工藤重典アニバーサリー・フルート・リサイタル(ランパルに想いを馳せて)

工藤重典がパリ音楽院で師事したフル―ト界の不滅の巨匠ジャン=ピエール・ランパル(Jean-Pierre Rampal)のリサイタルは1987年9月に旭川で聴く機会があった。ランパル(1922-2000)は1964年に初来日してから15回目にあたる87年の日本ツアー22公演で日本でのコンサート回数が当時で225回に達した。器楽界に大変革をもたらす活躍をしたと言う意味ではチェロのパブロ・カザルス、トランペットのモーリス・アンドレ、オーボエのハインツ・ホリガーなどに比肩されるヴィルトゥオーソである。彼らは楽器に新しいページを開いて音楽界全体に計り知れない影響を与えた最高の演奏家。カザルスの生演奏は聴いたことは無いが、他の演奏家のコンサートを聴いたことがある事実は嬉しくて堪らない。

ランパルはウィ-ン国立歌劇場管弦楽団、パリ国立オペラ座の首席奏者を歴任して、一時パリ音楽院主任教授も務めたが、世界中でソロ活動を展開した。工藤重典はパリ音楽院でランパルに師事して、1980年第1回ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールの優勝者であり、ランパルの秘蔵っ子と言えよう。

工藤重典は1999年6月、Kitara 小ホールで「工藤重典 トリオ・エスプリ・ド・パリ」でチェンバロ(ピアノ)、オーボエと三重奏団を組んでパリの仲間と室内楽を演奏した。2007年5月には「工藤重典フルート・ファンタジー」と銘打ってKitara大ホールでリサイタルを開いた。(このコンサートでのピアノ伴奏は野原みどりであった)。その他、工藤はKitaraの記念演奏会や北海道音楽界の節目となるコンサートに度々出演している。直近で聴いたのは10年2月の高関健指揮札響定期で「モーツァルト:フルート協奏曲第1番」。

2015年9月11日(金) 開演19:00  札幌コンサートホールKitara小ホール

Shigenori Kudo Anniversary Flute Recital ~フルートと共に50年

工藤重典は1954年、札幌生まれ。75年、桐朋学園音楽大学を中退して渡仏、パリ音楽院でランパルに師事。78年、第2回パリ国際フルートコンクール第1位。79年、フランス国立リール管絃楽団に首席奏者として入団。79年、パリ音楽院を1等賞で修了。80年、第1回ジャン・ピエール・ランパル国際フルートコンクール第1位。87年、リール管を退団してソロ活動を展開し、パリ・エコール・ノルマル音楽院教授に就任。
以後、04年までにリサイタルを中心に40ヶ国180以上の都市で演奏し、国内外のオーケストラとも数多く共演。1988年、《ランパル&工藤重典/ 夢の共演》で文化庁芸術作品賞受賞。
83年からランパル国際フルートコンクールの審査員。87-09年、サイトウ・キネン・オーケストラ首席フルート奏者、90年から水戸室内管首席フルート奏者。13年、オーケストラ・アンサンブル金沢の特任首席奏者。現在、パリ・エコール・ノルマル教授、東京音楽大学教授、上野学園音楽大学教授。

~工藤重典が10歳でフルートを始めて50年を記念してのコンサート~
〈PROGRAM〉
 クレメンティ:フルート・ソナタ ト長調
 モーツァルト:ソナタ ヘ長調 K.376
 シューベルト:ソナチネ 第1番 二長調
 ドビュッシー:《子供の領分》より「小さな羊飼い」
         《前奏曲第1集》より「亜麻色の髪の乙女」
         《子供の領分》より「ゴリウォ-クのケイクウォ-ク」
 サン=サーンス:ロマンス ヘ長調 Op.36
  チャイコフスキー:6つの小品 Op.51より 第6番「感傷的なワルツ」
 ツェルニ―:協奏的二重奏曲 ト長調 Op.129
  
