第4回東日本大震災被災者支援コンサート・遠藤郁子(ピアノ)

ピアニスト遠藤郁子は毎年東日本大震災被災者支援コンサートを開催している。昨年までは他の催し物との兼ね合いで行ったことが無かった。彼女の演奏会は92年から5回は聴いている。90年代はベートーヴェン、2000年に入ってからはショパンの作品が多かった。

遠藤郁子(Ikuko Endo)は1944年、東京生まれの札幌育ち。母遠藤道子の手ほどきを受け、東京芸大在学中に海外派遣コンクールで安宅賞を受賞。日本代表として1965年、第7回ショパン国際コンクールに参加してポーランド批評家連盟特別銀賞受賞。(70年、ショパン国際コンクール第8位。)大学を中退してポーランドに留学。ハリ―ナ・チェルニー=ステファンスカ(第4回ショパン国際コンクールの優勝者)に師事。ポーランド、旧ソ連、日本各地でリサイタルやオーケストラとの共演を重ねる。68,70,73年、札響と共演。その後、パリで研鑚を積み、その間に東欧諸国でも演奏活動を行い、ザグレブ音楽祭などに出演。
 94年1月札響定期で「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番」を演奏。2000年9月、〈カワイコンサート30周年記念〉の特別企画としてKitara大ホールで《遠藤郁子ピアノリサイタル》を開催。プログラムは「ベートーヴェン:月光、熱情」と「ショパン:ワルツ全曲」、和装で温かみのある独特な演奏を展開した。翌年6月〈オール・ショパン・プログラム〉でKitara 再登場。「ノクターン」、「バラード」を中心に彼女の人生の生き様の中に聴衆を引き込んだ。彼女は90年、乳癌に侵されるなど人生の絶望的状況から奇跡的に復帰。その過程をエッセイにまとめたり、音楽で表現しようとしている。
続いて03年1月、再び〈オール・ショパン・プログラム〉で「即興曲」や馴染みの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」など“若き日の華麗なるショパン”を彼女特有の演奏法で浮かび上がらせた。

遠藤は1985年、第11回ショパン国際コンクールの招待演奏者として招かれ、2000年の第14回では審査員としてワルシャワに出向いている。世界のショパン弾きとして音楽界から名高いピアニストと評価されている。
阪神大震災被災者や地下鉄サリン事件被害者、さらにハンディキャップを背負った人々への社会貢献活動に長年取り組んでいる。「癒しのピアニスト」と呼ばれる所以がそこにもある。ショパンの音楽を聴く者の心に奥深く届ける姿が感動を呼ぶのだろう。

「私たちは忘れない!」
2015年3月8日(日) 14:46開演  光塩学園koen天秘ホール

出演/ ピアノ:遠藤 郁子

[ プログラム]
 グノー(J.S.バッハ):アヴェ・マリア
 シューベルト:アヴェ・マリア
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 「悲愴」
 作曲者不明:「ドンブロフスキ将軍のマズルカ」
 ショパン:マズルカ Op.50-1、2、3
      :ノクターン遺作 嬰ハ短調
      :練習曲 Op.10-3 ホ長調 「別れの曲」 
      :練習曲 Op.10-12 ハ短調 「革命」
      :ポロネーズ Op.53 変ホ長調 「英雄」
       
14時46分に東日本大震災の発生した時刻に全員起立して1分間の黙祷を捧げた後、「瓦礫を生かす森の長城プロジェクト理事長・細川護煕元首相よりNPOまずるか北海道へ感謝状贈呈」の式。

コンサート前半は聖母マリアを称える歌を2曲。簡単な説明を加えながら曲を弾いたが、ベートーヴェン自身が命名したと言われる「悲愴」では演奏前に小学6年時に日本学生コンクールで弾いた時の母と関わった思い出の曲としてエピソードを紹介した。(2位入賞で危機は脱出!)

後半の最初に弾いた曲はポーランドの国歌“ポーランド未だ滅びず”。ショパンもリサイタルの最後に演奏した曲として伝わっている。この曲を初めて聴いたと思ったが、オリンピックなどでポーランドの選手が優勝した時には耳にしていた筈である。(札幌オリンピックのスキー・ジャンプ競技)。1・2度耳にしたぐらいでは記憶に残らない方が普通なのかもしれない。何度も侵略される憂き目にあったポーランドならではの歌詞とメロディ。

マズルカはポーランドの農民の歌と踊り。ショパンはポーランド土着のマズルカを50曲以上も書き残している。余りにも数が多くて聴いていて直ぐには作品番号が判らない。馴染みの曲も数曲しかなくて区別がつかない。

「ノクターン第20番」は映画『戦場のピアニスト』で強烈な印象を受けて早速CDを手に入れて親しんだ曲。コンサートでもアンコール曲に弾かれることも多く、最近ではテレビからコマーシャルに使われてメロディが流れてくる。

「別れの曲」をショパンが“自分の作品の中で一番美しい”と評したのは知らなかった、私が一番最初に買ったSPレコードで聴いていた懐かしい曲である。「エチュード Op.10」の第3曲と知ったのは数十年経ってからである。

「革命」は作品を知って好んで聴くようになったのはここ20年ぐらい。祖国の革命の失敗を知って、心の内をピアノに綴った激しい曲はショパンの想いが伝わってくる。

ポロネーズもポーランドの土着の踊り。マズルカに次いで有名なポーランドの踊り。第1番~第7番までが一般的に知れ渡ってCD化されているが、初期の時代のポロネーズの3作品を含めて全部で16番までの作品集が出ている。
曲にタイトルが付いた「幻想」「軍隊」もしばしば演奏されるが、「英雄」が何と言っても人気の曲。
他国に侵略され続け地図上から姿を消された時もあった祖国ポーランド。英雄たちが列をなして堂々と進軍する祖国の姿を思い描いて作曲したのかも知れない。

後半も短いトークをはさみながらの演奏はサロン風で肩の凝らない親しみのあるコンサートとなった。YAMAHAのピアノは高音が素晴らしく良く響いた。
彼女は謙虚な人柄で、ポーランド共和国からの勲章を長年に亘って辞退していたが、デビュー50周年と古希を迎え、ボランティア活動の励みになればと決意して勲章を頂くことにしたという。先月、ポーランド大統領から直々にポーランド共和国功労勲章を授与されたそうである。

数年前に新しくできた小さなホールは大入り満員で、2階バルコニーから立ち見で耳だけでなく体を傾けて聴く人も多かった。心温まるコンサートであった。会場は専門学校の付属施設で多目的ホールとして利用しているように思えた。ホールの中央前方に彫刻家安田侃の作品と思われる巨大な大理石の作品が置かれていた。今回はピアニストの友人の好意でコンサート会場として使用したらしい。

アンコールに「花は咲く」。東日本大震災の復興支援に長く関わる想いが伝わる曲を他に1曲演奏して終了。自分自身も改めて「忘れてはいけないもの」を感じた。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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