石川祐支&大平由美子 デュオ・リサイタル ~ドイツ音楽の夕べ~

5月末に行われた「札響くらぶ交流会」に大平由美子さんと石川祐支さんが参加されていて、その折に今日の演奏会の案内があって割引料金でチケットを購入していた。彼らと言葉を交わす機会もあって親近感も沸いた。

2014年9月22日(月) 7:00PM開演 札幌コンサートホール Kitara小ホール

石川祐支(Yuji Ishikawa)は1977年、名古屋生まれ。東京音楽大学に特待生として入学して首席で卒業。99年、第68回日本音楽コンクールチェロ部門第1位。その後、マリオ・ブルネロに学び、03年、東京響首席奏者を経て、05年4月より札幌交響楽団首席チェロ奏者に就任。ソリストとして東京シティ・フィル、セントラル愛知響、東京響、神奈川フィル、札響とコンチェルトを共演。New Kitaraホールカルテットを始め、室内楽でも幅広い活躍をしている。
彼のチェロから奏でられる音は繊細で響きが豊かで色々な感情が伝わってくる。チェロという楽器の持つ音の特徴をどのようなコンサートでも紡ぐ彼の魅力に惹かれている。

大平由美子(Yumiko Ohira)は札幌生まれ。東京藝術大学卒業後、ドイツに渡りベルリン芸術大学ピアノ科に入学。同大学卒業後、89年より08年までベルリン芸術大学・舞台演奏科の講師を務めた。その間、ドイツの放送番組、音楽祭に出演。ベルリンをはじめドイツ各地でソロ、コンチェルト、室内楽、リート伴奏など多岐にわたる演奏活動を行った。日本では日本フィルや札響との共演の他、リサイタル、室内楽などでも活躍。
08年に帰国。以後、札幌を拠点に積極的な音楽活動を展開している。私は10年8月のリサイタルを初めて聴いた。彼女は「シューマン:森の情景、ショパン:幻想即興曲、バラード第3番、シューベルト:ソナタ19番」などを弾いた。繊細で、深みのある演奏で、経験の豊富さを感じたことが印象に残っている。

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:ピアノとチェロのためのソナタ第4番 ハ長調 Op.102-1
 シューベルト:アルぺジョーネとピアノのためのソナタ イ短調 D821
 シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70
 ブラームス:ピアノとチェロのためのソナタ第2番 ヘ長調 Op.99

ベートーヴェンはチェロ・ソナタを5曲作ったが、第3番が一番親しまれている。(このデュオは2年前のコンサートで演奏したそうである。)他の4曲が2曲ずつまとめられて作品番号が各々付いている。「第4番」は後期の作品で、第3番ほどの華やかさはない。ソナタの枠組みを離れた自由な曲つくりになっていると言われる。2楽章構成。チェロとピアノが穏やかに交わす対話が美しい序奏に続いて、ダイナミックなアレグロで緊迫感のある第1楽章。瞑想的な気分のアダージョで始まり、第1楽章のアンダンテが再現され、ユーモラスな掛け合いで軽快さが混ざりあったアレグロでのフィナーレ。
ロストロポーヴィチとリヒテルのCDで数回聴いてコンサートに臨んだのでそれなりの鑑賞ができた。

「アルペジョーネ・ソナタ」は昨年ピリス&メネセスのデュオで初めて聴いた。1823年に発明された楽器のために作られたが、シューベルトの死後40年以上たって曲が出版された1871年にはこの楽器は姿を消していたようである。アルぺジョーネはギターのように指板のフレットがついた6本の弦を弓で弾く楽器だったが、チェリストの名手がこの曲に挑戦している。4弦でフレットを持たないチェロで演奏するのはチェリストには至難の技のようである。
3楽章構成。ピアノとの掛け合いで美しい第1楽章。第2楽章は歌曲のように始まり、静寂で落ち着いた雰囲気の中に不安感がよぎる。終楽章は哀愁を帯びながらも幸福感が溢れてくる。いろいろな感情が織り交ざった表現でフィナーレ。
この曲を意識して傾聴したのが2回目で前回よりは曲の良さを理解するように努めた。チェロの哀愁を帯びた特徴ある音色を期待する者にとっては感激度が薄まる印象は拭えなかった。

石川の熱演は手に取るように伝わってきた。前半の2曲の演奏の準備も大変であったように思えた。大平は4年前のリサイタルの時より若々しく生き生きとした演奏であったが、デュオとして相手に合わせて演奏するのにはもう少し時間が必要であったのかもしれない。

シューマンの曲は題名だけでは使用楽器が判らなく、多分、今回初めて耳にする曲。原曲はホルンとピアノのために書かれ、後に彼自身がチェロ版を書いたそうである。ロマンティックなアダージョ部分と躍動感溢れるアレグロ部分から成る。10分程度の演奏時間の小品。

ブラームスのチェロソナタは第1番と第2番のCD(デュプレとバレンボイム)が手元にあって偶に聴いている。彼は生涯にピアノとチェロのためのソナタは2曲しか書いていない。「第2番」は既に大作曲家としての名声を得ての円熟期の作品。力強く、若々しい第1楽章。ピアノとチェロが交互に現れ、躍動感がある。第2楽章ではチェロがピッツィカート奏法も入って個性的。ピアノとチェロの対話が美しいアダージョの第2楽章。第3楽章ではチェロが高音域で甘美なメロディを奏でてピアノが歌曲の伴奏のように寄り添う。終楽章は幸福感と優しさが感じられ、曲は力強く閉じられた。演奏時間30分の大曲。

演奏終了後、演奏者も疲れ切った様子。私自身も普段より力が入って、集中力が高まって少々疲れを感じた。会場は満席状態。地元の音楽家への期待も高かった。聴衆はそれなりの満足感を得たと思うが、演奏家の感想は満員の聴衆に対して“反省の言葉”が出た。演奏者にとっては満足のいく思い通りの演奏が実現できなかったようだ。ドイツ音楽の“重量級”の曲ばかりだったので、特に最後の曲の演奏は精神的にも体力的にも大変であったようだ。
聴く側にとっては、聴きごたえのある演奏会ではあった。

アンコール曲には札響事務局長としても活躍して札幌の音楽界に多大な功績を残した故竹津宜男氏と故谷口静司氏への感謝と哀悼の意味で「バッハ:G線上のアリア」が演奏された。

*コンサートの帰りに2週間前に初めて行った“名曲バーOLD CLASSIC”に立寄った。「第九」の第4楽章が聞こえてきた。若い先客がいた。今夜のコンサートの話をマスターにしていると、若い人が話しかけてきた。石川さんのファンらしい。彼のドヴォルジャークを聴いたか尋ねられたので、もちろん聴いた旨を伝えると、是非聴きたかったのに聴けなくて残念だったと繰り返していた。石川さんのチェロの魅力を話すと全く同意見だと言って話に花が咲いた。
Kitaraにコンサート用ピアノが8台あると話すと驚いていた。ブルーノ・ワルター指揮コロンビア響による「ブラームスの交響曲第4番」の曲がかかりだすと、前回この店でお会いした常連客が2人姿を見せた。お互いに顔を見合わせてビックリ! 4人でワルターの演奏を素晴らしい音響で聴き入りながら、クラシックの話題が多方面に及んだ。生演奏を思わせる音の迫力を楽しんた。感動的なブルーノ・ワルターだった。今度はワルターの「運命」と「未完成」をLPで聴くことになった。私もCDで所有している。ところが、同じ音源でもYAMAHAのスピーカーで聴くと迫力が違う。かなり遅い時間になったので曲の途中で店を出た。帰りの挨拶も旧知の間柄のようになっていた。楽しい時間を過ごせた。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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