木野雅之 ヴァイオリンの魅力 Vol.6

木野雅之ヴァイオリン・リサイタル
Masayuki Kino Violin Recital 2015
 
毎年夏に札幌で開かれる木野のリサイタルもヴァイオリンの魅力を伝えるコンサートとして恒例になった。昨年は隠れた名作も聴けて心が和んだ。「木野雅之を聴く会」が主催するコンサート。 ピアノは毎回、藤本史子。

2015年8月24日(月) 7:00PM開演 札幌コンサートホールKitara小ホール

〈プログラム〉
 ピッツェッティ(1880-1968):婚約した娘に与える3つの歌
 フランク(1822-90):ヴァイオリン・ソナタ イ長調
 ガ-シュイン(1898-1937):3つの前奏曲
 シベリウス(1865-1957):3つの小品 作品116
 トロヤン(1907-83):鶯
 サラサーテ(1844-1908):サパテア-ド~「スペイン舞曲集」より 作品23-2

今回のプログラムはフランクのヴァイオリン・ソナタの傑作を中心に、作曲家として名高いサラサーテ、シベリウス、ガ‐シュインの作品からの小品などが演奏された。ピッツェッティとトロヤンは初めて耳にする作曲家名。

ピッツェッティは近現代の音楽を嫌って初期バロック音楽やルネサンス音楽を好んだという。レスピーギの後継者とされるイタリアの作曲家。ロマン派、特にフランクとの共通点があるとされる。1940年の日本の皇紀2600年奉祝曲を委嘱された作曲家のひとり。本日の演奏曲は元々チェロとピアノのための作品。自分の娘に捧げられた慈愛に溢れた曲。

ベルギーに生まれ、フランスで活躍したオルガニスト兼作曲家のフランクはヴァイオリン・ソナタを1曲しか書いていない。1886年に書かれたこの曲はヴァイオリン・ソナタの最高傑作のひとつとして演奏機会の多い曲。名ヴァイオリニストで無伴奏ヴァイオリン曲の作曲家としても有名なイザイの結婚を祝って彼に献呈された。イザイは結婚後かなり経ってからこの曲の意味が解ったという。
このソナタは理性と情熱が見事に調和されて美しさが際立つ作品。4つの楽章の主題が互いに関連を持ち、同じ主題が4楽章に繰り返し現れる。循環形式の試みが曲に親しみを持たせ、味わい深い作品になっていると聴くたびに思う。
演奏終了後に“ブラ―ヴォ”の声も上がるほどの人気曲。

ポップスやクラシックというジャンルの垣根を越えた不滅の曲で有名なガ―シュインが遺したピアノ独奏曲。様々な楽器に編曲されて広く人々に親しまれているという。曲が始まって直ぐに聴いたことのあるガ―シュイン特有の旋律が流れた。ジャズやブルースの聴き慣れたメロディもあり、3つのプレリュードに変化があって面白かった。ニューヨークの街の雰囲気も何となく味わえた。

今年が生誕150周年にあたるフィンランドの大作曲家シベリウスは今シーズン彼の作品を聴く機会が大変多い作曲家。交響詩「フィンランディア」、7つの交響曲、ヴァイオリン協奏曲が取り上げられることが多いが、歌曲やピアノ曲など魅力的な小品を数多く残している。ヴァイオリンを携えて森の散歩に出かけていたといわれるシベリウスは「ヴァイオリンとピアノのための3つの小品」が作品番号のついた最後の作品となった。素朴でありながら生き生きとした様が描かれている。
第1曲 舞踏の情景。第2曲 特徴的な舞曲。 第3曲 ロマンティックなロンド。
最初の2曲はテンポの速い賑やかな踊り。3曲目は一転して緩やかな雰囲気が漂う。文字通りの小品。シベリウスは同時期に「4つの小品」も書いているが、今回は「3つの曲」を意図的に選曲したようである。

チェコの作曲家トロヤンはチェコの人形アニメ芸術の巨匠トルンカの長編アニメ「皇帝の鶯」のために作曲した音楽。アンデルセン原作の映画は〈オルゴールの鶯に夢中になった挙げ句、本物の鶯の大切さに想いを馳せる幼い皇帝の姿〉を描いている。哀愁が漂う雰囲気の作品。うぐいすの鳴き声は美しいが、動物や鳥の鳴き声の表し方が国によって違うのを改めて感じた。

サラサーテは天才ヴァイオリニストとして名を馳せ、献呈された作品も数多い。作曲家としても「ツィゴイネルワイゼン」、「カルメン幻想曲」などヴァイオリンのための名曲を遺している。
「サバテアード」とはヒールを打ち鳴らしながら踊る激しいスペイン・アンダルシア地方の舞曲。(*「サバト」は「靴」を意味するスペイン語。)
ヴァイオリンの名手とあって超絶技巧の曲。02年から日本フィルのソロ・コンマスを務め、13年に東京音楽大学教授にも就任して、多方面で活躍している木野雅之は恩師ルッジェーロ・リッチから譲り受けた1776年製ロレンツォ・ストリオーニを使用して自由自在に名器を操った。
国際ピアノ伴奏コンクール、日本ピアノ歌曲伴奏コンクール優勝の実績を持ち、ソロや室内楽でも活躍している藤本史子も木野と息の合った演奏を展開。フランクの曲では対等にヴァイオリンと渡り合った。

後半の4曲は小品ということで20分程度で終了。少々物足りなかった。演奏会で披露するに相応しい珍しいヴァイオリン曲を集めることは、名曲の小品を弾くのと違って困難が伴うのだろう。
聴衆は聴く会の会員の呼びかけもあってか昨年より増えていた。ピアニストもそんな印象を語って来年の予定を話していた。札幌での公演を二人とも毎年楽しみにしているようである。

アンコール曲は「ヴュータン:夢」と「モンティ:チャルダッシュ」。

※「木野雅之を聴く会」で思い出した。ロシアを代表するピアニストとして世界的に有名なニコライ・ルガンスキーは、2002年にKitaraでシャイー指揮ロイヤル・コンセルトヘボー管と「皇帝」を演奏。09年12月の札響定演で広上と共演して「ラフマニノフの第2番」を演奏した。聴かれた方も多いと思う。実はルガンスキーは18歳の1991年3月に「ルガンスキー聴く会」の主催で札幌公演を行っていた。当時、日本航空が協賛して本州で計画されていたピアノリサイタルの追加公演となったようである。本州の公演では主催が毎日放送、東海テレビ、サントリーホールなどであった。札幌教育文化会館小ホールが会場であったが札幌で聴く会を設立して努力した人たちのお蔭で彼の日本デビューを聴くことができた。忘れられない思い出である。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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