千住真理子&ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

千住真理子デビュー40周年記念
創設1870年のドレスデンの名門オーケストラがデビュー40周年を迎えた千住真理子と共に贈るコンサート。

2015年6月29日(月) 7:00PM開演  札幌コンサートホールKItara大ホール

千住真理子は幅広いジャンルで活躍しているが、海外のオーケストラと共演する機会の多いヴァイオリニストである。彼女の演奏を聴くのは2000年以降で今回が7回目である。

ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団(Dresdner Philharmonie)の創設は1870年に遡るが、現在の名称になったのは1915年からである。ブラッソン、ヤノフスキーやフリューベック・デ・ブルゴスが首席指揮者を務めて今日のドイツ音楽の伝統あるサウンドを築きあげた。

ミヒャエル・ザンデルリンク(Michael Sanderling)は1967年、ベルリン生まれ。戦後の古き良きドイツの伝統音楽を引き継いだ巨匠クルト・ザンデルリンクの息子。ミヒャエルの兄、トーマスは1988年に札響を客演指揮。もう一人の兄シュテファンも指揮者として2000年N響札幌公演で共演。
兄二人に続いて末弟も札幌デビューとは珍しい音楽一家である。ただ父親が20世紀の偉大な指揮者であったので父を越えるのは難しいかも知れない。ヤルヴィ一家の例もあるから、一概には言えない。
ミヒャエルはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ベルリン放送響などのチェロのソリストを務めて世界的に活躍した後、2001年に指揮者活動を開始。チューリッヒ・トーンハレ管、バイエル放送響、ドレスデン国立歌劇場管などに客演。2004年にドレスデン・フィルを指揮して、11-12年シーズンから首席指揮者に就任。

ドレスデン・フィルは《バッハ:「マタイ受難曲」全曲》演奏で2010年12月、ドレスデン聖十字架合唱団と共にKitaraで演奏した。「マタイ受難曲」はショルティ指揮シカゴ響とシカゴ響合唱団のCDで一度聴いたが壮麗な音楽で度々聴くことは無いが、印象度が高かった。宗教曲は慣れていないので鑑賞は難しい。
今回は5年前より楽員構成も大きくて本格的なオーケストラ演奏になった。プログラムによると4管編成が可能な団員構成。

〈PROGRAM〉
 ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」序曲 Op.72
 メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64 (ヴァイオリン/千住真理子)
 サラサーテ:「ツィゴイネルワイゼン」 Op.20 (ヴァイオリン/千住真理子)
 ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 Op.67 「運命」

ベートーヴェン{1770-1827}の唯一のオペラが「フィデリオ」である。歌劇「フィデリオ」のために書いた序曲は4つある。「レオノーレ第3番」が演奏される頻度が高い。「フィデリオ」序曲はオペラの本編とは関係ない独立した管弦楽曲。劇的な序奏で始まる堂々とした曲。

メンデルスゾーン(1809-47)の「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調」は彼の作品の中でも最も親しまれていて、三大ヴァイオリン協奏曲として有名であり、その内容に触れるまでもない。この曲が彼の最後の管弦楽曲となった。メンデルスゾーンは13歳の時に「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調」を書いていた。メンデルスゾーンの自筆譜を1951年にユーディ・メニューインがロンドンで見つけた。そのためベートーヴェンやブラームスと違ってメンデルスゾーンには「ホ短調」が必ず後に付く。

最初の美音が奏でられた瞬間から千住のヴァイオリンの世界に引き込まれた。演奏機会が多くて毎回全神経を集中して聴けるわけではないが、今日は一段とこの曲の素晴らしさを堪能できた。千住が自己所有しているストラディヴァリウス「1716年製デュランティ」で弾くカデンツァが彼女の思い通りの音を紡いでいるのだろうと聴き惚れた。
聴き慣れた曲とあって彼女の演奏にブラヴォーの声が上がった。

Kitaraの再開後に大ホールと小ホールで共に連日のように続くコンサート。先週のプラハ放送響は大入りであったが、やや知名度が劣り、宣伝の差もあってか今夜は2階・3階席で空席が目立った。一番高額で良い席と一番安い席が売れるのが特徴のように思われる。

後半のプログラムもソリストの演奏で始まった。サラサーテ(1844-1908)は19世紀ヨーロッパに輩出したヴァイオリンの名手の一人。数多くの作曲家からヴァイオリン曲を献呈されている。彼自身も自らの演奏のためにスペインの民族色に溢れた技巧的なヴァイオリン曲を多数書いている。「ツィゴイネルワイゼン」とはドイツ語で“ジプシーの調べ”の意味。ハンガリーのジプシー楽団の名人芸が披露される華麗な作品。

千住の演奏に聴衆は盛り上がって万雷の拍手でアンコール曲を求めたが、大曲と小品の2曲の演奏の後でアンコール曲は遠慮した様子であった。今回のドレスデン・フィルの日本ツアーは今日が初日で、ソリストの千住の出演は今回だけであった。

ベートーヴェンの「運命」も今更、言及するまでもない。世界のオーケストラは国際化の波で各国の特徴が薄れてきていると言われる。その中で旧東ドイツ所属の「ライプツィヒ・ゲバントハウス管」や「シュタ―カペレ・ドレスデン」などは古き良き時代の伝統を守って独自の特色を出しているとの定評があった。
漠然とした先入観しかなかったが、昨年のドレスデン・フィル日本ツアーの折にインタヴューに応えたミヒャエルの言葉がウエブ・サイトに載っていて印象に残った。「ドレスデンはボヘミア族の住む地域に近く、楽団員の構成でも独特の音楽を引き継いでいて他のドイツ地域とは違うドイツ特有の音色を持っている」。
「運命」の演奏でも、今まで聴いてきた重々しい音色とは違う、歌うような明るさを伴った響きが聞こえてきた。こんな印象で「運命」を耳にしたのは初めてのような気がした。
家を出る前に世界地図でドレスデンの場所を確認するとチェコとの国境に近い。会場に向かう中島公園では、2日前の札響名曲シリーズで指揮をしたエリシュカがまだ札幌に滞在していたのか、奥様とホテルに向かう途中で出会った。Kitaraから帰る途中でドレスデン・フィルの関係者と交流してきたと想像できた。
こんな状況が「運命」を聴く環境を変えていたのかも知れない。いずれにしても、何度も聴く「運命」に新鮮な響きを感じ取った次第である。

ミヒャエルは背が高く格好が良い。楽譜を丁寧に読みながらメリハリをつけながらの演奏。小さな動作と手の長さを使った大きな身体の動きを混ぜながら曲の表情を変化させていた。指揮の勉強に忙しく、将来を嘱望されたチェリストの道を断って、指揮者の道を歩んでいる。(昨年のインタヴューでチェロを弾く時間もなく、チェリストとしてコンサートに出演することは無いと断言していた。) N響や読響とも共演して、先日のEテレでN響と共演の様子も上映された。日本での知名度も上がり今後が期待される指揮者である。
アンコール曲は《ロッシーニ:歌劇「ウイリアム・テル」序曲》で会場も盛り上がって聴衆も今日のコンサートに満足した様子で家路に着いた。

※ドレスデン・フィルの日本公演はこの後7月2・3・4・5・6・8日と続く。6日のサントリーホールの公演にソリスト(清水和音)が入るが、他は全てオーケストラのみ。ベートーヴェンの交響曲が中心で各地でプログラムが違う。木管奏者が各4名で、楽団員の負担が掛からない体制を組んでいることに感心した。(*来日楽員92名)








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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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