ピアノ伴奏は工藤重典の娘、工藤セシリア(Cecilia Kudo)。彼女はフランス生まれ。フランス国内の多くのコンクールに出場して、全て第1位を獲得。8歳でフランスと日本のコンサートに出演。東京、札幌、横浜、浜松などでソロや室内楽の公演を行っている。シンガポール、ロシア、韓国における父のツアーで伴奏ピアニストを務めている。

前半の3曲の原曲はヴァイオリン曲。いずれも調性が長調で明るい曲。フルートが奏でる音は特に美しいといつも思っているが、工藤の楽器から奏でられた音は格別に美音で、最初から最後まで心地よい響きを存分に楽しんだ。
3曲とも3楽章構成で聴きごたえがあった。ピアニストは最初は曲が「フルートとピアノのための曲」と思って伴奏していたようである。それほど曲が自然で、フルート奏者の父の演奏が素晴らしいとも言えるのだろう。

後半の聴き慣れた小品は会場が和むような曲が中心でフランスもの。ドビュッシーの3曲は原曲が有名なピアノ作品。「子供の領分」よりの2曲は前回のリサイタルでも演奏した。
今夜のコンサートで工藤はドビュッシーやラヴェルに代表されるフランスの作曲家の曲の特徴を語った。フランスの音楽は「五感に訴える音楽」であり、ドイツの音楽は「和声がしっかりした内臓の音楽」と話したのを聞いてとても納得がいった。ドビュッシーは「風、水、光、空気、川のせせらぎ、太陽の日差し」などを音にしたと言う。

サン=サーンスの〈フルートのための作品〉は聴きごたえがあった。

ツェルニ―(1791-1857)はオーストリアのピアニスト・作曲家。ピアノ教則本で知られている。「協奏的二重奏曲」はピアノとフルートの曲。4楽章から成る本格的な曲。この曲の演奏ではピアノもフルートと対等に渡り合って、セシリアもかなりステージ慣れしている印象を受けた。父が偉大過ぎるので大変だとは感じた。
親子で演奏するのは、マイスキーやアシュケナージ親子のデュオがあったが、日本人では珍しく微笑ましく感じた。

アンコール曲は4曲。「パラディス:シシリエンヌ」、「ショパン:子犬のワルツ」、「フォーレ:子守唄」、「モンティ:チャルダッシュ」。1曲目はウィ-ンの女性作曲家の曲で初めて聞いたが、ショパンとモンティのメロディは全ての人に親しまれている速いリズムでの曲をフルート編曲で吹く技はまさに超絶技巧。開場に詰めかけたファンを魅了した。

小ホール1階の客席はほぼ満席だったが2階に客を入れるために、主催者は公演間近かになってモニターの条件で某プレイガイド会員に半額で売り出した。私自身は久しぶりで日本のフルート界の第一人者の演奏を聴こうとKitara閉館中の4月に郵送でチケットを取り寄せていた。妻がインターネットを通して安い料金が魅力で申し込み一緒に出かけることになった。得をした気分もあってか、コンサートを充分に楽しんだ様子。自分自身もそんな経験が無いわけではない。今は無くなってしまったが、「北海道芸協」には今も感謝の念を持ち続けている。

※「工藤重典アニヴァーサリー・コンサート」が9月21日サントリーホールで開催される。50周年の機会に工藤自身が演奏したい曲目を選び共演者に頼んで実現する運びになった記念演奏会。日本の第一線で活躍している演奏家たちが出演する豪華なコンサート。東京在住の人にとっては珍しくて楽しいコンサートになるであろう。チョット羨ましい。盛会を祈りたい。
この情報が入った「音楽の友9月号」に面白い記事が載っていた。
工藤は子供の頃にフルートとアルペンスキーに熱中していて、将来の進路をどちらに決めるか迷うくらい両面で才能を発揮していたらしい。スキーでは将来の人生設計に不安が残るので、フルートの道を選ぶことになったと言う。正しい選択だったのだろうが、ひょっとしたらスキーでオリンピック選手になっていたかも?

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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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