METライブビューイング2014-15 《イオランタ》&《青ひげ公の城》

第8作は2本立て。
チャイコフスキー 《イオランタ》 MET初演  全一幕  ロシア語上演
バルトーク 《青ひげ公の城》 新演出  全一幕  ハンガリー語上演

2本共にタイトルを知っているだけで、ストーリーも全然わかっていないので、近年はこのようなオペラ作品に興味がある。特に今回はネトレプコが主演するので期待していた。《マクベス》ではドラマティックな歌唱と迫真の演技で圧倒的な存在感を示した。今やアンナ・ネトレプコはMETの女王の風格充分で世界のディーヴァと言えるだろう。

《Iolanta》
昨シーズンの第1作《エフゲニー・オネーギン》に続いて名指揮者ゲルギエフとネトレプコのゴールデン・コンビで、相手役もピョートル・べチャワ。三人ともロシア物の上演では特に気が合っての共演。
ロシアでは人気のオペラが123年の歴史を持つMETでは初演。ロシアの歌姫の登場で可能になった作品かもしれない。

アンデルセンの童話を基にしたチャイコフスキー晩年の作品。目が見えないことを知らない王女イオランタが人里離れた森の館で乳母たちに囲まれて幸せに暮らしていた。レネ王は見知らぬ人との接触を禁じていた。ある日、彼女の婚約者になっていたロベルトが王に婚約解消を告げるために、友人ヴォデモンと森の中で迷い込んでいた。
城の一室でイオランタを見たヴォデモンは彼女の美しさに魅了されてしまう。彼は彼女が盲目であるのに気付いて、彼女の知らない光の素晴らしさを伝えて「二重唱」を歌う。(この二重唱が素晴らしい。)ヴォデモンは王に姫を妻にと望み、結果的に願いが叶う。イオランタの“光を見たい!”という叫びが手術の成功に結びつき目が見えるようになってハッピーエンド。

80分程度の一幕物で舞台は簡素だが、館が回り舞台になっていて森の様子にも転換できる舞台装置。チャイコフスキーの美しい音楽を中心にソリストたちの歌唱がそれぞれ素晴らしかった、大向こうをうならせる見せ場が各々のソリストにあった。主役だけでなく脇役のアリアも聴きごたえがある歌唱。(ネトレプコの太り過ぎの体が少々気になった程度。)
闇から抜け出て浴びる光、世界の美しさ、生きることの美しさを歌い上げ、全員の合唱で大団円の舞台を飾るフィナーレは見応えがあった。

《Bluebeard's Castle》
元々はグリム童話でペローやメーテルリンクによって戯曲化されたらしい。字幕に原作がペローとなっていた。グリムの童話には大人向けの作品があるようだが、この童話の原作は完全に大人向けである。
バルトークの唯一のオペラ。《青ひげ公の城》の音楽は初めて耳にしたが、物語の内容に即して極めて音楽が陰湿で重苦しい雰囲気が漂う。専門的には解らないが、各場面で短調や長調で曲の色彩を変化させているようである。

プロローグに始まり、7つの扉を開けてストーリーが展開される。実質的な出演者は2人。ソプラノのN.ミカエルとバリトンのM.ぺトレンコ。
愛する夫の全てを知ろうと城の中を案内してもらう新妻ユティット。第1の扉は拷問部屋。第2の扉は武器庫。第3の扉は宝物庫。いずれの室にも血痕が付着していた。第4の扉は秘密の庭園。白いバラに血痕。土に血が染み込んでいた。第5の扉は青ひげの広大な領地が見える部屋。雲から赤い血の影。不吉な予感が押し寄せる中でユティットは残りの扉を開けるように迫る。
2人の心理状態が緊迫する。第6の扉は涙の湖。2人は抱擁する。妻は夫が過去に愛した女のことを聞いて嫉妬する。やがて殺したのではと疑う。最後の扉を開けるのに抵抗していた青ひげだが、遂に第7の扉が開く。3人の妻が列になって現れる。まるで生きているようで美しい姿。彼女たちは「夜明け」、「真昼」、「夕暮れ」を支配している。青ひげは「4人目を真夜中に見つけた」と言い、彼女も4人目の妻として第7の扉に消える。青ひげも暗闇の中に消えていく。

映像でストーリーが綴られるので、実際の舞台が曖昧で解り難かった。実演なら緊迫感があったかもしれない。サスペンスオペラで意外性はあった。愛する人のすべてを知ろうとして、相手の心の奥底まで踏み入ってしまう人間の性。悲劇になってしまうドラマは現代にも通ずるところがある。
2人だけの心理劇を迫真の演技で表現したミカエルとぺトレンコの演唱を他のオペラでいずれかの機会に聴いてみたい。

演出家によると今回のオペラは1つの続き物として演出したと言う。目が見えなかった女性と目が見える女性の対照的な童話ともとれる。

私は2011年からMET Live Viewing を見始めて、今は年に5・6本は鑑賞している。妻も昨年あたりから私以上にMETビューイングが面白くなって忙しいスケジュールを縫って私と別の日に楽しんでいるようである。





 
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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