PMFオーケストラ演奏会(指揮:準・メルクル)〈プログラムA〉 

今年で26回目となるPacific Music Festivalは新芸術監督にロシアの巨匠ワレリー・ゲルギエフを迎えた。首席指揮者として参加を予定していたデイヴィッド・ジンマンが健康上の理由でキャンセルとなり、準・メルクルが首席指揮者を務め、アンドリス・ポーガが客演指揮者としてアカデミー生の指導にあたる。

約1000人の応募者の中から世界24ヶ国・地域から85人の若手演奏家がオーディションに選ばれてPMF2015に参加して教授陣から指導を受けて、その成果を発表する。

PMF Orchestra Concert 〈Program A〉 

2015年7月18日(土) 15:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

[曲目]
 メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」組曲 作品61
 マーラー:さすらう若人の歌
 ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70

[出演]
 準・メルクル(指揮)、松原 友(テノール)、PMFヨーロッパ、 PMFオーケストラ

準・メルクル(Jun Markl)は1959年、ミュンヘン生まれのドイツ人。05年にリヨン国立管の音楽監督、07年にライプツイヒ放送響の首席指揮者に就任。N響、水戸室内管と頻繁に共演。PMFには05、08年に客演指揮者として参加し、13年に首席指揮者として登場。今回で4回目の参加。

松原 友(Tomo Matsubara)は東京藝術大学卒業。同大学大学院修了後、ミュンヘン音楽大学大学院、ウィ-ン音楽大学卒業。1997年、全日本学生音楽コンクール・声楽部門(高校生の部)第1位。2012年第81回、14年第83回日本音楽コンクール・声楽部門第3位。ヨーロッパや日本各地でリサイタル、オラトリオの公演をはじめ、ミュンヘン放送管、新日本フィル、大阪フィルなどと共演。関西二期会会員。PMFには初めての参加。

メンデルスゾーンは17歳の1826年にピアノ連弾用の序曲を作曲し、のちに管弦楽用に編曲した。1843年(34歳)にプロシャ国王の命によりあとの12曲が作曲された。シェイクスピアの喜劇「真夏の夜の夢」のための付随音楽は序曲を含め13曲から成る。演奏会では「序曲」だけか、組曲として12曲の中から数曲が抜粋されて演奏されるのが普通である。
プログラムに抜粋された曲名が書かれていなかったのが残念だった。印刷の時点で抜粋曲が判明していなかったと思われる。「序曲」と有名な「結婚行進曲」の他に「スケルツォ」、「間奏曲」、「夜想曲」と「終曲」で全部で6曲が演奏されたと思った。何年ぶりかで耳にしたので確かではない。

メルクルはドイツの歌劇場の音楽総監督を歴任していて経験豊富なので、オペラの指揮が堂に入っていると感じた。

マーラーの歌曲はトーマス・ハンプソン歌唱による「亡き子をしのぶ歌」と「リュッケルトの詩による歌」をPMF2011で聴いた記憶が鮮明である。以前は全然知らなかった曲が今は身近に聴ける。
「さすらう若人の歌」というタイトルはこの歌曲がマーラーの交響曲第1番のCDにカップリングされていたのが知った切っ掛けである。題名はハッキリと覚えているが歌の内容には親しんでいない。歌詞はともかく曲を聴いていると交響曲第1番に出てくるメロディに親近感が湧く。4曲から成る曲にマーラーの自叙伝的な側面があることに今頃気付くくらいだから、彼の歌曲への関心の低さを思い知らされた。マーラーにとって歌曲と交響曲の関係は密接なので彼の交響曲の鑑賞にも歌曲の理解が必要なのかもと思ったりする。
松原の歌声は柔らかで澄んでいる。今後の活躍に注目したい。

