小山実稚恵 「音の旅」 第18回 2014年 秋 

1989年から聴き始め、2005年からは毎年欠かさず聴いている小山実稚恵のコンサートも今回で26回目となる。1985年のショパン国際コンクールで話題になってから聴く機会が断然多いピアニストである。

12年間・24回リサイタルシリーズ2006~2017
第18回 2014年 秋
 ~粋な短編小説のように~  イメージ〈オレンジ〉:香る郷愁・切ないまっすぐな想い出

2014年10月31日(金) 19:00開演 札幌コンサートホール Kitara小ホール

〈プログラム〉
 スカルラッティ:ソナタ 嬰ハ短調 L.256/K.247、  ソナタ ホ長調 L.257/K.206
 シューマン:8つのノヴェレッテン 作品21より 第1番、第2番、第4番、第8番
 ショパン:スケルツオ 第2番、  バラード 第1番
 アルベニス:組曲「イベリア」第1集より 第1曲「エボカシオン」、第2曲「エル・プエルト」
 リスト:巡礼の年 第3年より 第4曲「エステ荘の噴水」
 ドビュッシー:版画より 第2曲「グラナダの夕暮れ」、 「喜びの島」

2014年 秋 第18回の全国公演は札幌からスタートしたようである。彼女のツィッターから判断すると、かなり頻繁にコンサートに出演している様子で忙しいスケジュールをこなして少し疲れ気味の感じがしないわけでもなかった。いつものように演奏の前にプログラムの簡単な説明があったが、マイクの音量が良くなかったのか残念ながら明瞭に言葉を聞き取れない箇所が目立った。

スカルラッティ(1685-1757)の曲は馴染んでいない。生まれた年がバッハ、ヘンデルと全く同じことを知ったのはスカルラッティの名を知った25年ほど前のことである。バッハ、ヘンデルは音楽の教科書で60年前から知っていた。ヘンデルとスカルラッティのピアノ曲は偶々マレイ・ペライアのCDを持っていて偶に聴く。バロック時代の3人の作曲家が同じ1685年生まれというのは偶然とは言え驚きを禁じ得ない。
スカルラッティは555曲ものソナタを書いたようだが、ペラィアの弾いた7曲にK.206が入っている。ソナタのなかでも最も有名で美しい作品なのだろう。ピアノが発明されたのが1709年と言われているから、チェンバロで書かれた作品が多かったと思うが、ピアノで聴いても違和感はない。

シューマン(1810-56)の曲を多く聴くようになったのは5年ほど前からである。さほど好みの作曲家というわけではないが、集中的に特売のCDを買ってピアノ曲や室内楽曲を聴いている。「8つのノヴェレッテン」は福間洸太朗のNAXOSのCDが手元にあった。8曲中どの曲が演奏されるのか分からなかったが、一応全曲聴いておいた。
ドイツ語でノヴェレッテ(Novellette)は短編小説、ノヴェレッテン(Novelletten)は複数形で短編小説集の意味。小山が今回のコンサートのテーマを「粋な短編小説のように」としたのはこの曲を念頭にしてプログラミングしたことがうかがえる。
ピアニスト本人の解説によると、シューマンが幼いころから親しんでいた小説に登場する人物が 音楽の中で描かれ、彼の思いが音に投影されていると言う。各曲4・5分だが第8番だけ12分の演奏時間。詩情豊かで魅力的なピア二ズムあふれるシューマンの世界。

前半は聴き慣れない曲の構成だったが、後半はショパン(1810-49)の名曲スケルツォとバラード。各4曲の中で最も親しまれている曲をそれぞれ1曲。
ステージを下がらずに同じ作曲家の作品を連続して弾く場合は演奏家の集中力をそがないようにする配慮が聴衆に求められる。演奏家の動きと会場の雰囲気で「場を読む」必要性を感じてほしい。
「スケルツォ第2番」が終るや否や、後方の男性の「ブラボー」の掛け声と拍手。つられて拍手が広がった。「バラード第1番」は最後の音が消えないうちに掛け声と拍手。今度の拍手はパラパラ。 折角の名曲の演奏だったが、何となく後味が良くなかった。

続いてリサイタルシリーズ初登場のスペインもの。 アルベニス(1860-1909)の組曲「イベリア」で小山実稚恵のCDの名曲集に収録されている「エル・プエルト」だけは聴いたことがある。スペイン南部のアンダルシア地方の民俗音楽は人々の魂を揺り動かすものがある。

リスト(1811-86)の「エステ荘の噴水」は最近耳にする曲で特に気に入っている。水の動きが美しい調べとなって表現されている見事な作品。陽の光を浴びながら万華鏡のように輝く噴水の様子が絵画的で、一つ一つの音が心に沁みわたるようで得も言われぬ美しさ。今日一番心に響いた曲であった。

ドビュッシー(1862-1918)はスペインには数時間滞在しただけで、もちろんグラナダにも行ったことはないそうだが、「グラナダの夕暮れ」はスペインの舞曲ハバネラのリズムによる作品。 
「喜びの島」は最近の演奏会で聴く機会が増えている。高度な技巧が必要とされ、華やかで色彩感豊かな曲であるのがコンサートの演奏曲目に繋がっているのかも知れない。

今回のプログラムは小品が多くて、結果的にシューマンを中心に据えてテーマを考えてプログラミングしたように思えた。何となくピンとこなかった。シリーズを開始する2006年以前から構想を練って、計画した壮大なプロジェクトなので、この程度のことは仕方ない。演奏そのものは毎回満足のいくものである。演奏終了後に綺麗なブーケを手渡すファンも二人いたが、最近の演奏会では珍しい。客の入りも良く、新しい客層も増えいる感じで残り3年、6回のコンサートの楽しみが続く。

アンコール曲は「アルベニス:パヴァ―ヌ カプリツィオ」、「リスト:愛の夢」、「グラナドス:スペイン舞曲第5番」。
3曲中2曲がスペインものというのも珍しい。 但し、いずれも耳にしたことがあるメロディ。

:***「音楽の友」誌の対談イヴェントの案内が同誌11月号に載っていた。小山実稚恵と工藤公康の対談。「脱力の極み」と題して11月11日(火)18:30~、東京・神楽坂の音楽の友ホールで行われる。
小山実稚恵が「長年の思いが叶い、この対談が実現しました。一流プレーヤーが何かを成し遂げる時の精神・身体・頭脳の「脱力」についてその秘儀や奥義を聞いてみたいと思っています。」と述べている。
ソフトバンク・ホークス監督就任が決まった工藤公康との対談は意外性があって非常に興味深く思う。

          

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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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