台北市立交響楽団 札幌公演

台湾のオーケストラの札幌公演の情報を得た時には私の11月のスケジュールはかなりタイトになっていた。7年前のPMFで「フィルハーモニア台湾」の公演を聴いて以来のことで久しぶりである。来年3月に札響が台湾公演を行うこともあり、相互交流の一環になるのかなとも思った。いろいろ考えてチケットの購入は迷っていた。今月の初めにチラシを確認した時に、シニアで低料金のチケットが手に入ることが判り、出演者にも興味を抱いて聴いてみることに決めた。

Taipei Symphony Orchestra in Sapporo

2014年11月18日(火) 19:00開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール

チャイコフスキーの夕べ All TCHAIKOVSKY PROGRAM

 歌劇「エフゲニー・オネーギン」より ポロネーズ
 ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23 (ピアノ:アンナ・ヴィ二ツカヤ)
 交響曲 第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」

台北市立交響楽団(Taipei Symphony Orchestra)は1969年、創立。ヨーヨー・マ、ロストロポーヴィチ、テミルカーノフなどが共演。05年~07年アンドラ―シュ・リゲティが音楽監督を務めた。13年、ギルバート・ヴァルガが音楽監督に就任。

Principal Conductor, Gilbert Varga
ギルバート・ヴァルガは1954年、ロンドン生まれ。ヴァイオリン奏者としてスタートしたが、73年に指揮者としてデビュー。アバド、バレンボイム、シャイ-、ムーティなどを育てたフランコ・フェラーリやセルジウ・チェリビダッケに師事。シュトゥットガルト室内管(91-95年)、スウェーデン・マルメ響(97-2000年)の首席客演指揮者。バスク国立響の音楽監督を10シーズン務め、フィラデルフィア管、アトランタ響、ボルティモア響など北米のほか、世界各地のオーケストラに客演。

アンナ・ヴィニツカヤ(Anna Vinnitskaya)は1983年、ロシア生まれ。07年エリーザベト王妃国際コンクール優勝。11年ルツェルン音楽祭にデビュー。ドイツを拠点にヨーロッパ全土でリサイタルを行う他、世界各地で公演活動。世界の主要なオーケストラとも共演。08年バーンスタイン賞受賞。同年東京公演がNHKで放送されて注目を集めた。09年、ハンブルク音楽大学教授に就任。

シニア券は当日座席指定券引き換えとなっていて、結果的に1階のS席10列の良い席が手に入った。何か凄く得をした気分であった。

最初の演奏曲は昨年のMETライブビューイングで観たネトレプコ主演の《エフゲニー・オネーギン》より「ポロネーズ」。「序曲」の予定が「ポロネーズ」に変更になっていた。1年前に耳にした舞踏会の場面での壮麗な音楽が展開され、オペラの場面を思い浮かべて聴けて気持ちも浮き立った。

オーケストラの構成メンバーの大部分が若い女性、コントラバス奏者8人や木管奏者は全員女性。オーケストラ楽員の8割は女性のようで、世界でも珍しいのではと思った。

ヴィニツカヤは最初から力強い演奏で一気に聴衆を彼女の世界に引き込んだ。ピアノ独奏の迫力がホールに広がった。全曲の半分以上を占める壮大な第1楽章。(この後、拍手が起こることが偶にあるが幸い今日は無かった。)フルートの歌う旋律が抒情的で美しい第2楽章。第3楽章は舞曲風のメロディを奏でて絢爛豪華なフィナーレで終結。
オーケストラの演奏に支えられ力感あふれる豪快なピアノ演奏は極めて印象的であった。

彼女の演奏に感動した聴衆の拍手は聴衆の少なさを補うほどの大きなもの。アンコールの1曲目「プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番より第3楽章」は今まで聴いたことも無いような激しい打鍵の曲。彼女はこのような曲が得意なのかもしれない。鳴り止まぬ拍手に応えて、アンコール2曲目は「ジロッテイ:バッハのプレリュードのテーマによるトランスクリプション」という魅力的な小品。今日の演奏から判断するとかなりの実力の持ち主。日本での知名度がもっとあってしかるべきと思った。

プログラム後半の「悲愴」は女性中心のオーケストラがどんな完成度を示すのかに関心があった。
ファゴットの暗鬱なメロディで始まり、苦悩や不安が重く歌い上げられ、ヴァイオリンが奏でる慰めの旋律。第2楽章はワルツの雰囲気。第3楽章はスケルツォと行進曲が合体して激しく感情が動く。(この楽章の終わり方で、曲が終ったと勘違いして、満席状態の時に拍手が起こる場合もあるが今日はそれが無くて良かった。)
アレグロが終って、第4楽章のアダージョ。「悲愴」という題名に相応しい、暗い絶望感にさいなまれる悲痛な調べ。各楽章に特徴があって名曲と親しまれているのが解る。

金管楽器に少し難があるように思ったが、若さで生き生きとした演奏。独奏ファゴット、独奏クラリネットなどの見事な演奏も目に付いた。優雅なバトンさばきでオーケストラをまとめあげる指揮者の技量も確かなもので、指揮台での姿が何となくアシュケナージに似た雰囲気がした。

アンコール曲は「赤とんぼ」、「台湾民謡:高山青」、「チャイコフスキー:くるみ割り人形より《トレパーク》」。

このオーケストラは海外公演を度々行っているが、今回の日本公演は札幌と横浜(20日)の2公演だけのようである。ヴァルガがこのオーケストラの実力を更に引き上げることが期待される。
慌ただしくスケジュールに入れたコンサート鑑賞であったが、思った以上に楽しめた。

***台湾のオーケストラは他に1986年に創立された「台湾国家交響楽団」(海外公演の際は“Philharmonia Taiwan”の呼称)と2001年に創立された「長栄交響楽団」(Evergreen Symphony Orchestra)が知られている。PMFの指揮者(1998-2004)として活躍し、07年のPMFに「フィルハーモニア台湾」を率いて指揮したチェン・ウエンピンは1999-2007年、台湾国家響の音楽監督を務めた。


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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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