今井信子&伊藤恵 デュオ・リサイタル ~魂のひびき~

世界的なヴィオラ奏者、今井信子の生演奏は聴いたことが無かった。小樽や江別で公演を開催していても、Kitaraでのコンサートの企画が無かった。今回は思い切って隣りの江別市に出かけて行くことにした。

2014年9月18日(木) 19:00開演  えぽあホール(江別市民文化ホール)

〈プログラム〉
 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第28番 ホ短調 K.304(1779)
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 「雨の歌」 op.78(1789)
 ブリテン(今井信子編):無伴奏チェロ組曲 第3番 op.78(1971/arr.2013)
 クラーク:ヴィオラ・ソナタ(1919)

今井信子(Nobuko Imai)は1943年、東京生まれ。6歳でヴァイオリンを始め、桐朋学園大学で齋藤秀雄に師事、その後ヴィオラに転向。イェール大学大学院、ジュリアード音楽院に学ぶ。67年ミュンヘン、68年ジュネーヴともに国際コンクールで最高位獲得。ベルリン・フィル、ロンドン響、パリ管などと共演。室内楽ではクレーメル、マイスキー、ヨーヨー・マなどと共演。ソリストとして武満作品などを数多く初演。03年ミケランジェロ弦楽四重奏団結成。日本では92年から〔ヴィオラスペース〕を開催して企画・演奏に携わり、ヴィオラ界を牽引する国際的活動を行っている。音楽賞を含め数々の賞を受賞。アムステルダム音楽院,上野学園大学などで後進の指導にも当っている。(71年札響と共演)

伊藤恵(Kei Itoh)は1959年、名古屋生まれ。桐朋学園女子高校を卒業後、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学、ハノーファー音楽大学に学ぶ。79年のエピナール国際コンクール第1位、80年のバッハ国際コンクール第2位、81年のロン=ティボー国際コンクール第3位と目覚ましい活躍の後、83年のミュンヘン国際コンクールピアノ部門で日本人としては初めての優勝の快挙を成し遂げた。83年サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管と共演してミュンヘン・デビュー。84年はN響と共演して日本デビュー。(札響と84・85年共演)
日本を代表するピアニストの一人。Kitaraで彼女の演奏を5回聴いているが、前回は昨年7月、New Kitaraホールカルテットとの共演でシューマンとブラームスのピアノ五重奏曲を演奏。2013年、香港でアントニオ・メネセスと共演、今年はN響とも共演している。東京藝術大学教授、桐朋学園大学特任教授としても活躍中。

モーツァルトやベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタはピアノとヴァイオリンがほとんど同等な役割を担っていると言われる。2楽章構成。彼のヴァイオリンソナタの曲は多分全曲持っていると思うが美しい旋律の曲が大部分である。30曲以上のヴァイオリンソナタのうちで短調の曲はK.304だけと言ってもいいくらい珍しい調性の曲。ピアノ協奏曲も含めて、明るくて軽やかな長調の曲が殆どである。この曲は短調であっても、明るくて楽しい曲で、特徴があるせいか聴く機会が多い。
第1楽章が終ったところで拍手を続けた人が1人いたのが少々残念であった。

ブラームスは40歳を過ぎて初めてヴァイオリン・ソナタを作曲した。作品は3曲しか残されていない。ムロ―ヴァとアンデルシェフスキーによるCD(第1番~第3番)を2000年に購入して聴き続けていた。(5年ほど前にアンデルシェフスキーの名が大きくなってサントリーホールに彼のピアノ・リサイタルを聴きに出かけたのが3年前の事である。) 昨年5月、ムターの演奏をKitaraで聴いて、その折にブラームスのソナタ3曲入りのCDを購入してサインしてもらったのを昨日の出来事のように懐かしく思い出す。
この曲は今年の4月に樫本大進とコンスタンチン・リフシッツのデュオで聴いたばかり。今ではヴァイオリン・ソナタの名曲として親しんでいる。「第1番」は優雅でロマン性に富む。明るくて美しいメロディで魅力的な第1楽章。哀愁を帯びた抒情的な第2楽章。心も高揚して充実感溢れる第3楽章。《雨の歌》と呼ばれるのは、第3楽章に1873年に作曲された歌曲の《雨の歌》の旋律が主題として用いられ、それが第1、第2楽章の主題のモチーフにもなっているからと言われている。
何度聴いても美しい曲で、ヴァイオリン協奏曲に次いで気に入っている彼のヴァイオリン曲である。

