新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ 第26回札幌

文化庁委託事業<平成27年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業>
新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズは地域の音楽振興と新進演奏家の発掘・紹介を目的としてスタートした。全国6地区(札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・福岡)において有望な新進演奏家を厳正なオーディションにより選抜し、プロのオーケストラとの機会を提供するプロジェクト。平成23年度にこの事業は始まったという。今年度初めてこの種の演奏会があるのを知った。昨年度までの4年間で24回の公演が開催され、今回の札幌公演が〈第26回札幌〉となっているわけが分った。

今回は平成27年度オーディションで選ばれた5名の才能ある新進演奏家が札幌交響楽団と共演するコンサート

平成28年1月29日(金) 19時開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 高関 健     管弦楽/ 札幌交響楽団

1部
 J.シュトラウスⅡ:ワルツ「春の声」作品410(ソプラノ:前田 奈央子)
 コープランド:クラリネット協奏曲(クラリネット:高橋 良輔)
 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18(ピアノ:樋口 智樹)
2部
 プッチーニ:歌劇「トスカ」より “歌に生き、愛に生き”(ソプラノ:佐々木アンリ)
 ヴェルディ:歌劇「運命の力」より “神よ、平和を与えたまえ”
 ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 作品107(チェロ独奏:小野木 遼)
 
入場時に国内6か所開催のプロジェクトの詳細な記録が載った部厚なプログラムが手渡された。文部科学省の予算から出ているのであろう。予備知識もなくて、出演者のプロフィールも詳しくは読んでいなかった。
第1部登場の3人は札幌の音楽大学で学び、研鑽を積んでいる様子。
前田はウィーンの宮廷舞踊会で着るようなピンクのドレスで登場。コロラトゥーラの美声を駆使して馴染みのワルツ「春の声」を堂々と歌い上げた。途中で息切れがしないかと思うような長い曲を楽しそうに歌う姿は華やかでもあった。

コープランド(1900-90)はアメリカの作曲家。20年ほど前のPMFで取り上げられていたのでその名を知る作曲家。弦楽合奏とピアノで始まって、クラリネットが自由自在に曲を操るメロディを聴いて名曲と分った。ジャズ・クラリネット奏者ベニー・グッドマンの委嘱作品だったそうである。1950年の初演でグッドマン独奏、フリッツ・ライナー指揮NBC交響楽団の曲を大いに楽しんだ。ソリストとして魅力あふれる見事な演奏ぶりで聴きごたえがあった。

ラフマニノフの曲を大ホールで演奏する機会を得ただけでも新人演奏家としての実力が評価がされていることが判る。余りにも有名な曲で一流ピアニストがKitaraで奏でる音と比べてしまいがちだが、新人としての力量は発揮できたのではないかと思える演奏であった。

第2部登場は東京芸術大学出身の演奏家。佐々木はライプツイヒ音楽大学に学び、ドイツの歌劇場や音楽祭などでモーツァルトやプッチーニのオペラの主役で出演。帰国後、札幌を拠点に活動しているソプラノ歌手。真紅の舞踏会用ドレス姿で登場。豪華な衣装にも目を奪われた感じ。「歌に生き、愛に生き」は聴きなれたアリア。あっという間に終わったが、2曲目の「運命の力」のアリアは比較的に聴きなれていない曲だったが、オペラのドラマティックな雰囲気がよく出ていた名演だった。歌声だけでなく、演技にも迫力があってヨーロッパでの歌劇場での経験が生きている印象を受けた。

ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲のCDはどういうわけか第2番だけ手元にある。「第1番」は作曲家がロストロポーヴィチのために1959年に作曲した作品。小野木は北見市出身で東京芸術大学卒業後、同大学院修士課程修了。PMF2007に参加。サントリーホールでヴァイオリンの竹澤恭子、渡辺玲子、チェロのマリオ・ブルネロ、ホルンのラデク・バボラークら世界的な演奏家と多数の室内楽で共演。昨年札幌交響楽団に入団。
彼が札響のチェロ奏者であることを知ったのは演奏直前だった。演奏が始まると曲の面白さと小野木の巧みな演奏にたちまち引き込まれた。チェロの持つ独特の美しい響きとは少し違う異なる響きと演奏技法に耳が吸い寄せられた。多用されるピッツィカート奏法やカデンツァなど曲全体の構成が流石ショスタコーヴィチが満を持して盟友チェリストに捧げた曲だけのことはあると痛感した。実に素晴らしい演奏であった。聴きなれていないから一層その感動がオーディエンスにも伝わった。演奏終了後にブラボーの声も上がって、聴衆の反応も大変良かった。

高関健は群馬交響楽団の功績者として名高い。札響の正指揮者(2003-12)を務めた後、現在は京都市響常任首席客演指揮者、15年4月から東京シティ・フィル管常任指揮者。東京芸術大学教授の任にあり同大学オーケストラの指導に当たるなど若い音楽家の育成にも幅広い活動を行なっている。このたびの演奏会の指導ぶりにも出演者への細かい心配りが垣間見えた。

音楽学校に学んで人生を音楽に捧げ続ける人々は音楽愛好者に比してほんの一握りにしかすぎない。少しでも音楽を志す人々の門戸を広げる国家的プロジェクトは日本では遅きに失している。今後このようなプロジェクトが地方自治体に少しでも広がっていくことを期待したい。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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