札幌交響楽団第576回定期演奏会 (2015年1月)

2014-2015シーズンのプログラム発表時から指揮者ユベール・スダーンの札響登場を心待ちにしていた。東京交響楽団を日本で一流のオーケストラに仕上げた指揮ぶりを観たかったのである。いよいよ、その時が来た。

2015年1月31日(土) 14:00開演 札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ ユベール・スダーン
ピアノ/ バリー・ダグラス

ユベール・スダーン(Hubert Soudant)は1946年、オランダ生まれ。71年ブザンソン国際指揮者コンクール第1位、73年カラヤン国際指揮者コンクール第2位、75年カンテルリ国際指揮者コンクール第1位など多くのコンクールで受賞。フランス国立放送新フィル音楽監督(81-83年)、ウルレヒト響首席指揮者(83-86年)などを経て、94年ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団首席指揮者(04年以降は桂冠首席客演指揮者)及びザルツブルク州立歌劇場総監督として世界的な名声を獲得。コンセルトへボウ管、ベルリン・フィル、ロンドン・フィル、モントリオール響、ニューヨーク・フィルなどメジャー・オーケストラに客演。
初来日は75年。東京響には97年に初登場し、99年から同響首席客演指揮者を経て、04年音楽監督(14年桂冠指揮者に就任)。モーツァルトの交響曲、特にシューベルトは交響曲連続演奏会(08-09)で話題を集めた。オペラでも東京響を指揮して《トゥランドット》を演奏会形式で上演、新国立劇場で二期会公演《皇帝ティートの慈悲》(06年)の上演は絶賛を浴びた。ヨーロッパの歌劇場での客演も多い。
06年5月、ザルツブルク・モーツァルテウムを率いてKitaraに初登場してオール・モーツァルト・プログラムを披露。交響曲第31番「パリ」、第36番「リンツ」、第38番「プラハ」と都市名の付いた3つの交響曲を演奏。(ヴァイオリン協奏曲第5番の独奏は川畠成道。)

バリー・ダグラス(Barry Douglas)は1960年、北アイルランド生まれ。ロンドン王立音楽院に学ぶ。85年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール第3位。86年にはチャイコフスキー国際音楽コンクールに優勝して、58年のクライバーン以来の西側のピアニスト優勝で話題となった。87年、サントリーホールのオープニング・シリーズで日本デビュー。99年、室内合奏団「カメラ―タ・アイルランド」を結成して芸術監督となり、マンチェスターの国際ピアノ・フェスティヴァル芸術監督を務めるなどピアノ界の重鎮として活躍。欧米での活動が目立ち、近年は指揮者として弾き振りでも活躍している。

〈本日のプログラム〉
 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83
 フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」 作品80
 ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲

ブラームス(1833-97)は交響曲第2番と第3番の間に有名なヴァイオリン協奏曲(78年)とピアノ協奏曲第2番(81年)を作曲した。彼は58年に完成したピアノ協奏曲第1番に次いで、新しいピアノ協奏曲に着手した。78年に親友とイタリアを旅した折に刺激を受け、旅行中か直後に、スケッチをしていたらしい。作曲は5年も要したニ短調協奏曲より順調で、作品は伸び伸びと書かれ81年に完成した。ブラームス自身のピアノで初演され、その後も各地で演奏が続き、82年にはブラームスのピアノとハンス・フォン・ビューローの指揮でも演奏されたと言う。

ブラームスのピアノ協奏曲2曲を好んで聴くようになった切っ掛けはN響アワーでゲルバーの演奏であった。早速、アバド指揮ベルリン・フィル&ブレンデル、ベーム指揮ウィーン・フィル&バックハウス、ジュリア―ニ指揮フィルハーモニア管&アラウのCDでこの曲に親しんだ。
この協奏曲は珍しい4楽章構成。第1楽章は伸びやかなホルンによる第1主題の提示。ピアノが主題を引き継ぎオーケストラも加わる。抒情的な第2主題をヴァイオリンが提示して、ピアノが繰り返す。展開部でピアノがクライマックスを盛り上げる。第2楽章はスケルツォ楽章。ピアノ独奏でエネルギッシュな第1主題と弦楽の優美な旋律の第2主題が対照的。第3楽章はアンダンテで緩徐楽章。イタリアの美しい風景に影響された感情がロマンティックに表現されている様子。第4楽章はピアノが軽快な第1主題を導入して始まり、第2主題は幾分メランコリックな調べがオーケストラとピアノで示され、最後は華やかで力強いコーダ。

