前橋汀子アフタヌーン・コンサート2015

前橋汀子は日本を代表するヴァイオリン界の第一人者である。今日では海外の音楽院で学ぶ学生は雨後の竹の子のごとく無数にいるが、彼女の時代はごく限られた人にしか与えられない環境の下での海外留学であった。17歳で旧ソ連国立レニングラード音楽院(現サンクトペテルブルグ音楽院)の日本人初の留学生に選ばれ、3年間学んだ。その後、ジュリアード音楽院でロバート・マン、ドロシー・ディレイの指導を受け、さらにスイスでシゲティ、ミルシティンの薫陶を受けた。こんな経歴のヴァイオリストは他にいないだろう。
その後の国内外での活動は言を待たない。現在では彼女の後を継ぐ日本の若い有能なヴァイオリニストが続々と輩出している。

以前暮らしていた旭川でも彼女の演奏会は聴いたことがあると思うが、記録がない。92年から05年までは6回だけだったが、10年のリサイタルを切っ掛けに毎年のリサイタルを聴くようになった。12年秋から始まったアフタヌーン・コンサートは毎年聴くほどではないと思っていたが、その時期になるとKitaraに足が向く。
古稀を越えて前橋の演奏活動は疲れることを知らない。14年4月の《バッハ無伴奏ヴァイオリン全曲演奏会》の迫力あるリサイタルは今も脳裏に残る。

2015年10月4日(日) 1:30PM 開演  札幌コンサートホールKitara 大ホール

〈プログラム〉
 エルガー:愛の挨拶
 ベートーヴェン:ロマンス第2番 op.50
 べートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番 op.47 「クロイツェル」
 クライスラー:ウィ-ン奇想曲
 クライスラー:プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ
 パガニーニ(クライスラー編):ラ・カンパネラ
 サン=サーンス:動物の謝肉祭より 「白鳥」
 ショパン(サラサーテ編):ノクターン第2番 op.9-2
 ファリャ(クライスラー編):スペイン舞曲第1番
 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

定刻に間に合わずに遅れて入場する人を待つことを指示したように推察されるが、コンサートは定刻より5分以上遅れて始まった。毎回、前半は予定のプログラムがすべて終了してからステージを下がる。着慣れないロングドレスを引きずって何度も出入りするのは好まない様子である。演奏も一気に自分のペースで弾き切り、集中力を切らさないようにしているように思われる。
今回は特に前半のプログラムの中断を嫌って開始時間を遅らせたように思った。

昨年は楽章間の拍手が無くて良かったが、今年は第1楽章終了後に拍手をする人がかなりいた。第1楽章の終わりが劇的だったので、曲が終ったと思ったようだ。プログラムには第1楽章、第2楽章、第3楽章と3行で示され、楽章間の拍手は遠慮するように書かれていたのだが少々残念であった。演奏家の集中力を妨げてしまったが、前橋は軽く一礼して対応した。(*拍手を無視して、自分の集中力を保つ演奏家が多いように思う。)
「クロイツエル」の演奏自体は前橋の迫真の演奏によって聴衆の満足度は非常に高かった。このヴァイオリン・ソナタの中の最高傑作は何度聴いても感動する。

後半のプログラムはヴァイオリンの小品名曲集。
クライスラーの「プニャーニ様式による前奏曲とアレグロ」は聞いたことのない曲名だと思っていたが、Midoriのアンコール曲集に「前奏曲とアレグロ」の曲があるのに気付いた。クライスラーは自作のオリジナルでも他の作曲家の名を使って編曲のように思わせることを本で読んだことがあった。プログラム・ノートにもオリジナル作品と書かれていた。
後半の7曲は一気に演奏された。1曲終わるごとの聴衆の拍手喝采は絶えることがなかった。超絶技巧を駆使して全力で弾き切った後に、曲調がすっかり変わる曲の演奏も見事で聴衆も心を奪われるほどであった。
昨年と同じ曲はプログラム変更で結果的に新たに加わったファリャの曲だけ。馴染みのある名曲集に客席を埋めた聴衆を感動の渦に巻き込んだコンサートは大いに盛り上がった。

予定のプログラムを息つく暇もなく演奏し続ける彼女の体力と集中力に改めて驚きさえ感ずる。 前半は真っ白のドレス、後半は真紅のドレス。演奏終了後に一度ステージを離れて、再登場してアンコール曲に臨んだ。
アンコール曲は①ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女、②ブラームス:ハンガリー舞曲第1番、③ブラームス:ハンガリー舞曲第2番。

ピアノの松本和将を促してのアンコール曲の披露に聴衆は大喜び。全席指定席の同一料金で1階は満席。3階とP席などは売り出されなかったが、2階もかなりの入りで、1200名ほどの聴衆。コンサート終了後、“今日のコンサートはお得だった”と言っている人もいた。今回はサイン会もあって多分ホワイエも賑わっていたのではないか。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
最新コメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR