ケント・ナガノ指揮モントリオール交響楽団

〈Kitaraワールドオーケストラシリーズ〉       テレビ北海道開局25周年記念

ケント・ナガノは今から丁度15年前の1999年10月18日ベルリン・ドイツ交響楽団を率いてKitaraに華々しく登場。当時のプログラムによると日本ツアー12公演。札幌では「モーツァルト:交響曲第40番」、「R.シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》」を演奏した。(Kitara初登場はPMF1997でロンドン響と共演。この時はロンドン響3公演があってエッシェンバッハを聴いた)。ヨーロッパのオーケストラはKitaraがオープンした1997年以来数年の間に一流のオーケストラが訪れているが北米のオーケストラの公演の機会に恵まれていない。今回は世界のメジャー・オーケストラの一つ、モントリオール交響楽団のKitara初登場で昨年から心待ちにしていた。

ケント・ナガノ(Kent Nagano)は1951年、カリフォルニア生まれの日系アメリカ人。カリフォルニア大学、サンフランシスコ州立大学大学院卒業後、79年、バークレー響の指揮者を務める。83年、ロンドン響と初共演。86年、新日本フィルを指揮して日本デビュー。87年、ニューヨーク・フィル・デビュー。リヨン歌劇場音楽監督(89-98年)、90年、ロンドン響首席客演指揮者、ハレ管音楽監督(91-2000年)を歴任。2000年、ベルリン・ドイツ響芸術監督に就任。01年にはロサンゼルス・オペラ首席指揮者(03年からは音楽監督)。06年からはバイエルン州立歌劇場音楽総監督とモントリオール響音楽監督を兼務。15年からハンブルク州立歌劇場音楽監督、エーテボリ交響楽団首席客演指揮者に就任予定。

カナダのケベック州のフランス語圏の州都に本拠地を置くモントリオール交響楽団(Orchestre symphonique de Montreal)は1934年創設(初のコンサートは1935年1月14日で1935年結成の記録が一部にある)。78年にシャルル・デュトワが音楽監督に就任してから世界のメジャーオーケストラの仲間入りをしたと言われる。ラヴェルをはじめフランス音楽を得意として「どのフランスのオーケストラよりもフランス的なオーケストラ」という定評を確立した。デュトワ辞任(~02年)後の06年、ケント・ナガノが音楽監督に就任(2020年まで契約延長)。
初来日は1970年で大阪万国博への出演。1992年にデュトワ指揮で札幌公演が行われたと言う。今回が10回目の日本ツアー。

〈プログラム〉
 ラヴェル:組曲「クープランの墓」、 「ボレロ」
 ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」

ラヴェル(1875-1937)はドビュッシーと共にフランス印象派音楽を代表する作曲家。
「クープランの墓」はピアノ曲として古典組曲風の6つの楽章を持っていたが、後にオーケストラ版に編曲された。その際に4曲に縮小された。原曲は第1次世界大戦で亡くなった友人たちに捧げられた。「墓」は“故人をしのぶ曲”という意味で、この曲では故人の想い出を偲んで作られたので生き生きとした明るい雰囲気の曲になっている。クープランはバロック時代の作曲家で、この作品に彼の名を使ったそうである。
オーケストラ版とピアノ版の両方のCDを所有して数回聴いたことがある程度で、この曲には親しんでいない。数日前に予め、インバル指揮フランス国立管による曲を聴いてみた。

演奏会で聴くのは初めてだと思う。木管楽器が活躍し、色彩豊かに演奏された。オーボエ3、フルート2、ピッコロ1、ファゴット2、クラリネット2、ホルン3と弦楽5部。オーボエとフルート各首席奏者の演奏が光った。(オーボエのバスキン(Baskin)、フルートのハッチンズ(Hutchins)は30年前から同響の首席を務める名手らしい。)

「ボレロ」はバレー音楽でラヴェルの代表作。小太鼓が絶え間なく刻み続けるリズムの曲は極めてユニークで人々に最もよく知られている名曲のひとつ。この曲をこんな大編成のオーケストラで観ていても楽しめた。ハープ2、チェレスタ1、打楽器6。低音域弦楽器のピッツィカートのほかに、第2ヴァイオリンのピッツィカートもあった。フィナーレにおけるオーケストラの総奏は輝かしい響きで、最終局面での盛り上がりは素晴らしかった。感動的なフィナーレ。久し振りに聴いた「ボレロ」は今まで耳にしたなかで最も心を打った。
曲が終るや否や聴衆が一斉に感動に満ちた万雷の拍手がホールに響き渡った。久しぶりに大ホールの9割以上の客席を埋めた観客が心からの拍手を送った。しばし鳴り止まぬ拍手に人々の感動が伝わっていた。

後半の曲目も誰もが耳にする名曲。ムソルグスキーのピアノ曲はラヴェルによるオーケストラ編曲版によって広く世に知られるようになったと言われている。原曲は個性豊かな表現と色彩に富む作品で、ピアノ・リサイタルでもよく演奏されている。これまでのブログにも何度か書いているので曲の内容は今回は繰り返さないことにする。

コンサートの前に演奏曲目をCDで聴くのを原則にしているが、最近は忙しくてポピュラーな曲は予め聴かないことが多い。ピアノ曲はアファナシェフ、キーシン、アシュケナージによる演奏のCD。オーケストラ・ラヴェル版はアンセルメ指揮スイス・ロマンド管に親しんでいたが、アシュケナージ版を聴くこともある。

ナガノはオペラとコンサートの両分野で最も多彩な活動を行っていると評価が高いが、オーケストラから自由自在に色彩感に溢れた音を引き出した。楽譜をめくりながらの丁寧でリズム感のある明快な指揮ぶり。トランペットをはじめ管楽器の多彩で力強い音色が豪華絢爛な作品を彩った。フィナーレでの鐘の音がとても印象的であった。

編曲とは言え、ラヴェル独特の色彩感のある豪華なオーケストレーションの素晴らしい曲で《オール・ラヴェル・プログラム》と言えるようなプログラミングに満足。
数年前までラヴェルのCDは「ボレロ」以外はケント・ナガノ指揮ロンドン響の「ダフニスとクロエ(全曲)」、「スペイン狂詩曲、優雅で感傷的なワルツ、古風なメヌエット、ラ・ヴァルス、ボレロ」の2枚だけしか持っていなかった。ポゴレリチの「夜のガスパール」が気に入り、インバル指揮フランス国立管の管弦楽曲全集(輸入盤)、ジャン=イヴ・ティボーデやケフェレックのピアノ曲を手に入れてラヴェルも聴くようになった。いずれにしても、90年代初めにケント・ナガノはラヴェルが得意で注目されていたことになる。

アンコール曲は《ラヴェル:ラ・ヴァルス》、《日本の唱歌3曲のメドレー「青い目の人形」、「十五夜お月さん」、「赤い靴」》、《ビゼー:「アルルの女」第2組曲より〈ファランドール〉》。
東京、福井、京都、横須賀、福島に続いて札幌公演が日本ツアー最終日。北米とヨーロッパがNAGANOの活動の中心とは言え、6年ぶり2度目の来日公演で日本への想いがアンコール曲にも表れていると感じた。

予定の演奏曲目終了後、アンコールには時間を要する「ラ・ヴァルス」など30分にも亘る演奏が展開された。フランス音楽の間に、日本の唱歌がメドレーで流れて穏やかな雰囲気が会場を包んだ。最後はナガノ得意の舞曲でコンサートを華麗に締めくくった。日本ツアー最終日とあってか大サービス。開始時間には秋晴れだった一日も窓の外は日が落ちていた。ホアイエにはコンサートの余韻が残り、指揮者のサインを貰う人々の長い列が続いていた。

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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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