外山啓介 ピアノ・リサイタル2014

外山啓介が日本音楽コンクール・ピアノ部門で第1位になったのが2004年。それから10年が経過したが、彼は日本第一線の若手ピアニストとして順調に活躍を続けている。
私が初めて彼のコンサートを聴いたのが05年。Kitaraのオータムコンサートとして企画され「日本音楽コンクール優勝者によるコンサート」が開催された。同じ札幌出身の外山啓介と橘高昌男(1996年第1位)の二人が出演。
***「日本音楽コンクール」は1932年に毎日新聞社が始めた「音楽コンクール」が82年にNHKとの共催になって改称され、ピアノ部門は毎年開催されている。このコンクールはピアニストの登竜門になっているが輝かしい活躍をしているのは一部のピアニストにしか過ぎない。外山は最前線で活躍している数少ない音コン入賞者の一人と言えよう。

その後、外山は07年に華々しく全国デビューを飾り、毎年リサイタルを開いている。私は彼独特の繊細で色彩感豊かな音色で彩られるコンサートを楽しみにしている。私が聴くのは今回で13回目になる。
今回のプログラムで一番楽しみな曲目はリストの「ソナタ・ロ短調」である。


2014年9月12日(金) 7:00PM開演  札幌コンサートホール Kitara大ホール

Keisuke Toyama Plays Favorite Piano Sonatas

〈プログラム〉
モーツァルト:ロンド イ短調 K.511
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331 「トルコ行進曲付き」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 op.13 「悲愴」
リスト:愛の夢 第3番 
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調

「ロンド」の主題が静かに繰り返されるが、聴き慣れない者にはどことなく単調な感じがしないわけではなかった。モーツァルトの小品のなかでもK.485とともに名作のひとつになっているのは知っているが、、、。

ピアノ・ソナタの分野を確立したモーツァルトの作品で最も親しまれている曲。第1楽章は子守歌風の優美な主題と6つの変奏。様々な音の変化が楽しい。ピアノ・ソナタでは唯一のメヌエットで舞曲による第2楽章。トルコの雰囲気も感じられた。
第3楽章は「トルコ風に」と書かれ、左手低音の独特なリズムは太鼓の響きを伴ってトルコ音楽を思わせ異国情緒たっぷり。「トルコ行進曲」として単独で演奏されるほど有名である。
外山の演奏会でこの曲を初めて聴いたが彼の魅力が味わえて良かった。
CDで聴く時にはトルコ出身のファジル・サイに何となくより親しみを感じてしまうものだ。

ベートーヴェン前期の代表作で彼自身が付けたサブタイトル「悲愴」は何度聴いても素晴らしい曲。重苦しい序奏と激しい情熱で始まる第1楽章。哀しみに溢れた主題をカンタービレで綴った第2楽章。第3楽章は感傷的ではあるがロンド形式の終曲。第1楽章の主題が再び現れ、力強く曲が閉じられる。サブタイトルが持つほどの悲愴性はないが、さすがベートーヴェンのいくつかの有名なソナタのひとつとして鑑賞できたのは良かった。
座席は1階中央のピアニストの手が見える場所であった。左手のオクターヴ連打や両手の交叉を自分の目でしっかりと見れ、外山の感情のほかに手の動きが見えていつもより感情移入が出来た感じがした。

1階は満席で2階席もかなりの客の入りだった。だが、聴衆の反応は静か過ぎて感動がホールを覆うまでには至らなかった。拍手も儀礼的の範囲のような気がした。別に演奏に不満があった訳ではないようだった。控えめな拍手で前半が終ったが、演奏終了後にはもっと感情を表現しても良いと思った。

後半の2曲はリスト(1811-86)の作品。ピアノ独奏曲集「愛の夢~3つの夜想曲」はショパンのノクターンを思わせる美しいメロディを持つ作品。3曲ともピアノのために書かれた作品ではなく、歌曲を編曲した小品である。私自身、そのことを歌曲を聴いて思い出した次第である。
「愛の夢」と言えばこの曲を指すぐらい余りにも有名なのが「第3番」でオーケストラ用にも編曲されて親しまれている。原曲はドイツ・ロマン派の詩人フェルディナンド・フライリヒラート(1810-76)の詩集「墓のあいだで」の中にある「愛しうる限り愛せ」による歌曲。
冒頭の美しいメロディが曲全体にわたって奏でられて愛を賛美する。最も親しまれている名曲のひとつ。

私が「ソナタ・ロ短調」の曲名を知ったのは21世紀に入ってからの事である。2001年にLisztのCDを輸入盤で購入した時の曲目に“Sonata for Piano in B minor”が入っていた。アルゲリッチの演奏で何気なく何回か聴いていたが余り気にも留めていなかった。06年の小山実稚恵の「音の旅」第2回のコンサートで意識し出した。08年に「音楽の友」11月号の特集記事「日本のピアニスト50人が選ぶ究極のピアノ名曲50」で「リスト:ピアノソナタ・ロ短調」&「ラヴェル:夜のガスパール」が第1位となっていた。その後、意識してそれらの曲を聴いてみるようになって、徐々に親しめるようになったが鑑賞が難しい曲だと思う。 09年のケマル・ゲキチの演奏会でもこの曲が取り上げられたのは今でも記憶に残っている。Kitara小ホール1階6列6番の座席から彼の圧倒的な演奏を目の当りにして感動したのである。演奏家にとっても難曲に入るのか、札幌の演奏会では演奏の頻度は高くない。

外山は昨年「展覧会の絵」に取り組んだが、今年は30歳の節目に「ロ短調ソナタ」に挑戦した心構えを語っている。リスト唯一のピアノ・ソナタで30分近くに及ぶ単一楽章の大作。伝統的なソナタとは違う作品であり、当時の音楽界に波紋を引き起こした。それだけに当時の革新的な作品にピアニストとして挑戦する価値のある曲なのであろう。
ソナタの他の楽章の要素を盛り込んで、主要主題が繰り返されて複雑で緻密な構成を持つ曲。超絶技巧が必要な難曲として知られる。独創的でドラマティックな曲の展開が手の動き、指の動きが見えて一層楽しめた。

演奏終了後の聴衆の拍手は前半より大きくなって喜びの感情が高まった雰囲気となった。6月に旭川から始まった2014年の全国ツアーも半分は終わり、外山も安定した演奏を披露した。リストの「ロ短調」はアルバムが発売されれば是非購入しようと思う。来年のコンサートを心待ちにしたい。

アンコール曲は「リスト:コンソレーション(慰め)第3番」。(6曲構成で「第3番」が最も有名な曲)
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR