辻井伸行&オルフェウス室内管弦楽団 《圧巻のべート―ヴェン》

世界的な〈オルフェウス室内管弦楽団〉の演奏を初めて札幌で聴いたのが1991年の日本ツアー。1972年創立.、Orpheus Chamber Orchestraの最初の日本ツアーは88年。91年はモーツァルト没後200年記念で1月に国内5都市6公演。当時の札幌公演会場は札幌市教育文化会館大ホール。プログラムによると全曲モーツァルト。「セレナード第6番」、「ホルン協奏曲第3番」、「セレナード第12番」、「交響曲第29番」。来日メンバーは27名で3名の日本人団員もいた。

その時から25年、今回はソリストに人気の辻井伸行を迎えてのツアー。日本国内8都市10公演が7日からスタートした。

2016年6月12日(日) 1:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈PROGRAM〉
 《コリオラン》序曲 作品62
 交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」
 ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」

べート―ヴェンの書いた序曲11曲の作品中、「レオノーレ第2番」、「レオノーレ第3番」が最も有名と思っていたが、最近の演奏会では時間配分の関係で5分~8分程度の「コリオラン」、「エグモント」、「プロメテウスの創造物」が取り上げられることが多い。《コリオラン》は暗くて悲劇的なテーマと対照的な優しい旋律のテーマを持つドラマティックな曲。近年はジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管のべート―ヴェン序曲集で聴くが、やはり生で聴く音楽は迫力が違う。

ここ1・2年「運命」をコンサートで聴く機会が多い。定番の曲でプログラムとして余り歓迎しないが、聴くたびに曲の素晴らしさは感じ取る。「運命の動機」が全楽章で関連して、第1楽章の苦悩に満ちた闘争から第4楽章の勝利の喜びに至る展開が見事に表現される。第4楽章のトゥッティー、満を持してコントラファゴットとトロンボーンが加わっての総奏は聴く者の心に感動を呼び起こした。
聴衆の反応は直ぐホール内に沸き起こった。演奏終了後の大ホールに“ブラヴォー”の声が飛び交った。自分自身にとって近年では一番満足度の高い「運命」だった。

25年前は27名だった来日メンバーが今回は39名。トランペットやトロンボーンなどの楽器を加えてレパートリーを増やした。創立以来、指揮者なしのオーケストラとしてユニークな活動で曲ごとにリーダーが変わる。ソリストとしても活躍しているメンバーたちが高度な音楽性と技術を充分に発揮できる独特の運営と演奏法を工夫して時代の流れに合わせた室内オーケストラとして成長を続けている。
前回と同じメンバーはヴァイオリン奏者3名、ヴィオラとホルン奏者各1名で5人。日本人と思われるメンバーは前回は3人で今回は5人。オーケストラはカーネギ―ホールを本拠地として定期的に日本ツアーを行なっている。
辻井伸行とは2014年に定期演奏会で共演した他にアメリカ国内や日本ツアーを行い、15年にはべート―ヴェンとモーツァルトのピアノ協奏曲のCDもリリース。

2009年以降、辻井人気が続でく日本ツアーは各地で満席状態が続くと予想される。今日の札幌は“YOSAKOIソーラン”で混み合う地下鉄を中島公園駅で降りてKitaraに向かう人の群れが切れ目なく会場まで続いた。チケット購入後に都合で来れなくなった人の空席も見えたが、ホールに入ると人々の期待感が高まっていた。

後半のステージに「皇帝」でオーケストラのリーダーを務める日本人ヴァイオリニストNaoko Tanakaが辻井伸行に腕を添えて登場。辻井は着席すると直ぐに第1楽章で独奏ピアノのメロディを奏でた。ベートーヴェン特有の華麗なカデンッアでは、息をのむようにして耳を傾ける聴衆を彼の音楽に引き込む。全曲の約半分を占める第1楽章。今日座った席はピアノの響板が効果的に響く場所でなくて座席選びに失敗したと思った。辻井の演奏は音の強弱や演奏効果を巧みに使い分けてダイナミックに演奏していた。第2楽章は自由な変奏曲形式の緩徐楽章。第3楽章はロンド形式のフィナーレ。力強い演奏に始まり、ピアノとオーケストラの白熱した掛け合いで高揚感が一段と高まって、ドラマティックなフィナーレとなる。

辻井の演奏を固唾をのんで見守っていた聴衆の割れんばかりの拍手喝采が広がった。アンコール曲は①ショパン:練習曲「革命」。2曲目は耳にした旋律で何の曲かと思っていたら途中からオーケストラも加わった。後で判ったが、②モーツァルト:ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」より第2楽章。珍しいアンコール曲と思ったが彼らとレコーディングした曲の一部だった。
ステージの出入りで介助した田中リーダーもコンマスの仕事もあって心配りも大変な様子。辻井の出番が終わった後で、日本語で挨拶。札幌のお祭りを楽しんだ話の後、オーケストラのアンコール曲の紹介。③メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲より第3楽章「スケルツォ」。
これで終了かと思ったら、外国人ヴァイオリン奏者がとても上手な日本語による丁寧な挨拶(*聴衆から拍手!)で最後の演奏曲を紹介。④エルガー:愛の挨拶。

演奏曲によってリーダーを替え、メンバー全員が平等の立場でアーティストとして認め合って活動している様子がいろんな場面から窺がえた。同じ室内楽団と言っても、特別な運営方針があるのが垣間見えた。音楽の中身も含めて好印象を残したオーケストラ。
彼らの音楽も凄いが、辻井の集客力の凄さを彼らも改めて知ったのではないだろうか。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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