Kitaraのニューイヤー 2016(飯森泰次郎&中嶋彰子)

Kitara New Year Concert  2016

2016年Kitaraの新年は新国立劇場オペラ芸術監督、飯森泰次郎と北海道出身でウイーン在住のソプラノ歌手、中嶋彰子を迎えて華やかに幕を開けた。

2016年1月9日(土) 15:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 飯森 泰次郎(Taijiro Iimori)
ソプラノ/ 中嶋 彰子(Akiko Nakajima)
管弦楽/ 札幌交響楽団

飯森泰次郎は1940年生まれ。70年以降バイロイト音楽祭で音楽助手を務め、ブレーメンやマンハイムなどドイツ各地の各歌劇場で指揮者やコーチを歴任。ヨーロッパの歌劇場で研鑽を積み重ねたオペラ、特にワグナー作品に対する深い造詣が今日の彼を日本オペラ界の第一人者の地位に就かせたと評価されている。現在、新国立劇場オペラ部門芸術監督、東京シティ・フィル桂冠名誉指揮者、関西フィル桂冠名誉指揮者。2012年度の文化功労者、2014年には日本芸術院会員に選ばれた。

中嶋彰子は15歳で渡豪し、シド二ー音楽院に学ぶ。90年全豪オペラ・コンクールで優勝して、同国ののオペラハウスでデビュー。92年欧州デビュー。ヨーロッパ各地、オーストラリア、アメリカの歌劇場で活躍して、99年よりウィーン・フォルクスオーパーの専属歌手として活躍。同年シャルル・デュトワ指揮N響と共演して日本デビュー。現在、国際的日本人ソプラノ歌手のひとり。2012年からはプロデュースや演出にも活動の範囲を広げて活躍中。

〈Program〉
 ワーグナー:歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より 第1幕への前奏曲
 プッチーニ:歌劇「トスカ」より “歌に生き、恋に生き”(ソプラノ:中嶋彰子)
 マスカー二:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 間奏曲
 ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」序曲
 ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より 第3幕への前奏曲
 ヨハン・シュトラウスⅡ:喜歌劇「こうもり」序曲、 ポルカ「狩り」
                ワルツ「皇帝円舞曲」、 ポルカ「雷鳴と稲妻」
 レハール:喜歌劇「ジュデイッタ」より “唇に熱い口づけを”(ソプラノ:中嶋彰子)
       喜歌劇「メリー・ウィドウ」より “ヴィリアの歌”(ソプラノ:中嶋彰子)
 ヨハン・シュトラウスⅡ:ワルツ「美しき青きドナウ」

飯森がKitaraに初登場したのが09年1月の札響定期。ワーグナーの《歌劇「さまよえるオランダ人」序曲》を演奏。2回目は12年9月、オペラの名曲プログラムで札響と共演。この頃はMETビューイングでオペラ鑑賞の機会が増えてオペラの楽しさを味わっていた。《ビゼー:「カルメン」第1組曲5曲》を含めて、《ワーグナー:「ローエングリン」や「ニュールンベルクのマイスタージンガー」の前奏曲》などオペラの名曲が演奏されて当時のブログにも書いた。

3回目のKitaraのステージはオペラ歌手との共演で華やかな雰囲気のニューイヤーコンサート。プログラムの前半は魅惑のオペラより5曲。飯森の得意とするワーグナーに始まり、ワーグナーで締めくくる壮麗なオペラの前奏曲。トロンボーンが活躍する曲を聴くと気分も高揚して元気づけられる。
最初から最後まで親しみのあるメロディの名曲はマスカー二の間奏曲。カーステレオで通勤の折によく耳にしていた懐かしい曲で演奏会でも聴く機会が多い。3年前のワグナー、ヴェルディの生誕200年に当たる年の札響ニューイヤー・パーティでもマエストロ尾高がマスカー二の生誕150年を祝う意味で「間奏曲」も演奏曲に入れたことを思い出した。しみじみとした味わい深い曲。

中嶋はKitara初登場だと思うが、彼女の美声が大ホールに響き渡る様は圧巻だった。今まで耳にした国際的日本人ソプラノ歌手に勝るとも劣らない歌声の持ち主。有名なアリアを聴き終った聴衆の感動がブラヴォー(*イタリアならブラヴァー)の歓声に表れていた。
彼女の姓がありふれた名で、活動の本拠地がウィーンであることもあって彼女の名は知らなかった。実は、昨年11月末ごろに彼女が日本のテレビ番組に出ていた。外国人と結婚して海外で暮らしている日本人女性の住居をテレビ局のクルーが突然に訪ねて、結婚に至った経緯を訊いたり家庭の様子を見聞きして、家の冷蔵庫の中身を見せてもらったリしながら海外の生活事情を視聴者に紹介する番組である。対象の女性は一般人だが、ウィーンでは結果的に有名人が話題の女性になってしまった。その時に彼女の歌声を聴いて本格的な歌唱に驚いたのである。中嶋彰子という名を聞いて何処かで耳にしたと思った。Kitaraで聴いたコンサートでの記憶はなかった。数日して思い出した。彼女が出演する今回のニューイヤーコンサートのチケットを9月に買い求めていて、歌手の名前が記憶の隅にあったのだった。話は長くなったが、その時から今日のコンサートを楽しみにしていた。

後半のプログラムはKitaraのニューイヤーでも近年恒例になったシュトラウスのワルツやポルカ。ウィーンが本場の正月恒例のブログラム。面白い趣向も凝らされていて、「狩り」では銃を構えた楽団員がステージに出てきて、RA7列2番に座っていた私の方を目がけて打ってきた。空砲が鳴り響いた。一度ステージを下がってから再び現れて銃を向けられたが、そのうち方向が下方に向けられ、指揮者がしゃがむ姿が目に入った。細かい演出と判って思わず笑ってしまった。3度目となる彼の真面目な指揮ぶりを観ていてユーモアのある指揮者の振る舞いが意外でおかしかったと同時にその演技に感心した。

「雷鳴と稲妻」では指揮の途中から用意していた折り畳みの傘を開いて指揮棒のように左右に振り回したり、上下に動かす動作が数分続いた。見事な傘さばきでその巧みな動作は簡単にできない気がした。聴衆は彼の指揮ぶりにすっかり魅入ってしまった。曲が終わると傘をたたんで、濡れた服を撫でまわす所作に笑いが込み上げてきた。大平コンマスも笑いを抑えきれないようだった。指揮者がこんな動作をごく自然に行うことに改めて凄いと思った。彼は聴衆の心を掴んだ。演奏会が一段と盛り上がった。

「ジュディッタ」というレハールの喜歌劇はタイトルさえ聞くのは初めてである。プログラムの解説によると、地中海沿岸の港町と北アフリカを舞台に外人部隊の大尉と人妻ジュディッタとの恋の顛末のストーリー。
“ヴィリアの歌”は有名なアリア。オペレッタの舞台風景が浮かぶような彼女のステージでの所作を含めて、体全体から放たれるオーラをバックに繰り広げられる演唱は実に素晴らしく歌劇場のトップスターの活躍の一端がうかがえた。オーケストラの演奏をはさんで2曲を歌い終えた後には客席を埋めた8割弱の客の大歓声が大ホールいっぱいに広がった。正面の客席だけでなく、横を向いたり、一瞬ではあるが後ろのP席を向いて歌う彼女の客への配慮に心が動いた。

オーディエンスはアンコールを求めたが、取りあえず予定のプログラムの最後の曲「美しく青きドナウ」の演奏。飯森はコンサートの盛りあげ方がうまい。ステージの出入りでは年齢を感じさせたが、その力強い指揮ぶりと演出は若々しい。
聴衆の求めに応じて、先ずソリストのアンコール曲は「ジチンスキー:ウィーン我が夢の街」。続いて、オーケストラのアンコール曲は、ステージ下手から行進しながら指揮台に向かう様子で聴衆の反応も早かった。タイミングの良い聴衆の手拍子。「シュトラウスⅠ:ラデツキー行進曲」で幕を閉じた。今までに味わったことのないほどの非常に楽しい雰囲気の《Kitaraのニューイヤー》となった。

今晩は妻が所属している会の新年会で出かけている。コンサートの前に予約していたKitaraテラス・レストランでディナーをとった。食事制限をしているので量が多かったが一応全部食べた。帰宅すると血圧が上がっていたが、翌日は平常に戻っているだろうと楽観視した。

※音楽の友コンサートガイドによると、中嶋彰子は毎年恒例の1月3日開催のNHKニューイヤーオペラコンサート2016に出演していた。テレビ中継されるイヴェントで14年は観たが残念ながら今年は観れなかった。

:*【追記】 ブログを読んでくださった方から指摘をいただいた。中嶋彰子さんは04年4月13日のトヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーンのコンサートでKitaraのステージに登場していました。当時のKitara Newsで確認しました。05年のトヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウイーンでは佐藤美枝子のソプラノは聴いたのですが、前年のコンサートは聴いていませんでした。実績のある歌手ですから、Kitaraへの出演は他にもあったかもしれません。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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