五嶋 龍 ヴァイオリン・リサイタル 2015

五嶋 龍(Ryu Goto)は1988年、ニューヨーク生まれ。
PMF1995でデビュー。 2006年と2012年のリサイタル、2013年のミュンヘン・フィルとの共演に続いての札幌公演。
06年、12年のリサイタルのチケットは完売で超人気のヴァイオリニスト。

未熟児で生まれたが、母親が歌うモーツァルトの子守歌を毎晩聴いて育ち、絶対音感が備わっていた。2歳半で小さなヴァイオリンを渡され、正しい音階で弾くことができたという。7歳で佐渡裕指揮PMFオーケストラと「パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番」を演奏。96年から10年間に亘って、フジテレビのドキュメント番組で成長過程が紹介され、その間に世界のオーケストラや日本国内の主要オーケストラと共演。2001年1月1日、東京のカザルスホールで初のリサイタルを開催して、同ホールでの10回の公演が全て満席となった。アメリカ以外でメキシコ、チェコ、ノルウェ―などでもリサイタルを開いた。
2006年5月にニューヨークのトリニティ高等学校、ジュリアード・プレカレッジをそれぞれ卒業。同年9月、ハーバード大学に入学して物理学を専攻し、11年5月に卒業。
演奏と学業の両立を目指し、さらに幅広い趣味(空手、鉄道、ギター)を持ちながら人間形成に大切な活動をしながら成長してきた様子が2006年の日本国内リサイタルの折に発売された公演プログラムを読めば大変良く解る。インタビュー応答では彼の飾らない人柄や前向きな生き方が明らかになっていて大変面白かった。日本での国内ツアーを本格的に展開したのは高校卒業後で彼の将来の進路の目処がある程度ついてからである。12年のリサイタルも大学を卒業してからの日本国内ツアーであった。この頃はアーティストになる決意をしたようである。
今回のリサイタルに備えて、06年プログラムの中味の濃い内容記事を改めて読み返してみて彼の母親の子育てや彼自身の考え方がより深く理解できたように思えた。

2015年5月16日(土) 16:00開演  わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)

〈PROGRAM)
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op.47 「クロイツェル」
 サーリアホ:トカール
 フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
 ヴィエニャフスキ:創作主題による華麗なる変奏曲 Op.15
 
今回のプログラムは前2回と比べて聴衆を意識したのか、極めてポピュラーで正統派の選曲。今まではどちらかと言えばRyu好みの曲だったように思う。今回は満を持してヴァイオリン・ソナタの大曲2曲に挑んだとも言える。ヴァイオリン・ソナタの中でコンサートで演奏される機会が多くて人々に親しまれている名曲である。

ピアノは前2回と同じくマイケル・ドゥセク(Michael Dussek)。ロンドンでデビュー以来40年以上にわたり室内楽に携わり、多くの世界トップクラスのアーティストと共演し、世界中の主要コンサート・ホールに登場している。五嶋龍とはデビュー・アルバム以来の共演を続けている。多岐にわたる演奏活動のほか、ドゥセクはロンドン王立音楽院教授として後進の指導にもあたっている。

「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」はベートーヴェンではタイトルの通り、ピアノとヴァイオリンが同等の役割を果している。第5番と第9番は断然聴く頻度が高い。CDもオボーリンとオイストラフ、シェリングとルービンシュタイン、アルゲリッチとクレーメルなど偉大な『ピアニストとヴァイオリニスト』の協演盤で聴いている。
今までのRyu はヴァイオリンが目立つ選曲が多かったように思うが今回は共演のドゥセクの活躍も印象的だった。
「第9番」は当時の最高のヴァイオリニスト、クロイツェル(1766-1831)に捧げられたが、精神的な重圧感のため結果的にクロイツェルは一度も演奏することはなかったという。

「クロイツェル」の第1楽章はヴァイオリンとピアノの掛け合いが面白い。満席のホールで第1楽章が終ると曲が終ったと勘違いして拍手をする人が結構いたが止むを得ない。第2楽章は叙情的な主題と4つの変奏。第3楽章はタランテラ風のリズムを持った華麗で変化の多い楽章。ベートーヴェンの全10曲の中で何度聴いても素晴らしいと思える曲。

サーリアホの名は最近耳にしたばかりでフィンランドの現代作曲家だと思うが、詳しくは知らない。曲は10分足らずの小品。本日のプログラムに新しく載っていた曲で、耳にするのは初めて。

休憩時間中に昨年9月にニューヨークで録音された今回の日本ツアーのプログラムとほぼ同じ2枚組のCDを購入した。サイン会があるということで出来れば言葉を交わしてみたいと思ったが結果的に無理だった。

フランク(1822-90)はベルギー生まれの作曲家。有名な作品が60歳を越えて生まれている。「ヴァイオリン・ソナタ」が1886年、「交響曲ニ短調」が1888年作曲。彼はヴァイオリン・ソナタを1曲しか書いていない。作品はヴァイオリンの名手、イザイに捧げられ、1886年に初演された。4つの楽章の主題が互いに関連を持ち、ロマンティックなメロディが曲全体を支配して心地良い音楽となって響き渡る。ヴァイオリンが優雅で叙情的な調べを紡ぐ。同じ主題が繰り返し現れるので親しみ易い。
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタも聴く機会が多いが、彼の作品は沢山あるので、最近は特定のソナタ曲ではフランクの曲が気に入っている。何度聴いても飽きない曲。
曲が終ると万雷の拍手が巻き起こってブラボーの歓声も沸いた。
 
ヴィエニャフスキ(1835-80)はポーランド出身のヴァイオリニスト・作曲家。華麗で優美な作品が多く、超絶技巧が必要でヴェンゲーロフやレーピン演奏のCDが手元にある。この変奏曲は彼が十代の時に書いた作品。哀愁を帯びたテーマがドラマティックに変化していく様が高度な技巧で描かれる。叙情的で美しい変奏曲。この曲も今日手渡されたプログラムで知った演奏曲であるが何となく覚えていた曲名。
演奏が終了すると満席の聴衆から感動の拍手が会場全体に広がった。本日の演奏への満足度を示す拍手とアンコールを促す拍手が入り混じっていたと思う。五嶋龍の演奏は何時も伸び伸びとして自由闊達なのが良い。楽しんで演奏すると観客にもその楽しさが伝わる。

アンコール曲は3曲。
 グルック(クライスラー編曲):メロディ
 ハチャトリアン(ハイフェッツ編曲):剣の舞
 クライスラー:美しきロスマリン

聴衆は満足した様子で、帰りにCDを買い求める人でホアイエは大混雑。サイン会の場所もわからない状態で、そのまま外に出ざるを得なかった。入場開始前の会場入口の整列も含めて、大勢の客が押し寄せる状況での主催者の対応に配慮が足りないと感じた。客の自制心で何とか騒ぎにはなっていないのが現状のようである。

函館、札幌、音更と北海道での3公演でスタートした日本ツアーは5月31日の盛岡まで成功裡に続くことを願う。

※五嶋龍の使用楽器は2014年以降、日本音楽財団より貸与されたストラディヴァリウス「ジュピター」であるが、それ以前はNPO法人イエローエンジェルより貸与されたストラディヴァリウス「エクス・ピェ-ル・ローデ」を長年使用していた。その好意に報いるためか、彼はこの数年年末の数日間、名古屋の宗次ホールでコンサートを開いているようである。
 彼はボランティア活動にも取り組み、「五嶋龍“Excellence in Music”(音楽優秀賞)」を設立し、2010年より毎年ニューヨーク市内公立高校生に奨学金を授与する社会貢献活動も行っている。




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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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