奏された曲は①オッフェンバック:オペラ《ホフマン物語》から「ホフマンの舟歌」②スラットキン:ツイスト・カンカン(*フレンチ・カンカンのアメリカ版)。和やかな雰囲気の裡にコンサートは終了。

フランス第2の都市リヨンを本拠地とする国立リヨン管によるオール・ラヴェル・プログラムと言えるプログラムのコンサート。ラヴェルだけにフォーカスしたフランス音楽を充分に楽しんだ。

帰りのサイン会に多くの人が列をなした。スラットキンは一人一人に“Hello”と声を掛けて気軽にサインに応じていた。私の番が来て、コンサートの感想を述べて28年前のロンドン・フィルで聴いた話をしたら、ビックリした様子で札幌公演のことは忘れていたようで場所を尋ねてきた。Kitaraでないことを知って、付き人に“新しいストーリーが始まった”と喜んでいた。人柄もおおらかで好印象の音楽家!長い列に並んでいる人のことを考えて余り深入りせずにその場を離れた。

※今回の日本ツアーは札幌で始まり、奈良、大阪、東京、名古屋で終る7公演。大阪・東京ではジョン・ウィリアムズのスピルバーグ映画特集のステージも用意されている。スラットキンのレパートリーの広さを物語るコンサートになるだろう。




  
 
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
最新コメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR