ティル・フェルナー ピアノ・リサイタル

〈Kitaraワールドソリストシリーズ〉

世界で注目されるピアニストとして「ティル・フェルナー」がいつかKitaraのステージに登場してほしいと願っていた。やっとその時が来て嬉しい限りである。ウィ―ンで音楽を志す者はオーケストラや室内楽での音楽活動が最優先でソリストを目指す人は極めて少ないと言われる。他国と比べて国際コンクール出場者が少ない中でのフェルナーの経歴が目に留まって6・7年前から期待が高まっていた。

ティル・フェルナーは1972年、ウィ―ン生まれ。ウィ―ン音楽院に学び、その後アルフレッド・ブレンデルらに師事。93年、クララ・ハスキル国際コンクールにオーストリア人として初優勝。98年、アルバン・ベルク四重奏団のソリストとして初来日。翌年にも再来日してリサイタル。08年からはケント・ナガノ指揮モントリオール響とのベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏と録音、秋からはウィ―ン、ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京など各地でベートーヴェンのソナタ全曲演奏会を行い、世界のピアニストとしての地位を確立した。現在、モントリオール響のレジデント・ピアニスト。13年よりチューリヒ芸術大学で後進の指導にも当っている。

TILL FELLNER Piano Recital

2014年11月3日(月・祝) 14:00開演 札幌コンサートホール Kitara小ホール

〈PROGRAM〉
 モーツァルト:ロンド イ短調 K.511
 J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻より
          第5番 二長調 BWV874,     第6番 ニ短調 BWV875
          第7番 変ホ長調 BWV876    第8番 変ホ短調 BWV877
 ハイドン:ピアノ・ソナタ 第50番 二長調 Hob.XVI:37
  シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集 作品6

「ロンド K.511」は2ヶ月前の外山啓介のコンサートで聴いた時は、きちんと鑑賞できなくて単調な感じさえした。2度目の鑑賞で曲の良さが解った。聴き慣れるかどうかにもよるが、鑑賞の仕方によって曲の印象がこうも違うものかとじくじたる思いがした。
モーツァルトの明るくて軽やかな作品と違って、親友の死を悼みつつ偲んでいるような曲。この曲を書いた年に彼は父も亡くしている。悲しみの旋律が何回か繰り返されるが、その静かな哀愁漂う音色が心に響いた。

バッハの平均律クラヴィーア曲集の第1巻と第2巻は各々すべての長調・短調を網羅した24曲の「前奏曲とフーガ」でワンセットになっていることを再確認した。バッハの作曲家としての素晴らしさとバッハ以後の12、24等ひとまとめの曲作りの先駆者として敬意を払わずにはいられない。彼の作曲の奥の深さは素人の自分には推し量れないものがある。
CDで何となく耳にしているだけでは曲の良さがよく解らない。生演奏で8曲を聴いてみて身近に感じれた気がする。特に「第5番ニ長調」の7分余りの躍動感あふれる華麗な前奏曲が印象に残った。

ハイドンのピアノ・ソナタは60曲以上ある。デジュ・ラーンキのリサイタルの折に後半の10曲ほど入った彼のCDを買った。
「第50番」は初めて聴くと思ったが、最も有名な作品ということなので、今まで耳にしたことがあるのだろう。第1楽章は明るい快活な調べ。この第1楽章は「バッハの平均律第2巻、二長調の前奏曲」で聴いたばかりと思える華麗な楽章。短い荘厳な感じの第2楽章に続いて、素朴で軽快な第3楽章。
ハイドンとバッハの組み合わせという絶妙なプログラミング。

フェルナーは年齢より若々しくて、ピアノを弾く姿勢が良くて、その演奏は繊細で緻密。知性と感性を併せ持つ雰囲気。ウィ-ンの香りが伝わってくるような感じがした。

後半のプログラム「ダヴィッド同盟舞曲集」は半年前の小山実稚恵のリサイタルで初めてライブで聴いた曲。この曲はピアニストでもかなりの経験を積まないと演奏困難ではないかと思える曲。
シューマン自身の2面性を表す「動と静」を全18曲の小品で構成。第1集が第1~第9曲、第2集が第10~第18曲。文学面でも才能を持つシューマンが音楽評論として斬新な構想のもとに作リ上げた。簡単には鑑賞できないが、とにかく今回は2度目ということもあってシューマンの世界が拡がって迫ってきた。フェルナーは淡々と弾いているように見えるが、様々な感情が音となって伝わってきた。曲が終ると、聴く者の心に届いた感動の輪がホール全体に広がった。ブラボーと声に出して叫ぶ人はいなかったが拍手の大きさと会場の雰囲気によって、演奏者が聴衆に届けた音は間違くなく演奏者自身にも伝わったと思える瞬間。感動の有様もいろいろあるが、何かいつもと違うものを感じたのである。
記憶に残る演奏会になった。

アンコール曲は《リスト:巡礼の年 第1年 スイス 第2曲「ワレンシュタットの湖畔」》。聴き慣れない曲であったが、帰宅してチッコリーニの弾くCDを聴いてみた。

*フェルナーの使用楽器はスタインウェイであった。アンドラーシュ・シフ、パウル・バドゥラ=スコダ、イェルク・デムスなどウィ-ンの奏者はベーゼンドルファーを大ホールで使っていた。Kitara所有の楽器は古くなった為か、小ホールだったためかは判らない。昨年10月、佐藤卓史が小ホールでベーゼンドルファーを使用したが思うような音が出せなかったのを耳にした。(多分1曲だけ)

*今回の来日公演は11月1日、桐朋学園大学 調布キャンパス1号館ベーゼンドルファーお披露目コンサート&マスタークラス。5日、トッパンホールでは札幌と同じプログラム。(ここではスタインウェイの可能性大か?)
折角の来日の機会に3公演だけとは勿体ないというのが率直な印象。今回の札幌公演はKitaraの自主性が発揮されたと言う意味で有り難かった。





,

  
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
最新コメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR