METライブビューインーグ2014-15 第6作「メリー・ウィドウ」

今シーズンのMET鑑賞は第1作《マクベス》以来となる。前回はアンナ・ネトレプコの究極の悪女に挑む演技と歌唱に圧倒された。第2~第4作までは余りにもポピュラーな作品で劇場には足を運ばなかった。第5作《ニュルンベルクのマイスタージンガ‐》は観たことがないので予定に入れていたが、6時間近くもかかる演目で結果的に断念した。

《メリー・ウイドウ》もポピュラーな作品であり、いろいろな機会に「アリア」も歌われ、親しんでいるメロディも多い。十数年ほど前にオペラに親しもうとオペラ全集を購入していた。その中に《メリー・ウィドウ》が全曲収めれれていて、何度か通して聴いたりしていた。1962年のロヴロ・フォン・マタチッチ指揮フィルハーモニア管による演奏でエリザベート・シュワルツコップがハンナを演じた録音盤である。
演奏会で歌われる「ヴィリアの歌」は耳に馴染んでいる。最近では昨年の〈Kitaraのニューイヤー〉で幸田浩子が歌ったので記憶に新しい。

レハール(1870-1948)は当時オーストリア・ハンガリー帝国の領土であったブタペスト近郊に生まれた。ウィ-ンのテアター・アン・デア・ウィ-ンの楽長に任ぜられ、オペレッタ《メリー・ウィドウ》は1905年に初演されて大ヒットした。
《メリー・ウィドウ》はヨハン・シュトラウスⅡの《こうもり》と並ぶオペレッタの傑作。

オペレッタのタイトルは日本では「メリー・ウィドウ」として親しまれているが、日本語にすると「陽気な未亡人」。ドイツ語では“Die Lustige Witwe”。原語上演が普通だと思うが、今回のメトロポリタン歌劇場ではブロードウェイの演出家による新演出で英語上演となった。 “The Merry Widow” 全3幕。

舞台は20世紀初めのパリ。東欧の小国ポンテヴェドロワの外交官ツェータ男爵は亡夫から莫大な遺産を相続したハンナが他国の男性と再婚すると国が破綻する危機に陥ることを恐れていた。彼は書記官のダニロ伯爵にハンナに求婚するよう命じる。実はダニロはハンナと恋仲の関係にあったが身分違いで結婚できなかった。
ハンナはダニロをまだ愛していた。ダニロは再三の上司の要請を断り続ける。一方ハンナはツェ-タ男爵の妻の浮気が露呈しそうになった時に彼女をかばってダニロの誤解を招く。色々な恋の駆け引きがあって、最後にはハンナとダニロの恋は実を結んでハッピーエンドとなる。

ブロードウェイの女性の演出家の新演出で台詞中心の芝居。しかも主演の男爵夫人がブロードウェイのスター、ケリー・オハラのMETデビューとなって注目されたようだ。ダンスシーンの多い作品で本格的な舞踏場面ではオペラ歌手も大変ではないかと思った。

主演のハンナ役はMETのスターであるソプラノ歌手ルネ・フレミング。昨シーズンの第5作《ルサルカ》で叙情味あふれる歌唱力を発揮して、美しい姿と澄みきった歌声が印象的だった。ルサルカは彼女の当たり役で、昨年は何とも言えない魅力を感じた。今年の演目での若くリッチな未亡人をめぐる恋の騒動では年齢的に少々無理な面を感じた。作品によっては峠を過ぎた感じがしないわけでもない。素晴らしい歌唱力と演技力で存在感を示したのは確かである。

全編を通して美しいワルツが流れる。第1幕でのパーティでの舞踏はプロのダンサーが混じっての本格的なダンス。ウィンナーワルツの心地の良いメロディ。第2幕でハンナが故郷を思い出し民族衣装を着て歌う「ヴィリアの歌」はこのオペレッタで一番の聴きどころ。「若者が故郷の森の妖精ヴィリアに一目ぼれして熱いキスを交わすが、ヴィリアは姿を消してしまう」という内容の歌。アリアに続いての合唱も素晴らしい。「コロ」の踊り。

第2幕と第3幕の間の間奏曲も美しい旋律。第3幕はキャバレーでのフレンチ・カンカンが壮観。プロのダンサーが混じっての大勢のダンスはブロードウェイの雰囲気。最後の場で主役二人が歌う二重唱「くちびるは黙し、ヴァイオリンは囁く」は恋の大団円。

ブロードウェイの女性演出家の演出とあって華やかな歌と踊り。ダンスの多さにブロードウェイの特色が出ていたのかも知れない。台詞が多いのも目立った。ブロードウェイで使っているマイクがMETでは使えないために、字幕を用意していたとのこと。劇場の後方の座席では生の声が聞こえづらいための配慮だと思われる。

ドイツ語より英語の方が解りやすかったが、個人としては原語で上演してもらいたかった。原語の持つ雰囲気は大きな意味を持つと思っている。外国の映画でもDVDでも吹き替えでなくて字幕がある方を好んでいる。今回の英語上演はアメリカ国内で観客を広げる新しい試みだったのかも知れない。

久し振りのMETビューイングを楽しんだが大満足というわけではなかった。第7作から第10作まではタイトルを知っているだけで観たこともない作品なので、全作品を鑑賞する予定にしている。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR