ワディム・レーピン ヴァイオリン・コンサートwithクニャーゼフ&コロべイニコフ

ワディム・レーピン with アレクサンドル・クニャーゼフ(チェロ)&アンドレイ・コロべイニコフ(ピアノ)
  ~偉大な芸術家の思い出に~

Vadim Repinを初めて聴いたのが99年の6月、その後、04、06、09に続いて昨年7月のPMF。1971年生まれのレ―ピンは年齢を重ねて風格が滲み出ていた。昨年末には初来日の折のキーシンとレーピンのコンサートの模様をそれぞれYouTubeで観て15歳当時の演奏を堪能したものだ。
昨年PMF-GALAコンサートのブログでKitaraにこれまで3回登場と書いていたが、04年の記録が抜けていた。(04年9月、アラン・ギルバート指揮ロイヤル・ストックホルム・フィルと共演して「シべリウスの協奏曲」を演奏。ギルバートは09年よりニューヨーク・フィル音楽監督に就任している。)
従って今回のKitara出演は6回目になる。同じロシアのピアニストとチェリストとの共演でピアノ三重奏が楽しめるのは何よりである。昨日のザ・シンフォニーホールでの大阪公演に続いて日本公演は2公演のみのようである。悪天候で来札を心配したが無事に札幌公演が行われた。珍しいピアノ三重奏のコンサートはブラボーが飛び交う素晴らしい公演となった。

アレクサンドル・クニャーゼフ(Alexander Kniazev)は1961年、モスクワ生まれ。モスクワ音楽院でチェロとオルガンを学ぶ。79年、カサド国際チェロ・コンクールで第3位、87年トラバーニ国際室内コンクールで優勝、90年チャイコフスキー国際コンクールで第2位に入賞して国際的活動を始めた。世界的な指揮者やオーケストラと共演。室内楽でもキーシン、レーピン、ルガンスキー、ベレゾフスキーらと共演。11年サントリーホールでキーシンと共演。日本では各地で開かれるラ・フォル・ジュルネ音楽祭の常連。

アンドレイ・コロべイニコフ(Andrei Korobeinikov)は1986年、モスクワ生まれ。7歳でチャイコフスキー記念青少年音楽コンクールに優勝。モスクワ音楽院で学び、04年スクリャービン国際コンクール優勝、05年ラフマニノフ国際コンクール第2位入賞。06年、ラ・ロック・ダンテロン音楽祭でデビュー。07年アシュケナージ指揮フィルハーモニア管との共演でロンドン・デビュー。日本でもラ・フォル・ジュルネに出演。N響とも共演。17歳で法科大学を卒業。エスペラント語も話す偉才。

〈PROGRAM〉
 ラフマニノフ:悲しみの三重奏曲 第1番
 チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ (チェロ&ピアノ)
 ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
 ラヴェル:ツィガーヌ
 チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 「偉大な芸術家の思い出に」

最初のプログラムの曲だけCDを所有していなくて知識がなかったが、プログラムの解説を読んでチャイコフスキーのピアノ三重奏曲 を手本にしたらしいことが解った。曲のタイトルでイメージが浮かんで鑑賞が容易になった。
ラフマニノフ特有のロシア情緒、ロマンティシズムに溢れ、哀感が漂う長大な曲構成で単一楽章から成る曲。

チャイコフスキーの「弦楽四重奏曲第1番」の第2楽章が《アンダンテ・カンタービレ》として知られる名高い曲。冒頭の主題が広く親しまれている有名なメロディでウクライナ民謡からインスピレーションを得たと言われる。この楽章が単独で演奏されることが多い。半年前のプラジャーク弦楽四重奏団演奏会でもこの弦楽四重奏が演目にあったが、カニュカのチェロが主旋律を弾いていたのを思い出す。
クニャーゼフの独奏のような曲でピアノが控えめに伴奏の役を担っていた。チェロの美しい響きが際立っていて、旋律の素晴らしさを引きたさせていた。聴衆の心を揺さぶる演奏にブラボーの声があちこちから上がった。

ドビュッシーの最後の作品。3楽章から成るが、各楽章4分程度の曲。ドビュッシーらしい旋律を持つ色彩感豊かな曲。

ツィガーヌ(Tzigane)とはフランス語でジプシーを意味するタイトル。ハンガリーのロマ(=ジプシー)の伝統文化を讃える音楽作品。ハンガリーの舞曲“チャ-ルダッシュ”の形式で書かれている。超絶技巧を要するためもあってか、この曲の演奏を聴く機会はそれほど多くない。(*五嶋龍の演奏が印象に残っている。)
レーピンは高度な技巧を余り感じさせない様子で淡々とこの難曲を弾きこなし最後の弓捌きで聴衆の溜息をさそって拍手大喝采を浴びた。

