大谷康子&シュトゥットガルト室内管弦楽団 音楽の贈り物 Vol.2

大谷康子ヴァイオリン・リサイタル 音楽の贈り物 Vol.1のコンサートを6月28日に聴いた。今回はシュトゥットガルト室内管弦楽団との共演で「四季」を聴いてみたいと思った。

シュトゥットガルト室内管弦楽団(Stuttgarter Kammerorchester)は第二次世界大戦直後の1945年、バッハやバロック音楽の演奏を目的として、指揮者のカール・ミュンヒンガーが15人の弦楽器奏者を選んで設立した。短期間で世界的人気楽団となり、バロック音楽ブームの先駆け役を果した。初来日公演は56年。現在では現代音楽の分野にもレパートリーを拡大している。ピノック、ブリュッヘン等の世界的に有名な指揮者を経て、06年からミヒャエル・ホフシュテッターが首席指揮者を務めている。近年は指揮者抜きで録音することもしている。
このオーケストラは「四季」や「バッハの管弦楽組曲第2番、第3番」をイ・ムジチ合奏団(*1951年結成)に先駆けて世界初録音。

2014年10月12日(日) 14:00開演 札幌コンサートホール Kitara小ホール

〈プログラム〉
 J.S.バッハ:ブランデンブルグ協奏曲 第3番
 クライスラー:愛の喜び、 愛の悲しみ、 美しきロスマリン
 エルガー:愛の挨拶
 エルガー:弦楽のためのセレナーデ ホ短調
 ヴィヴァルディ:四季

 バッハのブランデンブルグ協奏曲全曲演奏会は2000年にトン・コープマン指揮アムステルダム・バロック・オーケストラ、2010年にベルリン古楽アカデミーによる演奏で2回聴いたことがあって、曲の良さを味わった。今日の演奏会前にコープマンのCDを聴いたが、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各3部と通奏低音の楽器編成で、独奏部と合奏部が分離しない弦楽合奏であった。本日の楽器編成はヴァイオリン3、ヴィオラ3、チェロ3、コントラバス1とチェンバロ1。3楽章構成。第2楽章がチェンバロ独奏のみ。もともとバッハ自身がチェンバロの即興演奏を行なったとされているので、本日はそれに従った演奏と思われた。第1楽章、第3楽章共にオーケストラの合奏で音が柔らかく、見事なアンサンブル。(全6曲中、弦楽器のみは他に「第6番」がある。)

大谷がオーケストラと共にヴァイオリン独奏を行なったクライスラーとエルガーの全4曲はヴァイオリン曲の名曲として知られて演奏機会が最も多い作品。4曲が同時に演奏されることは珍しい。
クライスラーの3曲は「古いウィ―ンの舞踏曲」。ウィ―ンでは誰でもワルツを踊れると言われているが、日本人でも心が浮き立つメロディで何度聴いても心地が良い。「愛の挨拶」はエルガーが妻に捧げた作品で、美しいメロディで親しみ易い曲。

「弦楽のためのセレナーデ」は初めて耳にした。3楽章構成で、曲名の通りに心休まる調べ。

今回のオーケストラのメンバー(Vn.9,Va.4,Vc.3,Cb.1,Cemb1)は9か国から成る。コンマスが韓国系アメリカ人で、ベネズエラ、オランダ、ポーランド、ハンガリー出身などの人々の集団で日本ツアー中にいろいろな言語が飛び交うが、音楽で1つになると大谷は語る。管楽器奏者が入っていないので、ドイツ語の日本語訳は「シュトゥットガルト室内オーケストラ」の方が良いと思った。(*このオーケストラに管楽器奏者も加わっているとしたら「管弦楽団」でいいと思うが、この常設の楽団員構成に関しての詳しい知識は無い。)

ヴィヴァルディ(1678-1741)の「四季」というタイトル付きの4曲のヴァイオリン協奏曲は全12曲からなる協奏曲集作品8「和声と創意への試み」のなかの第1番から第4番にあたる。クラシック音楽のなかでも最も人気のある作品のひとつ。(以前「四季」以外に「和声と創意への試み」という説明がついていた時には一瞬、あの有名な曲とは違う曲かと思ったことがあった。) 四季の情景を描写しているソネットを伴った標題音楽。

Kitaraで「四季」の全曲演奏を始めて聴いたのが、2000年6月の《古澤巌の〈四季〉with プラハ室内合奏団》。続いて2011年12月の《チョン・キョンファの〈四季〉with インターナショナル・セジョン・ソロイスツ》。2007年10月には《イ・ムジチ合奏団》。今回はそれ以来だと思う。

小ホールでの「四季」は初めてで、20名近くの演奏とあって座席は2階席1列目の正面にした。2階席は偶にしか座らないが、コンサートの内容等によって座席を変えることがよくある。今日は前回の大谷のコンサートより客の入りが多くなかった。実際に演奏された華やかなヴァイオリン曲が宣伝のチラシに入っていたら満席状態になっていたかもしれない。2階席は空席がかなりあってコンサートを盛り上げる雰囲気には物足りなかった。

「四季」の独奏ヴァイオリンは大谷康子が担った。第1番 ホ短調「春」。第2番 ト短調「夏」。第3番 ヘ長調「秋」。第4番 へ短調「冬」。4曲の演奏前にそれぞれ大まかな解説を入れ、情景の楽器での表現にも触れた。各曲は3楽章構成で演奏時間は各10分程度。全体の演奏時間は約40分、解説が各2・3分。時間の制限があって大谷の多弁も抑制されて(?)適宜な説明になった。良く聴き慣れた曲で季節の情景を必ずしも詳しくは把握していないので今日の説明は特に楽器との関連で面白く聞けた。
「秋」の第2楽章がチェンバロ独奏、「冬」の第2楽章でヴィオラ以外はピッツィカート奏法が入った。生演奏ならではの鑑賞はいつも新鮮味を覚える。チェンバロ奏者が入った「四季」の演奏は初めてのような気がした。

2階席は空席が多かったとは言え、1階席はまずまずの聴衆が席を埋めた。馴染みの曲の明るい演奏が終わると聴衆から満足の拍手喝采が起こった。アンコール曲はオーケストラが演奏を始めたが、1階の客席後方から独奏ヴァイオリンの音色が聞こえてきた。もちろん、大谷が前回のアンコール曲でも演奏した得意の「モンティ:チャルダッシュ」。
休憩時間中にもサイン会を開き、後半のプログラムのソリストを務めて、直後にヴァイオリンを弾きながら客席を周って演奏する姿には改めて驚愕! 彼女のサービス精神旺盛さには今回は頭が下がる印象を受けた。彼女自身も音楽を楽しみ、観客にも音楽を身近に感じてもらって楽しんでほしいという一心での行動なのだろうと思った。
アンコール曲が終った後に沸き起こった万雷の拍手と大歓声にはオーケストラのメンバーも普段見られないソリストのサービスと聴衆の反応に彼ら自身も楽しんでいた様子がうかがえた。

大谷は「題名のない音楽会」には340回以上の出演で活躍していると言う。今年夏頃、たまたま「題名のない音楽会」500回記念の番組を観たが、私も以前は黛敏郎や山本直純などの指揮の頃は観ていたことがある。とにかく大谷が幅広い音楽活動で音楽を広めている様子が伝わってきた。

***韓国が生んだ世界のヴァイオリン界の巨匠であるチョン・キョンハの「四季」の演奏会では忘れられない出来事があった。2001年12月11日19時開演のコンサートに出演予定であったが、飛行機が悪天候で新千歳空港に着陸できずに帯広空港に着陸した。一行は帯広空港からタクシーで会場のKitaraに向かった。開演時間には間に合わず、大ホールで待つ聴衆にはタクシーの走行状況が逐一アナウンスされた。開演は8時半近くになったと思うが、彼女たちは休憩時間を取らずに予定のプログラムをすべて演奏した。終了時間は10時ごろだったと思う。こんなことはKitaraでも前代未聞の事だったと思う。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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