札幌交響楽団第575回定期演奏会(2014年12月)

2014年12月13日(土) 14:00開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール
 
指揮/ クラウス・ペーター・フロール
ヴァイオリン/ オーガスティン・ハーデリッヒ

クラウス・ペーター・フロール(Claus Peter Flor)は1953年、ライプツィヒの生まれ。シューマン音楽院でヴァイオリンとクラリネットを専攻、リスト音楽院やメンデルスゾーン音楽院でも研鑚を積む。指揮はマズア、ザンデルリンクらに師事。80年、ポーランドのフィテルブルグ国際指揮者コンクールに優勝。ベルリン響の首席指揮者に就任(82-91年)。88年にはベルリン・フィルを指揮。フィルハーモニア管首席客演指揮者(91-94)、チューリッヒ・トーンハレ管首席客演指揮者(91-95)、ジュゼッペ・ヴェルディ響首席客演指揮者(03- )などを歴任。08年からはマレーシア・フィルの音楽監督を務め、09年の日本ツアーではKitaraに初登場。(その時のソリストはレーピン。マレーシア・フィルは1998年創立のインターナショナルなオーケストラで昨年11月の札響定期に登場し、16年1月に再登場するパーメルトが03-08年まで同フィルの音楽監督を務めた。)
フロールはベルリン・フィルに数度の客演を行うなど世界のメジャー・オーケストラに客演している名匠。

オーガスティン・ハーデリッヒ(Augustin Hadelich)は1984年、ドイツ人の両親の下でイタリア生まれ。10代で大やけど負いながらも克服し、イタリア・マスカーニ音楽院を最優等で卒業。ジュリアード音楽院でディプロマを取得。06年、インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで優勝。クリーヴランド管、ロサンゼルス・フィル、ヒューストン響、ヘルシンキ・フィル、シュトゥットガルト室内管、ドレスデン・フィルやブタペスト室内管などのオーケストラと共演。パリ、東京、ニューヨーク、バンクーバー等でリサイタル。室内楽ではマルボロ、ラヴィニアなどの音楽祭に参加。

〈プログラム〉
 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 二長調 op.35
 ショスタコーヴィチ:交響曲第15番 イ長調 op.141

ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスのヴァイオリン協奏曲が通常、三大ヴァイオリン協奏曲と言われているが、チャイコフスキーの曲は人気曲として上記の三大曲に勝るとも劣らない曲である。一応、四大ヴァイオリン協奏曲には異論のない曲として入る。私自身、若い時には4曲ともLPレコードが擦り切れる程に聴いて親しんできたが、「三大ヴァイオリン協奏曲」はベートーヴェン、メンデルスゾーン、チャイコフスキーの曲だと思っていた時があった。(*「三大曲」は西欧の作曲家の曲を中心に考えたことに由来するのではないかと勝手に類推している。)
この4曲のCDはそれぞれ違うソリストのものを各10枚は持っているほど気に入りの曲である。
SP, EP, LPで聴き続け、カー・ステレオでカセットを使い始め、ようやくCDを手にするようになったのは流行り出してから十数年後の1998年。一番最初に買ったのが「五嶋みどり&アバド指揮ベルリン・フィルのチャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲」のカップリングのCD。2000年に入ってから、急増して現在は1000枚ほど。とにかく、チャイコフスキーは気に入りの作曲家の一人である。

チャイコフスキーの有名なピアノ協奏曲第1番と同様に発表当時はこのヴァイオリン協奏曲も演奏不能と言われて評判にならなかったエピソードは良く知られている。
独奏ヴァイオリンが輝かしいメロディを奏で、民族的な情感のなかにチャイコフスキー特有の哀愁に満ちた甘美な旋律がふんだんに盛り込まれた名曲として親しまれている。
第1楽章では愛らしい主題と抒情的な主題が歌われ、カデンツァをハーデリッヒは技巧をこらして華麗に演奏した。第2楽章は独奏を主役にカンツォネッタ(小さい歌)で哀愁漂う雰囲気の楽章。第3楽章はロシアの民族舞曲風の主題が華やかに奏でられて活力あるフィナーレ。

ハーデリッヒの力強い演奏は客席を埋めた聴衆から大きな拍手と歓声を受けた。客席の反応に満足した様子で、鳴り止まぬ拍手に応えて、“パガニーニ:カプリッチョ No.24”と言って、アンコール曲を演奏。最後は楽器を持たずにステ―ジに登場して挨拶しなければならないほど聴衆の温かい反応があったのが印象的であった。

ショスタコーヴィチはどちらかと言えば鑑賞が難しい苦手な作曲家。2006年はモーツァルトの生誕250年に当たる年で、毎日欠かさず彼の曲を聴いていた。この年はショスタコーヴィチの生誕100年にも当っていたので、2006年の後半から彼の曲にも親しむ機会を持った。94年からのPMF演奏会でショスタコーヴィチの交響曲第5番や第11番を聴く機会が増えて、CDを購入する気分も盛り上がっていた。07年には8番、11番、13番、15番を手に入れた。(結果的に奇数番号の曲が多くて、他はレコード店に在庫がなかった。)
第15番は聴いて直ぐ面白いと思った。ロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲の引用が繰り返しあって曲に親しみを覚えた。
その後、めったに聴く機会は無かったが今回の演奏会に備えて、数回聴いてみた。
コンサートでの生演奏は初めてかと思っていたら、プログラムに札響初演の日付が「1993年4月19日(札幌市民会館) 指揮:外山雄三」と書かれていた。その当時は札響会員だったので、聴いていたことになる。(07年に復帰するまで数年間は会員でなかった。)早速帰宅してプログラムを見てみたら、「オール・ショスタコーヴィチ・プログラム」で記録があった。ただ、会場は「北海道厚生年金会館」だったので、今回のプログラムでは記録を間違ったように思う。
当時は在職中でいくら音楽が好きと言っても、今とは集中度が違っていたようである。全然、記憶にない。ただ、チェロ独奏が堤剛、客演コンマスがニキチンは何となく覚えている。第15番は全く覚えていない。

今回の演奏会は外国人の指揮者と演奏家の出演で知名度が高くなかったせいか、演奏会開催の新聞広告回数が普段よりかなり多かった。広報活動の成果もあって名曲のヴァイオリン曲演奏に誘われてだろうが結構な客入りであった。ショスタコーヴィチで客集めは難しいと思われた。定期演奏会ではこのような演目は望まれるところで結果的に良かった。

ショスタコーヴィチ(1906-75)はピアニストか作曲家のどちらを目指すかに迷っていた。1927年に行われた第1回ショパン国際コンクールに出場して予選は通過したが、彼は作曲家への道を決意して本選を棄権したエピソードが残っている。
その後、レニングラード音楽院の教授となり作曲活動に専念して、それまでの作曲家たちの壁であった9曲の壁をあっさり乗り切り全15曲の交響曲を作りあげた。
彼はロシア革命、2つの世界大戦と苦難の時代を国内で生き抜いてきた。革命後に作品が新聞批判にさらされた結果、作曲の意図を曖昧にした作品を書いたとも言われる。政府を明らかに皮肉った作品も多く、作品鑑賞が単純ではない面も多々あるようだが、それだけに逆に面白いと評価されている。弦楽四重奏曲、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲など優れた作品が多く20世紀の大作曲家として広く親しまれている。

「交響曲第15番」はタイトルは付いていないが、4楽章構成の大作。1971年に彼は“happy symphony”を書きたいと言ったそうである。作曲当時は彼は重病で入院生活を送っていた。この最後の交響曲は自伝的要素の強い作品。ティンパニ、シンバル、大太鼓、チェレスタ、トライアングル、カスタネットなど、名称も判らない打楽器が多用されていて興味深かった。
第1楽章は軽妙で生気にみちた楽章。ロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲の引用が5回も繰り返されて親しみが持てた。ショスタコーヴィチの息子によると、作曲家自身が子供の頃に大好きだった「ウィリアム・テル」のマーチのメロディを多用して描いたらしい。

第2楽章は沈痛なアダージョ。第1楽章とは対照的な悲劇的雰囲気を持った楽章。第3楽章は軽妙洒脱なスケルツォ。第4楽章は荘重な序奏。ワグナーの「ワルキューレ」の運命のモチーフの引用があり、過去の遺産を振り返りながら、自分自身の最後の交響曲に万感の思いを込めているようなフィナーレ。

打楽器の音色のほか、フルート、ヴァイオリン、チェロ、コントラバスなどのメロディが効果的に使われていて印象的であった。オーケストラ総奏以外で上記の楽器の他にトロンボーン、ホルン、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ピッコロ各々の楽器の響きが楽しめた。(勿論、ヴィオラ、トランペット、チューバの音も)
フロールは小柄な体から的確なコントロールで各楽器の音色を鮮やかに引き出す巧みな指揮ぶりは流石であった。ともすれば各奏者の呼吸が合わないとずれが出てしまいそうな曲をまとめ上げるのは難しいのではと思った。素人で専門的な技法までは判らないが独特な曲でとにかく面白かった。

札響初演の際のメンバーが20人ほど本日の演奏にに加わっていたと思う。2001年の札響2回目の演奏経験がある人にとっても感慨深い演奏になったと思う。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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