フジコ・へミング&キエフ国立フィルハーモニー交響楽団

波乱万丈の人生を過ごして15年ほど前に「ラ・カンパネラ」で大ブレークしたフジコ・へミング。2年前にシモノフ指揮モスクワ・フィルとの共演で彼女の生演奏は初めて耳にした。コンサートの半年前にはチケットが完売。それ以前からリサイタルやオーケストラとの共演で彼女は何度も札幌を訪れている人気のピアニスト。83歳を迎えた今年もヨーロッパでの活躍も目覚ましい。
2013年6月に初めてライヴで観た彼女のコンサートでの様子が眼前に浮んで来るが、彼女は独特の個性が滲み出る演奏を展開した。今回のコンサートも早々にチケットは完売となっていた。

キエフ・国立フィルハーモニー交響楽団(National Philharmonic Society of Ukraine Kiev)はニコライ・ジャジューラ(Nicolai Dyadura)に率いられて頻繁に札幌公演を重ねている。このオーケストラの公演は2007年、09年にヴァイオリン協奏曲のプログラムとソリスト陣が魅力で何となく聴いてみる気になった。2013年の年末の来日公演では「ベートーヴェンの第九」が演目になって興味を引いた。この時は代役の指揮者の出演だったが、それなりに楽しめて今でも印象に残っている。キエフ・国立フィルの人気は高いようで私のブログへのアクセスも数多い。

今年のニコライ・ジャジューラ&キエフ国立フィルの日本ツアーは札幌から始まって、ソリストにデビュー40周年の大谷康子を迎えるプログラムや「第九」の演奏会も含め、年末まで全国10ヶ所ほどの公演が予定されていて人気のほどがうかがえる。

キエフ・国立フィルは1995年創立の歴史の浅いオーケストラであるが、国際指揮者コンクールや小沢、バーンスタインなどの指導を受けながら国際的経験を積んだキエフ生まれのニコライ・ジャジューラが1996年、35歳の若さで音楽監督に就任して、今ではウクライナを代表するヨーロッパのオーケストラに成長した。ウクライナは当時ロシア帝国、旧ソ連に属していたが、リヒテル、ギレリス、ホロヴィッツなどの大ピアニスト、オイストラフ、コーガン、ミルシテインなどのヴァイオリンの巨匠がウクライナ人として育ったところである。1991年のウクライナ独立まで彼らは旧ソ連出身の音楽家として知られていた。

前置きが長くなったが、キエフ・国立フィルの注目度が日本でも盛り上がっている機会に書き記してみた。


2015年12月17日(木) 7:00PM開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈PROGRAM 〉
 スコリク:フツル・トリプティーク
 ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 (ピアノ:イングリッド・フジコ・ヘミング)
 リスト:ラ・カンパネラ (ピアノ:イングリッド・フジコ・ヘミング)
 チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 Op.61

ミロスラフ・スコリク(Myroslav Skoryk)は1938年生まれのウクライナの作曲家。初めて聴いてみて、ウクライナ民謡か土俗の音楽だということは判った。曲の後半では現代音楽の雰囲気も感じ取れた。
この曲以外は解説不要と思って入場の際には1000円のプログラムは買わなかった。5分程度の小品と予想したが、20分も要するウクライナ紹介の曲だと思って、帰りに買い求めた。解説によると、ウクライナの作家の作品が50年前に映画化された際の映画音楽が原曲。山岳民族であるフツル族の悲恋物語が描かれ、その後、3つの場面がオーケストラ用にまとめられた。
今日のコンサートでは在り来たりの曲だけでなくて、ウクライナに関わる新鮮な音楽が聴けて良かった。

