三浦文彰ヴァイオリン・リサイタル(ピアノ:田村 響)

セキスイハイム特別協賛による三浦と辻井のコンサートが5月と6月にKitaraで続く。辻井伸行ピアノ・リサイタルの全国ツアーが1・3月に行なわれて、2月は彼の休みの月かなと思っていた。あとで、2月にはオーケストラとの共演やヴァイオリニスト三浦文彰とのデュオによるコンサートの予定がそれぞれ幾つか入っているのが判ってエネルギッシュな辻井の活動に驚いたことがあった。同時に三浦との交流を知る機会にもなった。

三浦文彰(Fumiaki Miura)は2009年ハノーファー国際コンクールに史上最年少の16歳で優勝。早速、2011年トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーンに登場する予定だったが、東日本大震災のため公演中止となり、翌年の同公演で札幌でのコンサートも実現して「モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第2番」を弾いた。地味な選曲を意外に思ったものである。三浦は2016年1月からはNHK大河ドラマのテーマ曲による斬新なメロディの演奏で一躍脚光を浴びている。

2016年5月27日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈プログラム〉
 ドヴォルザーク:4つロマンティックな小品 作品75
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 作品24 《春》
 服部隆之:大河ドラマ「真田丸」メインテーマ
 タルティ-ニ: ヴァイオリン・ソナタ ト短調 《悪魔のトリル》
 ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ第1番 作品4
 グルック:メロディ~歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」より
 ブロッホ:ニーグン
 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン 作品20

国内外のオーケストラとの共演や国際的な音楽祭出演などで大活躍の三浦の初のヴァイオリン・リサイタルを聴けるのは大きな楽しみだった。ピアニストの田村響は2007年ロン・ティボー国際コンクール優勝(*当時20歳)で大変な話題を集めた。いつかリサイタルを聴きたいと願っていたピアニストで、今回のデュオのプログラムは大歓迎だった。

ドヴォルジャークのこの曲は聴いたことは無いかなと思ったら、5年前の吉田恭子・白石光隆のデュオリサイタルの折に購入した彼らのCDに曲が入っているのに気づいたのが数日前の事。少なくとも1・2度は耳にしている。「カヴァティーナ」、「カプリツィオ」、「ロマンス」、「エレジー」の4曲として構想されたが、無題のまま出版されたという。タイトルがあると曲のイメージも浮かんできて親しめるのにと思った。コンサート当日までに数回聴いておいた。チェコの舞曲や民話をもとにした作品かも知れない。美しい旋律に満ちた15分程度の曲。

ベートーヴェンの10曲のヴァイオリン・ソナタの中で、やはりタイトルのある「春」と「クロィツェル」は馴染みの曲で言及するまでもない。4楽章から成る曲が全編を通して明るい。

前半2曲はピアノとヴァイオリンが対等に渡り合う曲で、三浦も楽譜を前に置いての演奏だったのは意外だった。ピアニストとの呼吸のとり方で慎重を期したのだろう。

後半はテレビを通して毎週日曜日に流れる曲。本人の生演奏で聴くのは堪らない。戦国時代に城を守る武士たちの様子が眼前に浮かぶ。ヴァイオリンのスピード感ある音色が続く演奏に高揚した聴衆の反応は一段と大きくなり会場が盛り上がった。

「悪魔のトリル」は川畠成道が度々演奏していた曲でタイトルを覚えた。イダ・ヘンデル演奏のCDで約15分のソナタを改めて聴いてみた。イタリアの作曲家タルティーニ(1692-1770)が1740年代に“夢の中で、魂を売り渡すのと引き換えに悪魔が聴かせてくれたトリルのパッセージに霊感を受けて”書いたという作品。曲の終盤で絶え間ない“悪魔のトリル”が繰り返される。無伴奏でヴァイオリンが奏でるパートがかなり長く続いたが、目の前で繰り広げられる高度なテクニックに釘付けになった。