前半のプログラムが終ったところで、ヴァイオリンとピアノによるアンコール曲が披露された。
 ポンセ: エストレリータ、 クライスラー: 中国の太鼓

本日の演奏会が始まる前から終了時間が9時20分頃とアナウンスされ、前半が終了した時刻が8時5分、15分の休憩後にも、終了時間のアナウンスがあった。聴衆の帰宅時間がいつもより遅くなることに対する配慮である。

いよいよ期待のチャイコフスキーのピアノ三重奏曲。
1989年7月、ダン・タイ・ソン、ヨゼフ・スーク、堤剛のトリオによる日本ツアーがあった。当時の札幌市民会館でドヴォルジャーク、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲は聴けたが、チャイコフスキーの曲は他の会場の演目になっていた。演奏会で今まで「偉大な芸術家の思い出に」は聴いた記憶がない。スーク・トリオとチョン・トリオのCDで聴いてはいるが、生演奏を何時か聴きたいと思っていた。
今日のコンサートに備えて2枚のCDを聴いて曲への親しみを深めて今晩の演奏会に臨んだ。

室内楽作品の少ないチャイコフスキーの唯一のピアノ三重奏曲はドヴォルジャークの「ドゥムキ」と並んで19世紀国民楽派のピアノ三重奏曲の最高傑作とされている。この作品は作曲家・ピアニストとして活躍したニコライ・ルビンシュタインの死を悼んで作曲された。“偉大な芸術家”とはルビンシュタインのことである。
憂愁をたたえながらも、堂々としたスケールの大きい作品。2楽章制。第1楽章が〈悲劇的楽章〉。ピアノの流れるような音に乗りチェロが哀惜の情をたたえた美しい旋律を奏でる。これがヴァイオリン、ピアノに受け継がれて親しみのあるメロデイとなって聴く者の心に深く染み込むように響く。ピアノに力強い第2主題が現れ、曲全体でピアノの活躍が見られるがルビンシュタインの面影かも知れないと思った。
第2楽章は第1部が親しみ深い主題と11の変奏から成る変奏曲、第2部が最終変奏とコーダ。終了近くで第1楽章第1主題を用いたクライマックス。深い悲しみに沈みながら、葬送行進曲のリズムで静かに曲が閉じられる。
 
約50分もかかる大曲だが、彼らの演奏に身をゆだねているうちにアッという間に曲が終った。暗く悲劇的な色彩のある曲とはいえ、チャイコフスキー特有の親しみ易いメロディなので聴いていて心地よい気分のまま全曲が聴けた。正直に言って、1時間前後の曲を集中力を切らさずに耳を傾け続けることは難しい。今夜のようなことはそういう意味で度々あることではない。
1回7列正面の席から曲を堪能できた。演奏会での聴衆の反応も素晴らしかった。多分1000名くらいの客は入っていたと思う。25年前のトリオのコンサートの料金が5000円であった。今回はS席7000円、A席5000円、B席3500円。個人的には決して高くない、むしろ安かったと思う。

演奏が終了したのが9時15分。疲労感もあって最後のアンコールは無しかと思った。止むことのない拍手喝采とブラボーの掛け声に応えて、若手のピアニストがステ―ジに姿を現してアンコールに応えた。コロべイニコフは東京では知られたピアニスト。アンコール曲は「チャイコフスキー:ドゥムカ Op.59」。
続いてクニャーゼフが登場。「J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調より 第4曲サラバンド」。
最後にレーピンも含めて3人全員が登場。チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 「偉大な作曲家の思い出に」より第2楽章「主題と変奏」の第2変奏、第3変奏を演奏して終わりを告げた。

演奏終了時間が9時35分。聴衆の反応が良くて、予定時間を越えて期待に応えてくれたものと思われる。Kitaraのコンサート終了時間が9時半を過ぎることは普通ないことである。心地よい気分で家路に着く人々の足取りも軽やかであった。

*外国の演奏家で1・2回はともかく6回も訪れてくれるアーテイストは少ない。レーピンはゲルギエフと共にKitaraフアンなのかもしれない。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR