札響名曲シリーズ2014-2015 vol.5 「響の翼に」~札響台湾公演壮行演奏会~

森の響フレンドコンサート

札幌交響楽団は2015年3月22日~28日、台湾の4都市で5公演を行う。マエストロ尾高にとって札響音楽監督としての最後の公演となる。ソリストは日本の俊英ヴァイオリニスト、成田達輝。
今回の札響名曲シリーズは台湾公演に先立っての壮行演奏会として開催された。

2014年2月7日(土) 14:00開演 札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 尾高 忠明 (Otaka Tadaaki)
ヴァイオリン/ 成田 達輝 (Narita Tatsuki)

[PROGRAM} 
 メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 op.27

今回のプログラムは2曲とも「ホ短調」。協奏曲は最も親しまれているヴァイオリン曲。交響曲はラフマニノフの数少ない管弦楽曲で最も評価が高く、名曲と知られているが必ずしもポピュラーな曲というわけではない。演奏会のプログラムとして魅力的だと思う。

メンデルスゾーン(1809-47)は若くして亡くなったが、裕福な家庭に生まれて音楽家として幸せな生涯を送ったと言えよう。恵まれた生活環境の中で彼の作曲した音楽も明るい作品が多いように思われる。1822年にユダヤ教からプロテスタントに改宗し、彼の姓にバルトルディの名が付いている事からも両親は社会的に差別を危惧していたことがうかがわれる。20世紀前半の反ユダヤ主義で彼の音楽の評価に打撃が加えられた時期もあった。
彼は2曲のヴァイオリン協奏曲を残したがニ短調の曲は13歳の時の作品で20世紀の半ばに発見された。「ホ短調」は35歳の円熟した時の作品で4大ヴァイオリン協奏曲に数えられ、特に人気の高い名作として知られている。(ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーはヴァイオリン協奏曲を1曲しか書いておらず、いずれも二長調である。彼らの曲は調性が示されなくても構わないが、メンデルスゾーンの場合は必ず「ホ短調」と明記される。)

第1楽章ではオーケストラによる提示部がなく、序奏の後、すぐに独奏ヴァイオリンが優雅な第1主題を歌う。抒情的な第2主題が木管で示される。展開部と再現部の間に華やかなカデンツァが置かれる。曲は3楽章から成るが、各楽章は切れ目なく続けて演奏される。これらはメンデルスゾーン独自の新しい試みとされている。 第2楽章のアンダンテは叙情的な主題が印象的。第3楽章ではヴァイオリンが躍動感にあふれた音色を展開。(3つの楽章が続けて演奏されるのは聴衆の集中力を持続させるためのようである。)

成田達輝は1992年札幌生まれ。15歳で東京音楽コンクール優勝。10年ロン=ティボー国際コンクール第2位、12年エリーザべト王妃国際コンクール第2位に入賞して脚光を浴びる。11年よりパリ高等音楽院に学ぶ。これまでに尾高忠明指揮NHK響をはじめ、国内主要オーケストラや著名な指揮者と共演を重ねている。 12年12月、下野竜也指揮読売日響とKitara初登場でメンコンを演奏して故郷に錦を飾る。同年のジルベスタ―コンサートで現田茂夫指揮札響と共演して、「ベートーヴェン:ロマンス第2番」、「サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン」を演奏した記憶も鮮明に残る。(この2曲も台湾公演で披露するらしいから成田の得意曲なのだろう。)

2年ほど前の演奏も若々しくて新鮮味があったが、今回は経験も積んで一層輝きを増して華麗で迫力のある演奏になっていると思った。
ほぼ満席状態で大ホールの客席を埋めた聴衆からの万雷の拍手に応えてアンコール曲を3曲も演奏するサービスぶり。
《パガニーニ:「24のカプリ―ス」より第5番、第24番》、「エルンスト:庭の千草の主題による変奏曲」。
超絶技巧を要する難曲と言われる曲も鮮やかに弾きこなす様子は何とも頼もしい。エルンストの曲も初めて聴くが「庭の千草」のメロディが多様に変化して奏でられるのが心地良かった。

大ピアニストでもあったラフマニノフ(1873-1943)はピアノ曲を多く書いたが、交響曲は3曲しか書かなかった。交響曲第1番の初演の大失敗により重いノイローゼに陥ったことがある。同時代のシェ―ンベルクなどの音楽と比べると保守的とみなされたのだろう。1907年に完成した「交響曲第2番」はラフマニノフ独特の音楽性を貫いて国民に受け入れられた。
この曲の良さを知ったのは10年ほど前のN響アワーでのアンドレ・プレヴィン指揮の曲を聴いた時であった。ラトル指揮ロサンゼルス・フィル、プレヴィン指揮ロイヤル・フィル、アシュケナージ指揮コンセルトへボウ管などで聴いたりしていた。唯すぐにはメロディが馴染むほどには聴く機会は多くなかった。10年3月に尾高指揮札響でこの曲が演奏されたことは強い印象を受けなかったのか、5年前の事はハッキリと記憶に残っていなかった。

第1楽章は陰鬱で長大な序奏。曲全体で重要な3つのモチーフが示される。第2楽章はスケルツォで陽気でエネルギッシュ。4本のホルンで主題を吹き鳴らす。強烈な印象が与えられる楽章。第3楽章はアダージョで情緒に富んだロシアの魅力的なメロディが印象的。弦楽器が歌い上げる旋律とクラリネットの甘美でメランコリックな旋律が絡み合って美しさを増す。
第4楽章はアレグロ・ヴィヴァ―チェ。豪快な第1主題と歌謡的な第2主題。第1楽章から繰り返される「怒りの日」のモチーフ。曲は高らかにフィナーレへ。

マエストロ尾高は指揮棒を持たずに両手の動きが軽やかで、まるで舞っているように見えた。完全に曲の中に身を投じてオーケストラを手のひらに乗せている感じ。こんな印象を受けるのは彼が札響音楽監督として最後を飾ろうとしてしている瞬間が差し迫っている感覚が伝わってくるからなのか。とにかくオーケストラとの一体感が汲み取れる指揮ぶりであった。
約1時間を要する曲も長いとは思わなかった。しかも「第2番」がこんなに充実して身近に感じ取れる曲として聴けたのが良かった。

聴衆の感激も一入だったようで、心のこもった大きな拍手がホールに広がった。マエストロを讃える楽員の拍手も清々しかった。最後に台湾公演を待たずして退団するコンサートマスターの伊藤亮太郎にマエストロ自らが札響と聴衆を代表して花束を渡して感謝の意を表した。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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