橘高昌男リサイタル(チェンバロとモダンピアノで)

「4月4日はピアノ調律の日」記念コンサート
5年前の《ピアノ調律の日 記念レクチャー&コンサート》に於いて上野真が三台のフォルテピアノでベートーヴェンを弾いたのを記憶している。ここ札幌では毎年この時期に日本ピアノ調律師協会北海道支部が主催して記念コンサートが開催されている。今回は「北海道ゆかりの音楽家シリーズ」の第2回目として橘高昌男氏が招かれた。

橘高昌男は2005年、「Kitaraのオータムコンサート~日本音楽コンクール優勝者によるコンサート」に外山啓介と共に出演した。同じ札幌出身ということでのKitara自主企画のコンサートであったと思う。橘高は1996年、外山は2004年の優勝者。ちなみに鈴木慎崇(2002)、吉田友昭(2010)も札幌出身で日本音コンの優勝者である。彼らは札幌でピアノを習っている生徒・学生の努力の励みになっているピアニストたちであると思う。


橘高昌男(きつたか まさお)は東京藝術大学付属高等学校を経て、同大学を首席で卒業。第65回日本音コン第1位。イル・ド・フランス国際ピアノコンクール第1位ほか海外のコンクールに入賞。2001年文化庁在外研修員としてジュネーブ音楽院に学び、同音楽院を卒業後、更にパリ国立地方音楽院でフォルテピアノを専攻し最優秀の成績で卒業。これまでに東京響、都響、札響、新日本フィルなど数々のオーケストラと共演。フェリス女学院、武蔵野音大で後進の指導にも当っている。

2015年4月5日(日) 開演 17:00  札幌市教育文化会館小ホール
橘高昌男リサイタル  ドイツ、フランスへの誘い(チェンバロとモダンピアノで)

〈PROGRAM〉
 J.S.Bach:シンフォニアから第1番、第14番 (チェンバロとピアノ)
 Mozart:ロンド イ短調 KV511 (ピアノ)
 Schumann:フモレスケ 作品20 (ピアノ)
 F.Couperin:「クラヴサン奏法への追加」から第1プレリュード
        クラヴサン曲集 第2巻 第6組曲より第5曲
        クラヴサン曲集 第3巻 第18組曲より第6曲 (チェンバロ)
 Ravel:「クープランの墓」から 前奏曲、メヌエット、トッカータ (ピアノ)
 Chopin:即興曲 第2番 作品36 嬰へ長調
      ワルツ 第5番 作品42 変イ長調
      バラード 第1番 作品23 ト短調 (ピアノ)

ステージに色鮮やかなチェンバロとYAMAHAのピアノ。この二台の楽器を使ってバッハの曲、第1番(ハ長調)と第14番(変ロ長調)を交互に弾いた。柔らかで小さい音しか出せないチェンバロと強い音を出せるピアノでは同じ曲でも全く違った雰囲気。

モーツァルトはフォルテピアノの方が当時の感じが出せたのかも知れないと思った。最近、このロンドを聴く機会が多いのでモダンピアノで聴き慣れてきた。ドラマティックで幻想的な感じが味わえた。

シューマンの「フモレスケ」は今まで余り耳にしたことが無かった。彼の喜怒哀楽が曲の中に自由に表現されていて聴きごたえがあった。小品かと予想していたら、20分ほどの曲で味わい深い作品。日本ではドヴォルザークの「ユ―モレスク」が有名で親しまれているが、クライスラーが「8つのユーモレスク」の第7曲をヴァイオリン曲に編曲して、より知られるようになったようだ。ドヴォルザークのピアノ曲も8曲全部は聴いたことが無いので、類推だが全曲は、シューマンの「フモレスケ」とほぼ同じような長さなのかも知れない。
英語の“Humoresque”に相当して「ユーモラスで軽やかな曲」に語源がありそうだが、2作品ともCDがあれば手に入れてみようと思ったくらい興味をそそられた。

前半はドイツ・オーストリア音楽だったが、後半はフランス音楽。

F.クープランはバッハと同時代のフランスの作曲家。彼の作品全部に題名が付いている。演奏曲目の第5曲は「神秘的なバリケード」、第6曲は「テイク・トク・ショック、オリーブしぼり機」。
楽器名でチェンバロはイタリア語、クラヴサンはフランス語、英語はハープシコード、ドイツ語はキール・フリューゲルで国によって呼び方も異なる。日本では通常イタリア語、偶に英語が使われている。(*音楽用語はイタリア語が多い。)
本日用意されたチェンバロは〈堀栄蔵制作 1987年製 フレンチスタイル 61鍵、2段鍵盤〉でバッハの作品より長くて、チェンバロでもドイツとフランスの違いが何となく解る気がして楽しめた。

ラヴェルはクープランの古典様式に従って書いたピアノ作品は6曲ある。昨年10月のケント・ナガノ指揮モントリオール響による演奏以来、手元のジャン=イヴ・ティボーデとアンヌ・ケフェレックのピアノ曲でこの曲を聴く機会が増えた。第一次世界大戦の時に書かれたこの曲はクープランに代表されるフランス音楽を讃えた6曲からなる作品。「前奏曲」はクラヴサン音楽を想起させる。戦争で亡くなった友を懐かしむ曲でもある。ラヴェル独特の音楽表現も楽しめた。

ショパンは人生の大半をフランスで過ごしたことから、フランス音楽の範疇に入れてのプログラム。彼の曲は親しまれた作品ばかりで言及の必要がない。 会場を埋めた聴衆は聴き慣れた、あるいは弾き慣れた曲にウットリ!

普通のリサイタルと違って主催者からの要請もあったのだろうが、レクチャーを入れながら、ドイツ・フランス音楽の違い、チェンバロとモダンピアノの聴き比べなど教育的なコンサートは特色があって印象的なコンサートになった。

5年前のコンサートも超満員であったが、今日のホールもほぼ満席で家族連れや若い人の姿で充実した活気ある演奏会。春休み期間中で、低料金でもあり参加しやすいようである。私は今回2回目だったが来年以降もスケジュールに入れておきたいコンサート。

チェンバロとモダンピアノを同じステージで弾くのは気分の切り替えなどで大変難しいと言う話だったが、ピアニストはアンコールに「バッハ:インヴェンション イ長調?」をチェンバロとピアノで演奏。大学で教鞭を執っている所為や聴衆に子供たちも目立ったこともあり、適切な説明と真摯な姿勢で好印象。もちろん、ピアノ演奏が充分に魅力的であったことは第一に挙げられる。

※追記:ブログを読んでくださった方からアンコール曲は“ハ長調でした”というご連絡を頂きました。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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