ヴィオラ曲の前にヴァイオリン曲で今井信子の素晴らしい演奏に満足した。ただ、楽器の大きさが普通のヴァイオリンより大きめであった。ヴァイオリン曲として極めて自然に聴けたのだが、ヴィオラの楽器を使用して演奏したのかどうか疑問が残った。(今になっても判らない)

プログラムに載っていた今井によると、彼女は数年前にロンドンの出版社から「ブリテンの無伴奏チェロ組曲」のヴィオラ版への編曲の依頼があり、ブリテンの生誕100年を迎えた2013年に出版にこぎ着けた。
曲は9楽章構成。第1楽章からショスタコーヴィチの現代曲を思わせる音楽。プログラム・ノートを読んでも素人には鑑賞が極めて難しい。ただ、有名な作曲家の作品の編曲を依頼されるヴィオラ奏者(編曲者)としての今井の偉大さは理解できた。
(*世界で名高いヴィオラ奏者、ユーリ・バシュメットがモスクワ・ソロイツ合奏団を率いて1997年にKitaraに登場し、3年前にも東京で彼と合奏団の演奏を聴いているが、ヴィオラ・ソナタを耳にするのは極めて珍しい。バシュメットのCDは手元にあっても聴くことは滅多にない。)

レベッカ・クラーク(1886-1947)の名は初めて聞いた。彼女がヴィオラ奏者、特に作曲家として、その功績が再評価されるようになったのは1970年代で、楽譜が出版されるようになったのは90年代に入ってからだそうである。
この曲は彼女が作曲家としての地位を確立した出世作と言われる。曲は3楽章構成。現代曲とは対照的に、どちらかと言えばロマン派的で親しみ易いメロデイ。憂愁と抒情性のある魅力的な作品になっていた。

伊藤惠は2010年5月、えぽあホールで開催された「今井信子ヴィオラリサイタル」でも共演していて、お互いに気もあっていて満足のいく演奏だった様子がうかがえた。

帰りの電車の時間表を詳しく調べていなかったので、アンコール曲はクライスラーの曲を聴いただけで、途中で退席した。
470席ほどの客席が8割ほどの聴衆で埋まっていたが、音響もそれなりのホールであった。地下鉄とJRの乗り換えで少々時間はかかっても札幌・大麻間の乗車時間は15分程度。駅からホールまで徒歩で5分もかからずに行けて片道1時間程度で通えることが判った。今後、機会があれば気軽に出かけられそうである。

《追記》今井信子はPMF2002の教授陣としてPMFに初参加していたことが判った。芸術監督がシャルル・デュトワでアルゲリッチがソリストを務めた年で忘れ難いPMFになっている。2002年はジョシュア・ベルもソリストとしてN響と共演した。前半の期間の教授陣がウィ―ン・フィルの首席奏者で、後半の期間の教授陣をインターナショナルズが務めた。今井はインターナショナルズのヴィオラ奏者としてアカデミー生の指導にあたった。Kitara小ホールでPMFインターナショナルズ・アンサンブル演奏会が行われた際には「モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第1番」を演奏した記録があった。
前半のウィ―ン・フィルのメンバー、ジョシュア・ベル、後半のアルゲリッチに対する注目度が大きくて、結果的に後半の公演の印象が薄くなっていた。(2014年9月23日)
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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