しばらく聴いていなくて久し振りで耳にした。第1楽章が20分弱で、あとの3楽章はそれぞれ10分、全曲で50分ほどの大曲。楽章の説明がまとまりのないものになった。
ダグラスは重厚なピア二ズムで経験豊富な円熟した演奏を展開した。1時間近くもかかる演奏が短く感じられた。この長大なコンチェルトを弾きこなして聴衆をうならせるピアニストはそんなにいないかも知れない。

ソリストのアンコール曲はIrish Folk Song{アイルランド民謡}から(ダグラス編曲)“My Lagan Love”.

後半はフランス音楽。
フォーレ(1845-1924)はピアノ曲、室内楽曲を多く書いたが、管弦楽曲は余り残していないのか聴いたことが無い。プログラム解説によると7曲しか残っていないとのことである。
「ぺレアスとメリザンド」はドビュッシーもオペラとして同じタイトルの曲を書いている。メーテルリンクの戯曲の付随音楽として1898年に作曲された。組曲はそれを4曲から成る構成にした作品。
主な登場人物はメリザンド、彼女の夫 ゴロー、ゴローの異父兄 ぺレアス。ゴローが妻とペレアスの仲を嫉妬してぺレアスを刺殺してしまう三角関係のストーリー。

第1曲「前奏曲」。第2曲「糸を紡ぐ女」。第3曲「シシリエンヌ」。第4曲「メリザンドの死」。
全体として綺麗な音楽で、旋律が美しい。ホルンの音がゴローを暗示していて物語の展開が読める。フルート、オーボエなど管楽器の活躍の場面が多い。第3曲はシチリア舞曲で広く親しまれているメロデイが流れた。高橋聖純のフルートが殊のほか美しい旋律を奏でて聴き惚れた。

ピアノ協奏曲では既に慣れているのか指揮者はピアニストとのコンタクトは目に見える形ではとっていないように思われた。オーケストラにだけ集中して指揮しているようであった。ピアノに隠れて指揮者の様子が完全には見えなかったが、曲の終りの方で弧を描くような大きな腕の動きが目に入った。
フォーレではストーリーが浮かんでくるような緻密でダイナミックな指揮ぶりでフランス音楽の魅力が直ぐに伝わってきた。オペラを指揮して経験を積んでいることが聴衆にも判る指揮ぶりに凄さを感じた。

ラヴェル(1875-1937)は近代フランス音楽の代表的な作曲家。パリ音楽院に在籍していた当時、ローマ大賞を目指す作品がことごとく落選していて、フォーレの助言も受けた。ラヴェル事件と言われる出来事があって、当時のパリ音楽院の院長や教授陣が辞職してフォーレが後任の院長になったエピソードが残っている。

ラヴェルの「ボレロ」は最も親しまれている作品のひとつだが、ピアノ曲を沢山書いて、管弦楽曲への編曲も得意であった。ムソルギスキーのピアノ曲「展覧会の絵」が有名になったのは、ラヴェルが管弦楽曲に編曲してからと言われている。

「ダフニスとクロエ」はロシア・バレエ団の依頼で書かれた、3部から成るバレエ音楽。ラヴェルはこのバレエ音楽から第1組曲(1911年)と第2組曲(1913年)を作った。第1組曲は第1部の終曲から第2部の前半までの3曲、第2組曲は第3部全体から切り取った3曲から成る。コンサートでは第2組曲が演奏されるのが圧倒的に多い。

ケント・ナガノ指揮ロンドン響&合唱団、 インバル指揮フランス国立管&合唱団のCDで聴いているが、バレエ音楽で合唱を伴う音楽ばかりで、実際のバレエは観たこともないし、管弦楽で偶にコンサートで聴く機会があっても今まで余り印象に残らなかった。正直に言ってストーリーも殆ど解っていなかった。

3世紀ごろにギリシャの詩人ロンゴスが書いた物語を題材にして、バレエ音楽のために脚本化された。物語の大雑把な概略は次の通り。少年ダフニスは森の中で山羊と暮らしていた。少女クロエはニンフの洞窟で羊と暮らしていた。二人はそれぞれ山羊飼いと羊飼いの夫婦に拾われ、成長して恋に目覚めるようになった。エーゲ海の島を舞台に繰り広げられる神話のような牧歌的物語。

第2組曲は次の3曲から成り、続けて演奏された。
①夜明け ②無言劇 ③全員の踊り
●「夜明け」 森のはずれの牧場、パンの神を祀る洞窟の前で日の出を迎える場面。フルートとハープが奏でるせせらぎの音、小鳥のさえずりや羊飼いの笛の音で夜が明ける。
●「無言劇」 ニンフ役のクロエにパンの神を演じるダフニスは彼女に愛を告白。ダフニスは葦笛を吹き鳴らし、クロエは踊り始める。踊りが最高潮になり、クロエはダフニスの腕に倒れ込む。
●「全員の踊り」 ダフニスとクロエの愛を祝福して、若い娘たちがタンブリンを打ち鳴らすと若い男たちも現れ、パンとニンフを讃える歓喜のバッカナールを繰り広げる。

金管楽器が加わっての壮大な管弦楽。最初からラベル独特の管弦楽の面白さが味わえたが、最後の場面でのオーケストラ全体の盛り上がりが凄くて聴きごたえがあった。音楽が熱狂と興奮の最高潮に達する場面の迫力ある演奏は見事であった。スダーンの名声は耳にしていたが、フランス音楽でこのような素晴らしい演奏を札響から聴けるとは予想もしていなかった。さすが大指揮者で東京響の関係が長く続いている理由が実感できた。彼は札響との共演も数度あったと言うが、東京響の音楽監督の忙しい任を離れたので、札響との更なる共演を期待したい。札響もレパートリーが増えていくのが楽しみである。モントリオール響の演奏に負けない出来栄えであった。
演奏終了後の聴衆の“ブラヴォー”、“アンコール”の掛け声が何度もあって、指揮者もステージに何度も足を運んだ。1月のコンサートでは珍しいほどの客の入りがあって会場も凄く盛り上がった。高校生などがP席・RA席を埋めたが、後半の曲で吹奏楽部員などは活動意欲を新たにしたのではないか。最近の札響演奏会で良い演奏が続くのは何よりである。

※前半にフルート首席奏者が出演していなかったので今回は休みかと思った。実際は後半の大役に備えていたようであった。外国のオーケストラでは管楽器は連続で吹き続けるのは難しいので、曲によって役割分担している様子をしばしば目にする。日本でも実情は詳しくは判らないが、自分が気が付かないだけだったのかも知れない。

[追記]ユベール・スダ―ン(Hubert Soudant)は1975年9月(札幌市民会館)と1980年7月(北海道厚生年金会館)の2回、札響と共演した記録があった。指揮者名がフベール・スーダントと札響定期演奏会の記録に載っていたので同一人物とは思えず自分の記憶になかった。当時は札幌在住でなかったが、1961年1月~1989年3月の全演奏記録が手元にあるので参照する機会がある。ラテン系の言語では綴りの最初の“H”や綴りの最後の“t”を発音しないのが普通である。
※フランス人が英語を使わない利用の一つは“he, his, him”が正しく発音できないからでもある。人の名前であるHenry ,Hondaの発音がアンリ、オンダのような発話になる。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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