札響第581回定期演奏会 ラフマニノフ・プログラム(広上淳一&小山実稚恵)

広上淳一は近年札響と馬が合うのか共演機会が多い。何と言っても広上を有名にしたのは1984年のキリル・コンドラシン国際青年指揮者コンクール優勝。86年にはハイティンクの代役で当時のアムステルダム・コンセルトへボウ管と共演して評判をとった。以後、ロンドン響、バイエルン放送響など世界屈指のオーケストラへの客演が始まった。彼の名はスウェーデンのノールショピング響の首席指揮者として活躍していた当時のCDを2000年頃に偶々買い求めたことで知った。札響と共演した04年の演奏会で彼の指揮ぶりを観たのが最初。08年に京都市響常任指揮者に就任して以来、札響への客演が増えた。Kitara登場も今回が8回目。彼は世界の様々なホールで演奏してきたがKitaraのホールは間違いなく十本の指に入ると語ったことがある。

小山実稚恵は言うまでもなく世界に誇る日本のピアニスト。今年は彼女のデビュー30周年を記念しての演奏会が60数回に及ぶ。彼女は12年間に亘る壮大なプロジェクト“リサイタル・シリーズ”を06年より展開中。Kitara小ホールで年2回は彼女の演奏を聴く機会がある。今回は大ホールでピアノ協奏曲を聴く機会ができた。今回が彼女の演奏を聴くのが28回目。

2015年10月3日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
 
〈プログラム〉
 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 op.30
 ラフマニノフ:交響的舞曲 op.45

ラフマニノフ(1873-1943)自身がピアノを弾くピアノ協奏曲のCDをレコード店で見つけてワクワクして購入したことを思い出す。オーマンディやストコフスキー指揮フィラデルフィア管による原盤が1940・41年物。(最初に手に入れたのが「第1・4番、パガニーニの主題による狂詩曲」。その後、「第2・3番」も手にしたが録音年代が古いためノイズがあった。)
「第3番」はアシュケナージ、ホロヴィッツ、アルゲリッチ、ベレゾフスキーのCD、一番新しいのが93年ライヴ録音の小沢征爾指揮ボストン響&キーシンの最新盤。これは素晴らしい演奏で特に気に入っている。
生演奏で「第3番」を聴いたのはPMF2007でベレゾフスキーによる演奏が強烈な印象が残っている。その他では。2011年の清水和音が全4曲を演奏したことも忘れられない出来事であった。(*04年4月の札響定期での小山の演奏は聴き逃していた。)

「ピアノ協奏曲第3番」は1907年にドレスデンで着手された。完成は09年、アメリカの演奏旅行の最中であった。初演はニューヨークでニューヨーク・フィルとラフマニノフのピアノで行われた。翌年、マーラー指揮ニューヨーク・フィルと再演。人気の「ピアノ協奏曲第2番」と同じようにロシア的情緒が歌われるが、手の大きなラフマニノフが駆使した演奏技術がふんだんに盛り込まれており難曲として知られる。フィナーレ、大詰めにかけての盛り上げの見事さはラフマニノフの名手の腕の見せ所である。ホロヴィッツが演奏機会を多くして第2番に劣らぬ現代の人気曲にしたと言われている。

ピアノ協奏曲を聴くのに運指の様子がハッキリ見える絶好の座席から鑑賞できた。小山実稚恵は美しい長い指を自由自在に使っていた。比較的女性には難しいと思われる曲を期待通りに美しく絢爛豪華に弾いた演奏終了後にはあちこちから“ブラヴォー”の声があがった。04年の尾高指揮札響定期でも「第3番」を弾いているというから、彼女の得意曲と言えるだろう。堂々とした揺るぎない演奏は日本の第一線で活躍する姿を聴衆に力強く印象づけた。

いつも通り、謙虚な態度で聴衆の拍手に応える小山実稚恵。延々と続く盛大な拍手に応えて弾いたアンコール曲は「スクリャービン:左手のための2つの小品 作品9-2より ノクターン」。 左手だけの演奏で単調にならない高度な演奏ぶりは見事!

ラフマニノフの最後の作品となった「交響的舞曲」は1940年にニューヨークで書かれた。この作品は〈交響曲第1番〉などの自作からの引用も見られ、ラフマニノフ自身の新しい人生だけでなく、ロシア的な雰囲気も取り入れた作品になっている。
第1楽章ではダイナミックな主題。オーボエとクラリネットのデュオにサクソフォーンの長い旋律が印象的。コーダに自作の引用が流れる。第2楽章は3つのワルツとコーダから成る。第1楽章の主題から派生したワルツの主題は幻想的で不安感が漂う。当時の戦争への暗い雰囲気のせいかも。第3楽章はグレゴリオ聖歌[怒りの日]のモティ―フを中心にしたフィナーレ。華やかで壮大なロシア的風土を感じさせた。

余り聴く機会のない“Symphonic Dances”は今回に備えて所有しているCD、ラトル指揮ベルリン・フィルとプレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管の演奏を予め聴いておいた。
やはり生演奏に接してみると、曲がより鮮明に浮き上がってくる。「交響的舞曲」は3楽章構成。各楽章に舞踏的な性格があるが、「ハンガリー舞曲」や「スラヴ舞曲」のように躍動的でシンプルな舞曲を連ねた作品ではない。どちらかと言えば、悲劇性を帯びたシンフォニックな曲。当時の暗い時代状況やラフマニノフ自身の不安感が表現されていると考えられる。

小柄な広上がワルツで踊るような仕種を時折見せて大きな手の振りでオーケストラから音を引き出す。先日のN響での指揮ぶりをテレビで観ている時は顔の表情も目立った。今回は顔の表情は見え無かったが、オーケストラを掌中にいれるテクニックを心得ているのが見て取れる。

楽器構成は通常の楽器編成にピアノ、ハープ、6つ以上の打楽器、サクソフォンが加わった。管楽器、打楽器、ピアノなどの活躍が目立った作品で面白かった。演奏終了後に指揮者へのカーテンコールが長く続いた。

帰りのホワイエは出演者のサイン会があって混みあっているようであった。

小山は11月20日に小ホールで開かれるリサイタル・シリーズに再登場。広上は12月23日の「Kitaraのクリスマス」で大ホールのステージに再び立つ。

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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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