前橋汀子 アフタヌーン・コンサート2014

去る4月に「バッハ無伴奏ソナタ&パルティータ全曲演奏会」を聴いたが、年齢を感じさせない迫力ある前橋汀子の演奏に感動した。3時間にも及ぶ圧倒的な演奏はその姿が今でも眼前に浮かぶ。
昨年9月にも「アフタヌーン・コンサート」は聴いているが、前回のバッハとは違って肩ひじ張らないで聴けるので、今年も気軽に聴いてみることにした。

2014年9月28日(日) 1:30PM開演 札幌コンサートホール Kitara 大ホール

〈プログラム〉
 ヴィターリ:シャコンヌ ト短調
 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第25番 ト長調 K.301
 ラヴェル:ハバネラ形式による小品
 ドビュッシー(ハルトマン編):亜麻色の髪の乙女
       :ヴァイオリン・ソナタ ト短調
 ヴィエニャフスキ:モスクワの思い出 Op.6
 ドヴォルザーク(クライスラー編):わが母の教え給いし歌
                  スラヴ舞曲 Op.72-2
 ショーソン:詩曲
 ファリャ(クライスラー編):スペイン舞曲第1番
 サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28

2012年から札幌でも始まった「前橋汀子アフタヌーン・コンサート」も今年で3回目を迎えた。毎年9月最終日曜日の恒例のコンサートになった。ピアノは松本和将。ほぼ同じ形式で開催されている。前半にヴァイオリン・ソナタを1曲か2曲。後半にヴァイオリンの小品を中心とした名曲集。
今年の演奏曲で昨年と重複するのは「序奏とロンド・カプリチオーソ」だけである。

ヴィターリ(1663-1745)はバロック期のイタリアの作曲家・ヴァイオリニスト。ヴァイオリンの当時のあらゆる技巧が駆使され、情熱をたたえた豊かな曲想の展開が見事でヴァイオリニスト必須のレパートリーとなっていると言われる。2012年のプログラムにも入っていた。名曲として心地よく聴けた。バッハの「シャコンヌ」は最近ピアノ曲で聴く機会が多い。何処か共通点があって共にバロック音楽の良さが味わえる。

モーツァルト(1756-91)のヴァイオリン・ソナタで最も親しまれている曲のひとつ。22歳の時に作曲した6曲からなるソナタ集の第1曲目。2楽章構成。主題がピアノとヴァイオリンで応答が交わされ、田園の雰囲気をもった伸びやかで素朴な曲。

ドビュッシー(1862-1918)のヴァイオリン・ソナタは彼の最後の作品。彼独特の音色と色彩を持つが、ピアノ曲とは違った感じの曲に仕上がっていた。詩情豊かな曲。彼のヴァイオリン曲を聴く機会は多くはない。一世を風靡したシュロモ・ミンツ(1990年来札)とイェフィム・ブロンフマン(2007年ゲルギエフとKitara登場)が1985年に録音した音源のCDを数年前にレコード店で見つけて手元にあり、偶に聴く。

前半の曲をステージを下がらずに一気に演奏。ラヴェルのハバネラのリズムによるスペイン情緒あふれる曲や聴き慣れたメロデイの「亜麻色の髪の乙女」の後には歓声が起こるくらい聴衆の反応も良かった。前橋は紫のドレス姿でいつもと同じ華やかな演奏で会場に詰めかけた前橋ファンの期待に応えた。ソナタの楽章間の拍手が無かったのも良かった。

後半の曲は前橋が得意にしていて思い入れの深い曲が中心のようだった。フランスの作曲家ショーソン(1855-99)の「詩曲」は詩情に満ちた曲。原曲はオーケストラとヴァイオリン独奏。イザイの初演で知られる。ハイフェッツのCDで久しぶりにコンサートの前に聴いてきた。15分弱の曲でヴァイオリンが存分に歌いまくる。

サン=サーンス(1835-1921)が天才ヴァイオリニスト、サラサーテのために作曲した。ヴァイオリニストの愛奏曲となっている。「序奏」はジプシー風、後半は華麗なテクニックが次々と繰り出され哀愁を帯びたスペイン風のリズムで最も親しまれているヴァイオリンの名曲。

前橋はあらゆる曲を演奏するとは言え、比較的に小品と言える演奏作品から判断すると、スペインものが好みなのかも知れないと思った。内に秘めた情熱や衣装などから、勝手な印象が浮かんだ。

前半の曲が終わる度にブラボーの声もあがり、後半は深紅のドレスでステージに登場した時には、その華やかさに一瞬溜息さえ起った。演奏終了近くに聴衆は徐々に気分が高揚していく感じであった。
当然とは言え、全曲暗譜で一気に弾き切った。凄い集中力! 古希を過ぎても、彼女の精神力と体力は並みのものではない。前橋自身も聴衆の反応に満足した様子であった。

アンコール曲は「マスネ:タイスの瞑想曲」の他に、ヒット曲のメドレー。「枯葉」、《ウエストサイド・ストーリー》より「マリア」、「イエスタディ」、「オペラ座の怪人」、「愛の讃歌」。
ヒット曲のメドレーは聴衆の心を掴んだ。聴き慣れた名曲が5曲も流れて、聴いていて極めて心地よい気持ちになった。アンコール曲にヴァイオリン曲に拘泥しないヒット・メドレーを選曲したのは大成功だったようである。聴衆も大満足で日曜の午後のひと時を楽しんだ様子がホールやホアイエに満ちていた。帰りに“いいコンサートだった”と口にする客もいた。

前橋汀子は日本のヴァイオリン界の第一人者で最近は札幌で聴く機会も増えた。90年代は3回、2000年代は3回だったが2010年代に入って6回と毎年彼女のコンサートを聴くようになった。(Kitara では今回が10回目となった。)70年代、80年代の記録はないが何回か聴いていると思う。来年以降も聴き続けることになりそうである。


 
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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