ドヴォルザークの交響曲は第8番と第9番の人気が圧倒的である。チェコやスロヴァキアのオーケストラの来日公演でもこの2曲のどちらかが演奏曲に必ず入る。最近はいささか閉口気味。幸いなことに、札響名誉指揮者ラドミル・エリシュカが定期公演でチェコの音楽を幅広く紹介してくれた。「交響曲第7番」は09年4月の札響定期で演奏した時には大きな反響を呼んだ。なぜ今迄こんな名曲が演奏されずにいたのかと思った定期会員が多数いたようである。(:*ドヴォルザークの交響曲全集を手に入れて聴く機会を持ったが若い番号の交響曲はともかく第5番や第6番も聴きごたえがある。この2曲もエリシュカは演奏してくれた。)
第7番にはチェコの民族音楽が豊かに表現されている。ベルリン・フィルの首席奏者がソロで奏でる木管楽器や金管楽器の美しい旋律は心を揺さぶる。教授陣が入ったオーケストラは4管編成。コンサート前半も良かったが、教授陣が加わった後半のプログラムは音の響きも一段と輝きと深みを増した印象を受けた。ロマン的な情感に満ち溢れた緩徐楽章の第2楽章やスケルツォの第3楽章は何とも魅力的だった。
準・メルクルの表情豊かな多彩な指揮ぶりは鮮やかだった。それに応えたPMFヨーロッパとアカデミー生の呼吸もピッタリ!

PMFのコンサートは毎年回数を多くしているので、オーケストラ演奏会は安価なB席かC席で聴いてきたが、今年はS席にして1階10列中央の席を選んだ。オーケストラの音、特にファカルティ・メンバーの奏でる音が真正面から聴こえてきた。色々な好条件が重なって恵まれた状況で鑑賞できたと思う。満足度は最高であった。
演奏終了後にブラヴォーの声も飛び交って、まわりの雰囲気は今までにない感動の渦。メルクルは何度もステージに登場し、教授陣、各パートの奏者を起立させたりして敬意を表した。各パートの首席、副首席に歩み寄り握手する姿も感動的だった。一昨年もメルクルの指揮でキュッヒルがコンマスを務めたコンサートがあったが、キュッヒル自ら再度メルクルに握手を求めて祝福した姿も印象に残った。教授陣同士やアカデミー生同士が互いの健闘を称えあって握手したりハグしたりしている姿も微笑ましかった。とにかく聴衆の満足度というか感動の度合いは今まで経験したことがないような雰囲気が大ホールに漂っていたことは確かである。

※アカデミー・メンバーの男性は黒の蝶ネクタイ、ファカルティ・メンバーは白の蝶ネクタイが恒例でステージ上の区別が付いていたが、今回は教授陣は普通のネクタイをしていた。どうでもいいようなことだが、こんなことも観察していると楽しいのである。

[追記] コンサート鑑賞の後にブログを書くのが習慣化しているが、ブログの前にTwitterでつぶやいてもいる。開会式でサラ・ウィリスの着物姿のスナップ写真をツイッターで見て第3者にも知らせる目的で英語でリツィートしたら彼女からお気に入りの通知がきた。「PMFベルリン演奏会」の感想をTwitterに載せた時も彼女から直ぐお気に入りの通知が入って嬉しかった。Berlin Philharmoniker を通じてのラインが繋がっていたのかも知れない。

18日の「PMFオーケストラ演奏会」の後にもつぶやいたら、思いがけずにその日のうちに準・メルクルご本人からのお気に入りの通知が入っていた。ご本人も満足する素晴らしい演奏になって一般の反応を見ようと思ったのかも知れない。いずれにしても嬉しい出来事になった。(7月20日)

※メンデルゾーンの戯曲のドイツ語は“Ein Sommernachtstraum”。日本語訳は「夏の夜の夢」が適訳と思う。Shakespeareの作品“A Midsummer Night's Dream”の坪内逍遥による日本語訳「真夏の夜の夢」が固定化していた。戯曲での場面は「真夏」ではなく「夏至」の頃なのでメンデルスゾーンもSommernacht(夏の夜〉としたのではないだろうか。
最近ではメンデルスゾーンの作品は「夏の夜の夢」という日本語訳も多くなってきたようである。ずっと気になっていたが、追記として書き加えることにした。(8月18日)
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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