トヨタ・マスター・プレイヤーズ, ウィ-ン2016 札幌公演

昨年はKitara休館のために北海道公演は苫小牧で行われたので彼らの公演を聴くのは2年ぶりとなった。トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィ-ンの公演を初めて聴いた2000年以降、05年、09年、12年、13年、14年に続き今回が7回目、当初よりこの室内オーケストラのコンサートマスターはフォルクハルト・シュトイデが務めている。

2016年4月1日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲 Op.43
 プロコフィエフ:交響曲第1番 ニ長調 Op.25「古典」
 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 OP.73「皇帝」(ピアノ:小山実稚恵)
 ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 Op.68「田園」

30人の演奏家がステージに登場するや否や間髪を入れずに、指揮者を置かないオーケストラ「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィ-ン」のための前奏曲『イントラーダ』でコンサートが始まった。数年前から聴き始めたばかりだが聴き馴染んだメロディとなって心に届いた。

ベートーヴェン(1770-1827)は1800年に交響曲第1番を完成した後にイタリア人の舞踊家からバレエ音楽を委嘱された。ギリシャ神話の「火の神」プロメテウスを描いたべート―ヴェン最初の序曲。躍動感にあふれた曲で交響曲第3番「英雄」の第4楽章にも転用されている。

プロコフィエフ(1891-1953)はウクライナ生まれ。彼の最初の交響曲は1916年から17年にかけて完成された。ハイドンが20世紀に生きていたら書いたであろうと想像して書き上げたユニークな曲作り。「古典」のCDは小澤&ベルリン・フィル、フェドセーエフ&モスクワ放送響のものを所有していたが曲の印象は定かでなかった。曲名には馴染んでいても曲のイメージが浮かんでこなかった。今回の演奏会に備えて何度か聴いてみて鮮烈な印象を受けた。古典派の楽器編成や技法で書かれた作品という。颯爽として優雅でもあり、第3楽章のガボットが印象的だった。4楽章構成で20分程度の曲だが面白い。来週の札響定期のプログラムにも入っているので一層興味深く聴いた。

小山実稚恵の演奏を聴くのは30回目。年2回のリサイタル・シリーズの他にも彼女のコンサートを聴くことがある。コンチェルトを聴くのは今まで5回ほど。記憶をたどると、2001年PMFでN響とラフマニノフ2番、05年リスト室内管とモーツァルト27番、06年シンフォニア・ヴァルゾヴィアとショパン2番、11年はサントリーホールで日フィルとリスト1番、昨年は札響とラフマニノフ3番。毎回違った演目で彼女のレパートリーの広さがうかがえる。
Kitaraで「皇帝」を聴くのは09年オーケストラ・アンサンブル金沢のニューイヤーコンサートでのアリス・紗良・オット以来かも知れない。7年前にもなるが当時の彼女の溌剌とした新鮮な演奏を思い出す。若々しくて華やかではあるが重厚さが感じられなくて大満足というわけではなかった。CDでバックハウス、バレンボイム、ギレリス、ルービンシュタイン、ポリーニ、ミケランジェリ、キーシンなどを何年も聴いていて慣れ親しんでいることもあって条件が整わないと満足感を味わうのは簡単ではない。
今回は日本を代表する大ピアニスト小山実稚恵が演奏する「皇帝」。彼女は昨年デビュー30周年を迎えて年間60回以上ものコンサートを行なって評判を呼び大きな足跡を残した。
今夜の大ホールには期待感を持つ聴衆の熱気があってコンサートの盛り上がりに欠かせない雰囲気があふれていた。ステージ後方のP席(226席)は売りに出されなかったが、客席は9割以上埋まって1700人弱の入り。ステージ全体が見渡せる3階席中央は久しぶりで、比較的に座ることの多い1階席やRA席とは違う鑑賞の仕方が出来て入場した時から気持ちが高揚していた。

前半のプログラムが終るまでオーケストラのメンバーはステージを下がらず、予め空けていた空間にピアノを運び込んで時間の無駄を避けていた。赤いドレスに身を包んだ小山が登場して演奏が始まった。聴衆が固唾を呑んで流れるような演奏に引き込まれていった。第1楽章の力強いカデンツァは圧倒的でダイナミックな演奏が続いた。耳だけでなく手の動きを目で確かめれる音楽は特別なものがある。札響定期の1階左側座席からもピアニストの手の動きが見れるが、3階から今回のような満足感が得られるのはオピッツのベートーヴェン4大ソナタのリサイタル以来のような気がする。(今回は1階に座席を取った時より結果的に満足感を得れたように思った。)第3楽章のピアノとオーケストラの掛け合いも聴きごたえがあった。演奏終了後にはあちこちからブラヴォ―の掛け声が上がって聴衆の感動が伝わった。

本日のコンサートは自分にとって2週間ぶりのコンサートであった。聴きなれた曲は予めコンサートの前に聴くことはしないし、その暇もないのが普通である。脚を痛めて行動の自由がなくてボランティア活動なども休んでいることもあって、今回のコンサートに備えて「田園」も聴き込んだ。ワルター指揮コロンビア響(1958)の録音に基ずくCDで聴くのが普通だが、書斎で聴くのは久しぶりだった。ベートーヴェンの9曲の交響曲の中で最も明るく楽しい交響曲が第6番「田園」である。
プログラム解説に書かれた5楽章の標題は次の通り。第1楽章:田舎に到着した時の晴れ晴れとした表情、第2楽章:小川のほとりの風景、第3楽章:田舎の人たちの楽しい集い、第4楽章:雷鳴、風、第5楽章:羊飼いの歌。

標題が付いていてメロディもきれいで親しみやすい曲となっていたがひと昔と違って今では夢中になって聴くことはない。ベートーヴェンの交響曲チクルスの演奏会で聴くことが増えて、聴いて心地よさは感じても感動を覚えることは珍しい。今日はさすが名手たちならではのアンサンブルであった。

終了時間が9時15分近くでアンコール曲は無いかと思ったが、コントラバス奏者ブラーデラーの“これが最後です”の言葉があって比較的長い曲「J.シュトラウスⅡ:ウィ-ン気質」を熱演。終了したのは9時25分で周囲の人々は大満足の様子であった。

帰宅して前回までのプログラムも含めて読み返してみた。2000年にトヨタ自動車国内生産累計1億台達成を記念に開催されたトヨタ・ミレニアム・コンサートがスタートで現在に至っている。トヨタ・ミレニアム・コンサートは「ウィ‐ンの音楽」を作り出したウィ‐ン・フィル並びにウィ-ン国立歌劇場のメンバーと「日本の技術」を育んだトヨタj自動車が力を合わせて実現した。このプロジェクトは今や日本のクラシック音楽界の恒例イヴェントとなっている。
芸術監督のシュミードル、コンサートマスターのシュトイデをはじめ2000年から欠かさず参加している名も名簿にある。トゥルノフスキー(bassoon )、ハンス・ペーター・シュ―(trumpet)はPMF教授陣としての来日も多くて親しまれている演奏家。パシュコはチェロ奏者として12年以降の常連で、PMF2016にも教授陣として初参加してウィ‐ン弦楽四重奏演奏会にも出演する。ブラーデラー(bass)は今年もPMF教授陣として参加する。知っている顔のメンバーの名を数多く見て親しみが湧いてくる。彼らの今後の活動も楽しみである。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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