谷本聡子&グレブ・ニキティン コンサート

先日Kitaraで手渡されたチラシの中で元札響コンサートマスター、グレブ・ニキティンが出演するコンサートの案内が目についた。二キティンは1993年に札響コンマスに就任して、その後、京都市響コンサートマスターを経て、現在は東京交響楽団の第1コンサートマスターを務めている。彼のソロを聴いてみる気になって、昨日主催者のヤマハミュージック札幌店に電話でチケットを予約した。ドヴォルジャークのピアノ三重奏曲も聴いてみたいと思った。

2016年5月19日(木)  19:00開演  ふきのとうホール

昨年7月にオープンした六花亭ビル6階~8階にある「ふきのとうホール」には7月だけで6回通った。その後は予定したコンサートに来れなかったので、今回は久しぶりのホール。今回は貸しホールによるコンサートで料金も安めで来やすかった。

ヤマハミュージック 札幌店 地元アーティストシリーズ VOL.1

〈Program〉
 バルトーク:ルーマニア民族舞曲(ヴァイオリン&ピアノ)、3つのチーク県の民謡(ピアノソロ)、アレグロ・バルバロ(ピアノソロ)、無伴奏ヴァイオリンソナタより「シャコンヌ」、ラプソディ第1番(ヴァイオリン&ピアノ)
 ドヴォルジャーク:ピアノ、ヴァイオリン、チェロのためのトリオ 「ドゥムキー」 Op.90

第1回目のコンサーのテーマは《中央ヨーロッパからの情熱》。ハンガリーとチェコの2人の作曲家の曲。

バルトーク・べーラ(1881-1945)はマジャールの血を持つハンガリー出身の現代音楽作曲家。(*ハンガリーでは日本と同じく姓名の順)。昨年はバルトーク没70年で一応区切りの年として東京では記念コンサートが行われたようである。札幌でもホリガー指揮による「管弦楽のための協奏曲」が札響定期で演奏された。
今回のコンサートでバルトークの作品が多くて、ハンガリーと繋がりの深い谷本聡子の情熱を感じ取った。本日のプログラムで知っているバルトーク作品は「ルーマニア民族舞曲」だけなので知らない曲を聴くよい機会になった。また、この機会にバルトークの生涯について書かれた本を読み直すことにもつながった。

「ルーマニア民俗舞曲」はピアノ組曲として1915年に書かれ、オーケストラ用、ヴァイオリンとピアノ用などにも編曲されている。今まで演奏会でもアンコール曲として演奏されて数回は耳にしたことがある。五嶋みどりとマクドナルドのCDを持っていることもあってかメロディにはかなり親しんでいる曲。民謡から集めた旋律が見事に生き生きとした音楽となっている。6分程度の小品。
さすが経験豊富なヴェテランの域に達した演奏家たちの演奏。外見とは違って、ピアノに男性的な勢い、ヴァイオリンに女性的な柔らかさを感じた。

他の作品は全く知識がなかったので曲目解説が参考になった。
「3つのチーク県の民謡」は1907年に現在はルーマニアになっているチーク地方を旅行して採集した民謡による3分程度の小品。「アレグロ・バルバロ(野蛮なアレグロ)」というタイトルは盟友コダーイによると“当時のハンガリーの若手作曲家たちの音楽がパリの批評家からは「野蛮な」ものとされたことを逆手にとった”3分足らずの小品。

「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」は1943年の終わり頃にユーディ・メニューヒンによって委嘱された曲。4楽章構成でバッハの作品に現代的解釈を加えた作品に仕上げた。シャコンヌ風の楽章に始まり、引き締まったフーガの第2楽章、伸びやかに歌うアダージョの第3楽章、第4楽章は快適できびきびとした爽快さで全体が10分程度の曲を閉じた。
ニキティンの演奏には安定感のある凄みを感じた。現在、札幌大谷大学教授としても後進の指導に当たり、札幌での音楽活動も室内楽も含めて活発なようである。
(*1971年にメニューヒンの公演を当時住んでいた旭川で聴いた記憶があった。調べてみたら、東京(4公演)・大阪・名古屋・札幌の4都市7公演で5月2日の札幌公演を妻と一緒に聴いていたことが判明。立派なプログラムが出てきて驚いた。札幌公演のプログラムには「バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」が入、っていた。45年も前のこととはいえ何と記憶の曖昧な事か!70年代初めにはセル指揮クリーヴランド響などで旭川から札幌まで何度かコンサートに足を運んだことを思い返して昔を懐かしむことにもなった。)

「ラプソディ第1番」は1928年の作品。バルトークは若いころにはラプソディと題した作品も書いているが、伝統的なラプソディ(ジプシー音楽)を偽物の伝統音楽として批判するようになっていた。40代半ばになって民族音楽の研究も進んだ結果、新たな解釈で取り組んだ作品。自らの調査と採譜に基づく旋律を用いて、それをメドレーにして編曲している。10分程度の曲。

後半のプログラムは札響チェロ首席奏者、石川祐支をゲストに迎えてのピアノ三重奏曲。ドヴォルジャークはピアノ三重奏曲を4曲書いているが、この作品は第4番で「ドゥムキー」という愛称で知られる最も有名なピアノ三重奏曲のひとつ。(*「ドゥムカ」はウクライナを起源とする舞曲で、「ドゥムキー」は複数形。)
6楽章構成で自由な形式で書かれている。ドヴォルジャークの作品の中でも最も民族的な音楽で、ピアニスト谷本聡子によるとバルトークに通ずるものを感じると言う。哀感に満ちた部分と激しい部分が交代で現れる。彼女の解説によると、“風に乗って地平線まで届く哀愁のメロディ、喜びの舞、大好きだった蒸気機関車の加速のリズム。自然を愛し、自然の理にかなった動きに魅かれた作曲家たちの鼓動が聞こえてくるようです。”と書かれている。

初めて聴いた曲かなと思ったが、帰宅して25年以上も前に聴いた〈ダン・タイ・ソン、ヨゼフ・スーク、堤 剛〉のピアノ・トリオのプログラムを確認してみた。「ベートーヴェン:大公」、「シューベルト:ノットゥルノ」、とともに「ドゥムキー」の記録があった。1989年7月18日、会場:札幌市民会館。曲目は覚えていなかったが、この演奏家たちのことは忘れていない。

谷本はヨーロッパで活躍して、現在は札幌を中心に日本で活動して北海道のピアノ界の大御所的存在。2000年ごろ、日本フィルと共演して「グリ―ク:ピアノ協奏曲」を聴いた。その後、リストのプログラムなどでの演奏会で数回聴いている。力強い演奏とともに黒いピアノと対照的な真紅のドレス姿も印象的だった。

ゲスト出演の石川今回の演奏は特に力が入ったようで熱演であった。三人の息もピッタリで素晴らしい三重奏が聴けた。

アンコ―ルのピアノ曲は「バルトーク:アンダンテ」。三重奏曲は何回も耳にして聴きなれている曲だが、曲名がどうしても思い出せなかった。とても楽しい気分に浸れる曲で充実したコンサートのフィナーレを飾った。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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