ウラディーミル・アシュケナージの札幌公演

ピアニストとして世界最高峰の地位に上り詰めたウラディーミル・アシュケナージが指揮者として今週末の2日間、札幌交響楽団を指揮してKitaraのステージに立つ。
今年の札幌は初雪が遅かったが25日で積雪が44cmに達し、11月の降雪量としては62年ぶりと言う。一気に冬を迎えた札幌の地で、アシュケナージも冬の到来に驚いているかも知れない。
アシュケナージが1955年のショパン国際ピアノコンクールで第2位を収めて(*当時18歳で第1位の評価もあった)、56年のエリザベート国際コンクール、62年のチャイコフスキー国際コンクールにそれぞれ優勝してから、50年以上もの月日が経つ。
彼はソ連を離れ、68年からはアイスランドに移住(*現在はスイス移住)。70年代頃から指揮活動を開始した。81年からフィルハーモニア管、87年ロイヤル・フィル、89年ベルリン・ドイツ響、98年チェコ・フィルなどの首席指揮者や音楽監督を歴任。2004年からはNHK響の音楽監督を務めたこともあって日本との繋がりも深い。

今回の札響指揮でアシュケナージの演奏を聴くのは4回目であるが、完全に指揮だけに専念する札幌登場は今回が初めてである。昨年の2015-2016シーズンの札響プログラムの発表以来、大変楽しみにしていた。彼と同時代を生きた祖国ロシアの偉大なる作曲家ショスタコーヴィチの曲を聴けるのは楽しみである。

92年4月、旧北海道厚生年金開館で初めて聴いたアシュケナージのリサイタルは今でも忘れられない。当時からタートルネックのセーターを着てステージに上がっていた。「展覧会の絵」が演奏されたのはハッキリ記憶していたが、当時の立派な冊子を買い求めていて、プログラムを改めて見るまでは他の曲目の記憶は無かった。20数年前のプログラムを再び読んで感慨深いものがある。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「第31番」、「第32番」は当時の自分の聴き慣れた曲目には入っていなかった。今なら、鑑賞能力は少しは上がっているだろうが、その時はベートーヴェンのタイトル付きのソナタぐらいしか知らなかったのである。とにかく、アシュケナージやロストロポーヴィチが聴けたと感激していた頃であった。

2度目はイタリア・パドヴァ管弦楽団を率いてKitaraに登場した04年6月。この時は「モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番」、「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番」で彼の弾き振りを堪能した。この時にサイン会があって感想を英語で述べると、顔を上げて聴いてくれ、”Thank you so much.”と答えてくれた。彼の優しさに溢れた応対ぶりが今も鮮烈な記憶として脳裏にある。この時の思い出を12年11月のブログに書いた。(*この頃は自分のブログが英訳される場合に不安があって、ブログの一部を英語で書き綴った。英語で書いたのはこの時だけである。)

3度目は14年3月、長男ヴォフカとのピアノ・デュオ・リサイタル。シューベルトとブラームスの2台ピアノ作品のほかに、「春の祭典」や「「だったん人の踊り」のオーケストラ曲が2台ピアノで演奏されて興味深かった。息子に想いを寄せる親の愛情は微笑ましいと思うと同時に親ばかぶりも見て取れた。この時もサイン会があったと思うが、偉大な芸術家の聴衆を大切にする気持ちが伝わってきたのを覚えている。

今頃Kitara大ホールでのリハーサルの最中かも知れない。今週の札響定期演奏会が待ち遠しい。

※[追記] 元北海道新聞記者で北海道の音楽事情に詳しい前川公美夫さんが札響定期演奏会のプログラムに連載記事を書いている。今月11月号によると、アシュケナージは1970年の札響特別演奏会で札響と共演して「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番」を弾いたと書かれている。当時の札響の指揮者はペーター・シュバルツで1970年の札響定期にはアルゲリッチやホリガーなど現代の偉大な音楽家を招いていて外国人指揮者ならではの手腕を感じていた。
今回の前川さんの記事で1970年はベートーヴェンの生誕200年に当たることに気付いた。大阪万博が初めて日本で開かれ、東京オリンピック以来の日本の国際的イヴェントとして世界からも注目されていた。(1966-67年にアメリカ留学中でアメリカの新聞でも話題になっていたので、この辺の事情は知っていたつもりであった。)1970年は日本に、外国のオーケストラや音楽家が大挙して訪れた年として知られている。ジョージ・セルが5月にクリーヴランド響と札幌を訪れた時に聴いた一生忘れられない思い出もある。今まで1970年を大阪万博との繋がりでばかり考えていた。
なぜベートーヴェンとの繋がりが思いつかなかったのか不思議な気がする。当時は英語教育を中心に生活していたのだから当然かもしれない。
前川さんによるとシュバルツは1970年にベートーヴェン生誕200年を記念して全交響曲と序曲、協奏曲による6回の「札響特別演奏会 ベートーヴェン・チクルス」を行なったと言う。その年の第4回でアシュケナージが協奏曲を演奏した思い出が綴られていた。

*2001年チェコ・フィルを率いての札幌公演は聴かなかったが、コンサートがあったことは思い出した。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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