上野 星矢 フルート リサイタル

「第8回ランパル国際フルートコンクール」優勝の逸材が昨年3月札幌でリサイタルを開催することを知って是非聴いてみたかったが、旅行のスケジュールと重なって残念な思いをしていた。今年も再びKitaraに来演することで聴く機会が出来た。
フルート史に残る巨匠ジャン=ピエール・ランパル(1922-2000)の名はかなり以前から知っていて、実際に1987年旭川公演を聴いた。当時のプログラムによると日本ツアーは旭川からスタートして東京公演まで1ヶ月に亘って22公演が行われた。1964年から日本ツアーが始まって、来日度数が15回でコンサート回数が225というから全国くまなく回っている。当然、札幌ではそれまでに3回公演が行われていた。(*記録は1987年現在)

札幌出身の世界的なフルート奏者、工藤重典は第1回ランパル国際の優勝者である。彼はランパルに師事して薫陶を受けていた。彼の演奏は何回も聴いたことがある。Kitaraでは世界的フルーティストであるジェームズ・ゴールウェイやエマニュエル・パユの演奏をそれぞれ数回聴いたこともある。
最近の日本の若いフルーティスト小山裕幾の演奏を7月に聴く予定がある。日本でも世界に通用するフルート奏者が排出する潜在的要素はあると思うがソロ活動を中心として身を立てようとすると難しいのであろう。

上野 星矢(Seiya Ueno)は1989年、東京生まれ。04年全日本学生音楽コンクール全国大会中学生の部第1位、05年高校生の部第1位。07年日本音楽コンクール・フルート部門第3位。08年、東京芸術大学入学。同年「第8回ランパル国際フルートコンクール」に優勝。09年、パリ高等音楽院入学。12年、同音楽院を最優秀賞で卒業。12年、13年と続けてリリースしたアルバムが2作連続で「レコード芸術」特選盤に選ばれる。これまでに東京響、新日本フィル、名古屋フィルなどと共演。ヨーロッパ各地でリサイタルも行い、オーケストラや室内楽にも出演している。現在はパリとミュンヘンを拠点にして活動。

2015年2月10日(火) 19:00開演 札幌コンサートホールKitara小ホール

〈プログラム〉
 プーランク(1899-1963):廃墟を見守る笛吹きの像(1941)
 ジョリヴェ(1905-74):リノスの歌(1944)
 バルトーク(1881-1945):15のハンガリー農民の歌 BB79/Sz.71(1914-18)
 ブーレーズ(1925-  ):ソナチネ(1946)
 プロコフィエフ(1891-1953):フルート・ソナタ 二長調 作品94(1942-43)
 タファネル(1844-1908):「魔弾の射手」による幻想曲(1876) 
                               (ピアノ:内門卓也)

プーランクのこの作品は彼の死後発見されたフルートの無伴奏による短い小品。
ホールの照明を落としてステージの奏者にのみ僅かな光を当てて始まったコンサート。フルートの音だけが暗闇の中に響いた。間もなくピアノ伴奏が入ったが、休みなしに演奏を続けたので2曲目に入ったとは気付かなかった。
通常のコンサートと違う演出のつもりだったのだろうが、素人の客には聞きなれない曲なので、曲の区別が判る演奏形態にしてほしいと思った。

ジョリヴェの“Chant de Linos”は古代ギリシャの挽歌。死の嘆きが叫びと踊りによって表現される哀歌。ジョリヴェの曲はエマニュエル・パユがリサイタルの折に彼の曲を数曲演奏したことがあり、彼のCDにも収録されているので覚えていた。パユは20世紀フランス音楽のほかに、“AROUND THE WORLD”(四大大陸とヘンデルから細川俊夫までの幅広い年代と地方の音楽)世界の音楽をフルートの音に乗せているCDもリリースしている。

バルトークのこの曲は第1~第4曲は昔の悲しい曲、第5曲スケルツォ、第6曲バラード、第7~第15曲は古い舞踊様式の曲。それぞれ短い15曲から成る。彼はコダーイと共にハンガリーの民謡や民族音楽を収集してピアノ曲にしたのが原曲。

ブーレーズは現代を代表する作曲家であり、有名な指揮者。この曲は彼の若き時代の傑作とされる。「ソナチネ」はデュティュー、サンカン、イベール、ミヨーなどのフルート曲に同じタイトルの曲がある。
ブーレーズは1940-50年代は主として作曲家として活動し、60年代から近代の作品を取り上げて指揮活動をするようになった。クリーヴランド管、BBC響を経てニューヨーク・フィルの音楽監督・常任指揮者を務めるまでになった。2002年日本ツアーでKitaraに初登場。ロンドン響を率いてスクリャ―ビン、シマノフスキー、ストラビンスキーを演奏した。演奏曲目も現代作曲家ならではの絶妙なプログラムであったと思う。当時は偉大な指揮者の演奏を聴けた感激を味わったが、現在の方がより良い鑑賞が出来る状況にあると思う。
とにかく来月で90歳を迎えるブーレーズ作曲の音楽を聴く機会があったことで気分もどことなく高揚した。

プロコフィエフのこの作品は第二次世界大戦中に書かれた。4楽章から成る本格的なソナタで聴きごたえのある作品。

タファネルという名は初めて聞く。19世紀の作曲家によるウエーバー原曲の有名な「魔弾の射手」のパラフレーズ。フルートの技巧が多く散りばめられた作品。
この曲はフルーティストもピアニストも楽譜なしで暗譜で演奏した。今回のツアーは仙台、名古屋、東京に続き札幌が最終回。必ずしも短い曲ではなかったが演奏慣れしているのだろうと思った。若さ溢れるエネルギッシュな演奏に拍手!

本日の演奏曲すべてが高度な技巧を必要とされる作品であると思った。モーツァルト時代の文字通りの木管のフルート(フルート・トラヴェルソ)は現代の金管ともいえるモダン楽器と実情を異にしていた。モーツァルトはフルート協奏曲第1番・第2番を残しているが、「第2番」は本来「オーボエ協奏曲」であった。彼は当時のフルートという楽器にそれほど創作意欲が湧かなかったのではという説もある。時代が進んで今やフルートは金色に輝く楽器で、素晴らしい澄んだ音色を響かせる楽器の花形と言えよう。札響でもフルート・ソロの奏でる旋律は実に美しくて心に響く。

弦楽器と違って管楽器を長時間に亘って吹き続けることは大変であると思った。08年共演者のピノック&マンソンの来日不能でパユが無伴奏でリサイタルを行なったことがあった。その時も大変だと思ったが、本日も殆ど休みなしで吹き続けた上野は若さの表れかと感心した。

アンコール曲は日本人歌手の作曲による有名な曲を3曲。
 尾崎豊:I Love You、  松任谷由美:海を見ていた午後、  春よ来い。
    
※現在のフラウト・トラヴェルソの演奏で世界のトップ奏者として名高い演奏家が日本の有田正広。81年、ブリュッヘン率いる18世紀オーケストラのヨーロッパ公演のソリストを務めた。85年のピノック率いるイングリッシュ・コンサートの来日公演でもソリストを務めた。88年、東京バッハ・モーツァルト・オーケストラを設立し音楽監督と指揮者を務め、06年に同オーケストラを再編成して、09年Kitaraに初登場。                           
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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