宮崎陽江 ヴァイオリン協奏曲の夕べ 2015

宮崎陽江のヴァイオリンは4年前に「宮崎陽江ヴァイオリンの夕べ」でリサイタルを聴いたのが初めてである。2年前のKitara小ホールでは矢崎彦太郎指揮札響と共演した折に、「フォーレ:ヴァイオリン協奏曲」など札幌で聴く機会の少ないコンサートを聴いてみた。翌年に大ホールで開かれた秋山和慶指揮札響とのコンサートは聴かなかった。今回が3度目のコンサート。

スイスを拠点にヨーロッパで活躍している宮崎陽江が10年ほど前から札幌と東京で毎年開催しているコンサート。数年前からはオーケストラとの共演も行なっている。今年の《音楽の友 6月号 “People”》に彼女の取材の文と写真が載っていた。この記事を見た時には既に今回のコンサートのチケットは購入していて確認済みの内容だったが、彼女がヴァイオリニストとして日本での活躍が評価されていることを知って嬉しくもあった。

7月にサントリーホールで行なわれたスワロフスキー指揮スロヴァキア・フィルと宮崎の共演による東京公演と今回12月のスワロフスキー指揮札響の札幌公演のプログラムは全く同じである。

レオシュ・スワロフスキーは1961年、チェコ生まれの指揮者。ヴァ―ツラフ・ノイマンに師事。プラハ国立歌劇場芸術監督・首席指揮者、ブルノ国立フィル管首席指揮者などを歴任。現在はスロヴァキア・フィル常任客演指揮者。14年4月よりセントラル愛知交響楽団音楽監督に就任。

2003年7月、スロヴァキア・フィルを率いてKitara初登場。(この時は天満敦子が共演。先月14日、5年ぶりの札幌公演となった「六花亭ふきのとうホール」での彼女のリサイタルは入院中のため妻が代わりに出かけた。) 09年1月は都響北海道公演で指揮。(この時のソリストが世界的に有名なイタリアのヴァイオリニストであるウート・ウーギであったのは忘れもしないコンサート。)
海外のオーケストラの日本公演でも活躍して、チェコ・フィルにも定期的に客演。日本国内オーケストラへの客演も多い。札幌で3度目という馴染みの指揮者。

最近の「宮崎陽江のヴァイオリン協奏曲の夕べ」は大々的にスポンサーがついて、今回も“Panasonic Concerts”として開催された。少なくとも東京と札幌はPanasonicが支援しているようである。来年のヨーロッパコンサートもパナソニックがスポンサーとなる。北海道では北海道放送などいくつかの会社も支援に加わって、エントランスやホワイエにも多くの祝いの花束が飾られていた。地下鉄中島公園駅を降りた直後からKitaraへ向かう人の群れが、続いていた。会場は高校生を含む幅広い世代の聴衆でいつものシニア層が多く占める札響定期の演奏会とは少々様子を異にしていた。

2015年12月4日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈プログラム〉
 オール・チャイコフスキー・プログラム
   歌劇「エフゲニー・オネーギン」Op.24 より ポロネーズ
   ヴァイオリン協奏曲 二長調 Op.35
   交響曲第5番 ホ短調 Op.64

コンサートの最初はチャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」の第3幕冒頭の舞踏会で演奏されるオーケストラ曲。ポーランド民族舞曲ポロネーズのリズムを用いての壮麗な音楽。2年前のMETビューイングで観たオペラの場面を思い浮かべて楽しめた。若き日の恋の想いが通じなくて、今は伯爵夫人となって舞踏会で脚光を浴びる彼女に言い寄る男を毅然として撥ね退ける役を演じた当代随一のソプラノ歌手、アンナ・ネトレプコの演唱を思い出した。絢爛豪華な舞踏会の様子が美しい音楽となってホール全体に響き渡ると気分も高揚してコンサートの景気付けに相応しい曲であった。トロンボーン3人が入って音楽が一層引き立った感じがした。

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はベートーヴェン、メンデルスゾーンと共に最も親しんだヴァイオリン協奏曲。十年ほど前までこれらが「三大ヴァイオリン協奏曲」と呼ばれていると思っていた。宮崎陽江自身もプログラムにそのように書いているが、実際はベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスの3曲が「三大ヴァイオリン協奏曲」で、甲乙つけがたいチャイコフスキーの曲を含めて「四大ヴァイオリン協奏曲」と呼ぶのが伝統的らしい。人の好みもあるので、決定的な根拠もないようである。しかし、音楽の盛んなドイツ出身の作曲家とロシア出身の作曲家の曲は現代ではともかく、19世紀当時では位置付けが違っていたようである。(*「世界の三大オーケストラ」や「アメリカの五大オーケストラ」など、時代の流れで変化があって当然なのに、現在でもこんな言葉が使われている。)

宮崎陽江はフランスで幼少期を過ごし、スイス在住でヨーロッパでの活躍も多くて、フランス音楽を得意にしているようである。リサイタルではそのような音楽を聴く機会があるが、大ホールで聴衆を多く集めるとなると人々に愛されているヴァイオリン協奏曲をプログラムに組むことになる。それなりに堂々としたコンチェルトではあったし、カデンツァに彼女らしい特徴も出ていた。
オーケストラとの共演でもヨーロッパも含めて経験を積んでいるので、彼女なりの華やかな音楽は楽しめるが、大ホールに拘らずに彼女独特の音楽のリサイタルを聴きたい気がした。そういう意味で、アンコール曲に弾いた自作「幻想の炎 “Fantaisie flamboyante”は魅力的であった。

チャイコフスキーの交響曲はレコード時代は「悲愴」しか聴く機会を持たなかった。今でこそ、「第4番」や「第5番」も聴く機会が多くなった。2001年2月、ロストロポーヴィチ指揮ロンドン交響楽団の演奏で「第5番」の魅力を知った。その後の演奏会では何十回となく聴いている気がする。CDで小澤征爾指揮ベルリン・フィルの録音で聴く機会が多いのだが、最近はゲルギエフ指揮マリインスキー響のDVDで試聴することも多くなった。つい先日は偶々手元にあったエッティンガー指揮東京フィルのCDを聴いてみた。何気なく耳にしてもこの曲は壮大である。

スワロフスキーは今までソリスト目当てであまり注目していなかった。外見からして60代のヴェテランかと思っていたら、まだ50代前半。身体の動きも若々しくて、躍動感あふれる指揮ぶり。オーケストラを手中に納めて、オーケストラの音を存分に引き出している感じがした。(*来年10月札響定期でエリシュカの「第5番」が聴けるが、今から楽しみである。)

弦楽器を含め木管、金管や打楽器の総奏は極めて迫力のある演奏。詰めかけた多くの学生はこの「第5番」が目当てだったのかと納得できるような木管楽器・金管楽器奏者の活躍が印象に残った。P席は売り出されなかったが1600の座席が埋まっていて大盛況であった。ソリストが中心のコンサートでオーケストラは脇役に回った思いか、オーケストラのアンコール曲はなかった。

音楽家のホールでのスケジュールは通常1・2年前から決まっていると言われるが、「宮崎陽江コンサート 2016」 東京・札幌公演の日程も決まっていて、先行案内のチラシが入っていた。 指揮者が大友直人なので、来年の計画に入りそうである。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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