川畠成道ヴァイオリン・リサイタル2016

視覚障害を持つ人々を支援するチャリティコンサートを展開する川畠成道のリサイタルを2014、2015年に続いて今年も聴くことにした。2001年に彼のコンサートを聴き始めてから今回が6回目となる。

2016年3月18日(金) 開演18:30  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第3番 変ホ長調 Op.12-3
 ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
 ミルシテイン:パガニーニアーナ(ヴァイオリン独奏のための変奏曲)
 パガニーニ:『うつろな心(ネル・コル・ピウ)』の主題による序奏と変奏曲 ト長調  
 グノー:アヴェ・マリア
 サラサーテ:序奏とタランテラ Op.43

前半のヴァイオリン・ソナタ2曲は聴きごたえがあった。ベートーヴェンのソナタは「春」と「クロイツェル」が定番で大ホールでは聴衆の入りを考慮してだろうが演目に入る場合が多い。2012年11月、庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオ―リのコンサートでもそうだった。ただ、その折に彼らの「第1・3・4番」が収録されたCDを会場で購入した。今まで「第5・9番」しか所有していなかったCDも、これを機会にして、2年前に樫本大進&コンスタンチン・リフシッツによるソナタ全集を手に入れた。Daishin&Lifschitzは大ホールのコンサートで「第4・10番」を弾いた。聴きなれない曲が演奏曲目に入ると楽しみが増える。
そんな意味で今日の「第3番」は興味津々でCDも予め数回聴いておいた。演奏者の姿を目にしながら聴く味わいも加わって新鮮な受け取り方もできた。第5番以前のソナタの中では演奏機会が多いようである。全体にゆったりとしたテンポの曲でピアノとヴァイオリンが縦横にやり取りを繰り広げ、快活な印象を受けた。

ドビュッシー(1862-1918)は印象主義音楽の祖と呼ばれラヴェルと共に独特なフランス音楽を生み出した作曲家として知られる。このソナタは1916年から17年にかけ作曲されたが、結果的に遺作となった。軽やかで生き生きとした第1楽章、幻想的で軽快な第2楽章、極めて活発な第3楽章。ドビュッシーの特徴が表されている作品。この曲は演奏会で数回は耳にしている。
前半の2曲が終了して休憩後の後半のスタートでのトークによると、川畠がドビュッシーに取り組むのは初めてで、今後取り組んでいきたい作曲家と言う。プロだから当然だろうが、今年度初めて披露した曲とは思えない聴衆の心に響く演奏だった。

後半のプログラム開始に先立ってトークが入った。Kitaraのステージに初登場したのが2001年(*私は01,06,08年と大ホールでの公演を3回聴いているが、当時はロンドンを本拠地として活動していてピアニストも同世代の外国人であった。)と懐かしんでいた。多分、その後は英国と日本を本拠地として活動の幅を広げ、毎年数多くのリサイタルを行なっている。“Kitaraは大好きなホールで来年も再来年も新しい演目を増やしてリサイタルを続けたい”と語った。

後半は川畠の得意とするプログラム。最初の2曲は無伴奏でヴァイオリンの名手・作曲家による超絶技巧の曲。
ミルシテイン(1903-92)はウクライナ生まれの大ヴィルトゥオーゾ。名盤として有名なドヴォルジャーク、グラズノフのヴァイオリン協奏曲のCD(*1957年録音)を所有している。彼が作曲した作品があるのは知らなかった。パガニーニの「24のカプリース」の中の「第24番」の最も有名な旋律をもとに書かれた変奏曲。帰宅してから気づいたのだが庄司紗矢香の初のCDにこの小品が収録されていた。
※ミルシテインはホロヴィッツと共にロシアで大人気を博し、その後はヨーロッパ、アメリカで大活躍して世界各地で演奏旅行を行った。1972年アメリカの演奏会でミルシテインの代役を藤原浜雄が務めたエピソードは先日のコンサートで知った。

パガニーニ(1782-1840)のこの作品は初めて聴いた。今回のコンサートのプログラムには前2回にはなかった曲の解説が付いていた。川畠自身が自らの言葉で書いた解説でとても興味深いものだった。原曲はイタリアの作曲家パイジェッロのオペラ「美しい水車小屋の娘」のアリア。パガニーニが編み出したと言われる超高度な技巧の演奏に目を奪われた。指で弦をはじくピッチカート奏法を使いながら同時に弓で弦を弾く技がいとも簡単に繰り返された。序奏と主題、7つの変奏曲と終結部からなる曲で最初から最後まで今まで見たこともない特殊な奏法を駆使しての演奏は迫力充分であった。視覚的にも大いに楽しめた。

無伴奏のヴァイオリン曲に続き、プログラム最後の2曲はピアノとヴァイオリン。

グノー(1818-93)の「アヴェ・マリア」は誰もが耳にしたことがある名曲。川畠には思い入れのある曲であることがプログラムに書かれていた。彼が8歳の時、1980年ロサンゼルスで命の危険にさらされた時に彼を献身的に世話してくれた、今は亡き“はる子”さんのアメリカンネームが“マリアン”だったと言う。2000年に20年ぶりに訪れたロサンゼルスでのコンサートの最後にこの曲を演奏したとのこと。今までの人生で彼を支えてくれた人たちへの感謝の気持ちがこの曲を演奏するたびに湧き上がるそうである。

サラサーテ(1884-1909)はパガニーニとともにヴァイオリンの名手として知られる。サン=サーンスなどから献呈された曲もあって有名なヴィルトゥオーゾ。「序奏とタランテラ」を演奏会で聴くのは多分初めてのような気がした。プログラムの解説によるとタランテラとは高速の3連音符を用いた舞曲。この曲の冒頭の抒情的な旋律を耳にして聴いたことがあると思った。シンプルで快活な曲であるが、演奏者にとっては細かな運指が長く続くので負担が大きいようである。驚異的なテクニックでヴァイオリニストとして当時の人々を魅了したサラサーテならではの曲を堪能した。(*帰宅して、ふとCDの棚を見ると五嶋みどり“アンコール!ヴァイオリン愛奏曲集”が目に入った。全20曲の中に「序奏とタランテラ」が入っていた。)

前2回よりも今回は鑑賞の充実度が高かった。演目が自分の好みに合っていた。聴覚的にも視覚的にも小ホールで満足できるコンサートとなった。ピアニストの大伏啓太(Keita Oobushi)はベートーヴェンのソナタでピアノ・パートが難しいといわれる第1楽章を含めて、いろいろな曲で安定した伴奏でヴァイオリンを引き立てた。また、来年も来てみようかと思えるようなコンサートであった。

アンコール曲は①アルファンブラの思い出  ②ディ-ニク:ひばり  ③映画「ディア・ハンター」より “カバティーナ”。
 



 
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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