ポーランドの大ヴァイオリニスト&作曲家であったヴィニャエフスキ(1835-80)は11歳でパリ音楽院を卒業した天才。ポーランドの舞曲ポロネーズのリズムに合わせて華麗なテーマと陰りのあるトリオが美しいコントラストをなして展開される。レーピンやヴェンゲーロフが得意としているようだが、ロシアでの人気曲なのだろう。勿論、日本でも親しまれている華やかな馴染みのメロディ。

グルック(1714-87)はウィ‐ンを本拠地としてヨーロッパ各地で活躍したオペラ作曲家。歌劇の改革者といわれるグルックの最も革新的な作品から「精霊の踊り」(メロディ)。昨年、五嶋龍がリサイタルのアンコール曲にこの曲を弾いた。クライスラーが編曲したこの曲が吉田恭子のCDに入っていた。花が咲き乱れ、小川が流れる天国の野原で精霊たちが踊る様子が描かれる美しい曲。簡単に弾いているように見えるが、多分この曲も難曲なのかもしれない。

ブロッホ(1880-1959)は作曲家名は曖昧な記憶だけで、作品名は初めて聞く。プログラムの解説によると、スイスの作曲家でヴァイオリンの名手イザイに師事し、アメリカで演奏と教育に携わった。この作品はユダヤ敬虔主義の信者を描いた3枚の絵を表す3曲から成る組曲《バール・シェム》の第2曲。「ニーグン」は即興的な祈りの歌で思ったより親しみやすい曲であった。

サラサーテ(1844-1908)は有名なスペインの作曲家で“パガニーニの再来”と称されたヴァイオリンのヴィルトオーソ。ドイツ語のタイトルは「ジプシーの歌」の意味。チャルダ-シュを用いたヴァイオリン曲として演奏機会の多い名曲。
コンサートのフィナーレに相応しい曲で、超絶技巧を駆使した三浦の演奏は聴衆の心を鷲掴みにした。

後半はヴァイオリストが技巧を発揮する場面の多い曲がほとんどで、三浦は全て暗譜で演奏した。ヴァイオリ二ストが自分の技量を見せるには格好の曲で、ピアニストはどちらかといえば支え役だが田村はしっかりサポートした印象を受けた。

国際的なコンクール優勝の実績を持つ20代の若者によるコンサートはいつもと違う雰囲気を作り上げていた。コンサート終了後は満席に近いホールを埋めて観衆は女性客が比較的に多くテレビを通しての人気の高さを窺がわせた。
アンコール曲は「パラディス:シチリアーノ」。最後に、共演者の田村に促されて、三浦が《「真田丸」のメインテーマ》を無伴奏で演奏した。

※伊勢志摩サミットが終了したが、2008年洞爺湖サミットでボランティァ活動に参加したことを思い出した。札幌国際プラザ外国語ボランティアとして海外から来る報道陣や観光客を主な対象として札幌駅インフォメーションデスクで2日間対応を行なった。いろんな案内があったが駅のロッカーが封鎖されて使えない理由を問われた状況は今回のサミット開催に伴う状況と変わらない。この時ほど全国から派遣された多くの警察官の姿を市の中心部で目にした事はなかった。とにかく無事にサミット終って何よりだった。

※サミット終了と同時にメディアの関心事は米国オバマ大統領の広島訪問に移った。歴史的な米国大統領の広島訪問。核廃絶につながる小さな一歩であることは確かである。夜遅く聞いたオバマ大統領の演説は心に響く素晴らしいスピーチだった。ハーバード大学では20年以上にもわたって「トルーマンと原爆投下の是非」を論じる授業が行われているという。(*1月に出版されたPHP新書「ハーバードでいちばん人気の国・日本」の著書による。)どこの国にも言えるのだろうが日本のメディアが必ずしも客観的な情報網を持っているとは限らない。知らない情報が沢山あるようである。50年前に訪れたスミソニアン博物館で見た「エノラ・ゲイ」は今も目に焼き付いている。(*1995年の展示騒動以後、エノラ・ゲイはWashington D.C.の国立博物館には展示されていない。)
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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