天満敦子ソロ・ヴァイオリン・コンサート

《望郷のバラード》でブレークして話題となり、親しみのある飾り気のない雰囲気の演奏会で人気のヴァイオリニスト、天満敦子。彼女のコンサートを初めて聴いたのはKitaraがオープンした年の1997年11月。大ホールでの演奏曲目を当時のプログラムで確認すると「ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番」、「ポルムべスク:望郷のバラード」、「バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」、「バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番」という本格的なもの。2回目は2003年スワロフスキ―指揮スロヴァキア・フィルとの共演で「ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲」、「望郷のバラード」、「ツィゴイネルワイゼン」と今ではビックリするほどのプログラム。2010年は「フランク:ヴァイオリン・ソナタ」以外は名曲の小品集。
しばらく彼女のコンサートは聴いていなかったので、昨年12月〈ふきのとうホール〉での公演を聴くつもりだった。その時は入院中のため妻にチケットを譲っていた。今回はその埋め合わせのコンサート。Kitaraでは3年半ぶりのリサイタルになるそうである。

2016年5月29日(日) 1:30pm 札幌コンサートホールKitara大ホール

〈Program〉
 J.S.バッハ:無伴奏パルティータ第2番より 「アルマンド」
 カタロニア民謡/カザルス編曲:「鳥の歌」
 シューマン:「トロイメライ」、フォーレ:「シチリア―ノ」、マスネ:「タイスの瞑想曲」
 イギリス民謡/和田薫編曲:「グリーンスリーヴズ」、 フォスター:「スワニー河」
 黒人霊歌:「アメイジング・グレイス」、 ポルムべスク:「望郷のバラード」
 山田耕作・梁田貢/竹内邦光編曲:「この道・城ヶ島の雨」
 熊本県民謡:「五木の子守唄」
 岡山県民謡ー山田耕作/和田薫編曲:「中国地方の子守唄」 
 中田喜直:「雪の降る街を」、 小林秀雄:「落葉松」
 ホルスト:「ジュピター」

今回は小品集のプログラムによる全15曲。前半は外国の作品9曲。後半は日本の曲5曲とホルストの作品。全ての曲が無伴奏で演奏された。叙情味あふれる曲ばかり。
前半の曲は馴染みの名曲小品集だが、選曲に天満の特徴も出ている。アメリカ的性格を持つ歌曲や、黒人霊歌も入れた。
シチリアーナとはイタリアのシチリア島が発祥の舞曲。一昨日の三浦文彰のコンサートでもアンコール曲として演奏され、曲名は同じだが作曲家名が違った。

天満敦子の代名詞とも称される「望郷のバラード」はルーマニアの作曲家の作品。ポルムべスクはブルックナーに師事し、将来を嘱望されていたが29歳の若さでなくなった。この曲は祖国の独立運動に参加して投獄されていた収容所で故郷を偲びつつ書かれたと言う。1992年に天満は文化使節としてルーマニアを訪問した。それが縁で翌年に「望郷のバラード」の日本初演を行い、CDの発表に繋がり大ブレイク。これ以降、彼女はクラシックという従来の枠にとらわれない幅広い音楽活動を展開するようになった。

前半終了後、主催者に促されてのトークだったが、彼女の話を待ち望んでいた客が大部分であったようである。“ピアノなしの無伴奏によるコンサートは節約の為か?”という雑音も聞こえてくるが、“ヴァイオリンだけが奏でる音が堪らなくて”敢えて〈ソロ・ヴァイオリン・コンサート〉も企画していると語った。
ストラディヴァリウスの楽器に出会って29年目を迎えると言う。楽器の29回目の誕生日、6月6日にはウィーン楽友協会のブラームス・ザールでコンサートを開くそうである。“人間とは未婚であるが、ヴァイオリンという旦那さんと結婚して29年目”という彼女の率直な語りに愛器ストラディヴァリウスに寄せる想いが感じとれた。
天満はKitaraホールを埋めた約千名への感謝の気持ちを何度も表し感激している様子であった。何度も来札公演を行っているが還暦を迎えてのKitaraでのコンサートに感慨も一入だったと想像される。
私自身、大ホールではリサイタルでも7・8列目中央に座席をとるのが普通であるが、今日は特別に3列目のほぼ中央に座ってヴァイオリンの弱音を聴きとれるようにした。ステージに近いところで演奏家に密着できた気がした。

後半は日本の童謡・民謡などが中心のプログラム。
「この道」の歌詞には“あかしやの花”や“白い時計台”が出てくる。北原白秋が札幌の思い出を綴った詩とされている。昨日は時計台でボランテイア活動をして観光客に時計台の案内をしたばかりだった。歌曲“城ヶ島の雨”とともに1曲の無伴奏ヴァイオリン曲として味わい深く聴けた。
日本の童謡・唱歌・民謡などはオペラ歌手のプログラムで聴くこともあるが、無伴奏のヴァイオリン曲として聴いたのは初めてかも知れない。叙情味あふれる曲なので、歌詞から情景を思い浮かべながら独特の音を奏でる曲に浸った。特に、「雪の降る街を」は素晴らしくて堪能できた。

天満はコンサートの最終曲はいつも「望郷のバラード」にしていた。2011年東日本大震後の東北のコンサートで最後に「ジュピター」を演奏した。その時以来、「ジュピター」を最後の演奏曲にしているという。札幌では数年来PMF賛歌として親しまれている曲で、客の反応も良くブラボーの声も一段と高かった。ヴァイオリニスト自身もKitaraで思い通りの演奏が出来たようでガッツポーズをしていた。

アンコール曲は「山田耕作:からたちの花」、「佐々木すぐる:月の砂漠」。

昼間に開催されるコンサートではKitaraの行き帰りに通る中島公園の緑の木々の間で、午後の陽射しを浴びて輝くつつじやライラックなどの花が見られる。藤棚の下を通るとウィステリアの独特な香りが漂ってくる。コンサートで演奏されたアンコール曲の余韻に浸りながら歩く楽しさは至福のひと時でもある。(*天気に恵まれないときなどは別にして、地下鉄と直結していないKitaraホールの環境の素晴らしさを改めて痛感!)



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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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