フジコ・ヘミングはいつもの着物の生地を切り取ってパッチワークのように仕上げた衣服でなく、ロングドレス姿で登場。音楽が始まりだすと高齢を全く感じさせない滑らかな指のタッチで感性豊かなピア二ズムを繰り広げた。前回のモスクワ・フィルとの共演では彼女の背後に黒子がいてチョット異様な感じもあったが、今回は安心してP席中央から彼女の運指が良く見えて充分に楽しめた。彼女は指先を高くして真上から叩くことをしないで掌を平らにして柔らかく弾いていた。
曲が盛り上がる最も華やかな演奏が入る前に、客席からパラパラと拍手が起こったのが残念だった。曲の終了と勘違いした様子。華麗な旋律を持つ最終楽章が終わると、ほとんど空席のない満員の聴衆で埋まった客席のあちこちから“ブラボー”の声が沸き起こった。
指揮者はともかくソリストで80歳を超えて現役で活躍している音楽家の演奏を聴く機会は稀有である。聴衆も改めてこの高齢のピアニストの演奏に感銘を受けたに違いない。私もその一人である。

フジコ・ヘミングはいったんステージを下がって、再登場の時に客席に向かって何かを話して笑いを誘っていたが、話は全然聞こえなかった。ごく自然に聴衆とコミュニケーションをとれるのも彼女の飾らない人柄なのだろうと思った。彼女のアンコール曲の位置づけにもなっている「ラ・カンパネラ」の演奏が始まり、フジコ・ヘミングの世界へ。15年前と違って現在はピアノのほかにヴァイオリンなどを通して幅広くこの曲は他の音楽家の演奏で耳にする機会の多い名曲となった。 前半のプログラムは100分の長丁場で時計の針は20時20分を指していた。

※買い求めたパンフレットによると、2015年11月27日にフジコ・ヘミングとキエフ・国立フィルの初の共演がウクライナの首都キエフのフィルハーモニーホールで開催されたという。150年余の歴史を有するこのホールにはチャイコフスキーだけでなく歴史上の数多くの巨匠が名演を繰り広げたといわれる。このホールでヘミングは数度リサイタルを開催しているが、オーケストラの公演は今回が初めてであったようである。日本での公演に先駆けてのキエフでの公演は大成功を収めて、聴衆を感動の渦に巻き込んだ様子が招聘元の記事からも伝わってきた。
キエフでの公演の前にヘミングはチェコ、スロヴァキア、ジョージアなどでリサイタルを行って2015年のヨーロッパ公演を締めたというから、そのエネルギーにあふれた活動ぶりには恐れ入る。

今晩の後半のプログラムである「チャイコフスキー:交響曲第5番」は今月4日のスワロフスキー&札響で聴いたばかり。何度聴いても良い。今回はチャイコフスキーを得意とするニコライ・ジャジューラ&キエフ国立フィルの演奏でニコライの指揮ぶりも注目の的。
楽器配置はステージ上手にチェロ。チェロとヴィオラの後ろにコントラバスが一列に並ぶ珍しい配置(6名)。低音域楽器の音の広がりにこだわったと想像される。各楽器の活躍ぶりは書くまでもないが、第2楽章の「アンダンテ・カンタービレ」でのホルンの響きが曲の美しさを引き立てた。

ニコライ・ジャジューラの指揮ぶりは圧巻。手の動き、指の動き、口の動き、顔の表情、体全体を駆使してオーケストラから思い通りの音を引き出していた。P席中央は指揮者の様子を観れる最高の席。今日は思う存分に指揮の醍醐味が見て取れた。ニコライはこのオーケストラのシェフとして20年目で、脂がのった様子。彼の指揮ぶりは6年ぶりで観たが、何だか若返った様子に見えた。
ダイナミックな指揮ぶりで、オーケストラの演奏も一段と大きく盛り上がってフィナーレ。演奏終了後の聴衆の拍手大喝采は長く続いたが、時刻も21時30分近くで、アンコール曲は無し。充分に堪能できたコンサートであった。

(*第2楽章終了後にショパンの曲と同じく拍手をした人が一人いたが、勘違いといってもチョット感覚のずれている人の対応に思えた。時間がそれぞれ20時、21時前後だったので曲の流れより、時刻で曲の終わりを判断したとしか思えない人の対応かなと思った。今晩の演奏会でホールを埋めた聴衆も満足の様子だったが、拍手などは指揮者や周囲の状況で判断することが求められる。“人の振り見て我が振り直せ”と自分にも言い聞かせた。)

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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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