PMF・GALAコンサート(佐渡裕指揮PMFオーケストラ) 2014

2014年8月2日 15:00開演  札幌コンサートホール Kitara 大ホール

第1部 (15:00~17:30)
 天羽明惠(司会、ソプラノ)
天羽明惠(Akie Amou)は2012年に始まったガラ・コンサートで司会を務め、明るい進行役で祝祭に相応しい楽しい雰囲気を作っている。

≪PMFブラス・アンサンブル演奏会≫
〈曲目〉
 ディロレンツォ:リトル・ロシアン・サーカス
〈出演〉デンソン・ポール・ポラード(指揮)、マーク・J.イノウエ(トランペット)、
     PMFブラス・アンサンブル

デンソン・ポール・ポラード(Denson Paul Pollard)はメトロポリタン歌劇場管のトロンボーン奏者。PMFにはアカデミー生として1995年に参加。教授としては5回目、指揮は初めて務める。イノウエはサンフランシスコ響の首席トランペット奏者。PMFには7回目の参加。
ミラノ・スカラ座ブラスクィンテッドの来日公演キャンセルのため急遽プログムが変更になった。
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〈曲目〉
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ 作品34-14
〈出演〉
 ダニエル・マツカワ(指揮)、天羽明惠(ソプラノ)、PMF弦楽アンサンブル

ダニエル・マツカワ(Daniel Matsukawa)はフィラデルフィア管首席ファゴット奏者。PMFアカデミー生として92~94年に参加。PMF教授として01年から14回目の参加。PMFで09年に指揮者としてデビュー。アシスタント・コンダクターを務める。

天羽明惠は東京藝術大学卒業後、ヨーロッパ各地の歌劇場や音楽祭、日本の主要オーケストラと共演。08年に札響と共演してKitaraに初登場。PMFではガラ・コンサートの司会を兼ねて12、13年に続いて3回目の参加。先日のオペラ公演ではツェルビネッタ役で大活躍。

「ヴォカリーズ」は歌曲として聴くのは初めてである。母音だけによって憂いに満ちた旋律が連綿と歌われた。声楽の発声練習にも適していると思った。オーケストラ版はラフマニノフ自身が書いている。様々な楽器に編曲されていて聴く機会が多い名曲。曲のタイトルから判断すると直ぐ判るはずだが、今まで原曲が歌曲とは意識していなかった。
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〈曲目〉
 リスト:愛の夢 第3番 変イ長調 (ピアノ:小山実稚恵)

小山実稚恵(Michie Koyama)はチャイコフスキー国際とショパン国際の両方のコンクールで入賞した日本人で唯一のピアニスト。12年間・24回のリサイタルシリーズ「音の旅」(2006ー2017)の壮大なプロジェクトを全国7都市で進行中。彼女のコンサートを聴くのは25回目。PMFには昨年に続いて4回目の参加。

「愛の夢 第3番」はリスト自身が作曲した歌曲に基づいたピアノ曲。「おお、愛しうる限り愛せ」というロマンティックな内容を小山はピアノでこの上なく美しく表現した。ピアノのアンコール曲として聴くことの多い名曲。(*歌曲で聴いたのは半年ぐらい前のことであった。)
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≪宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」から 語り・チェロ・ピアノによる≫
〈曲目〉
 エルガー:愛のあいさつ 作品」12
 ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」第5楽章から
 シューマン:「子供の情景」から “トロイメライ”
 ポッパー:妖精の踊り 作品39
(出演〉名取裕子(朗読)、セルゲイ・アントノフ(チェロ)、小山実稚恵(ピアノ)

セルゲイ・アントノフ(Sergey Antonov)は1983年、モスクワ生まれ。09年、第13回チャイコフスキー国際コンクール優勝。09年に東京交響楽団、10年に新日本フィルと共演。現在はボストンを拠点としてアメリカ、ヨーロッパで活動。Kitaraに初登場。
 
宮沢賢治(Kenji Miyazawa)は詩人・童話作家。昨日の朝日新聞夕刊で読者の最も好きな詩人の作品として彼の作品「雨ニモマケズ」が上げられていた。「セロ弾きのゴーシュ」も有名な作品。現代では「チェロ」と呼ばれる楽器が以前は「セロ」とも言われた。英語での綴りは“cello”である。チェロ奏者の物語をテーマにして、ナレーター役を映画・テレビで活躍中の女優が務めた。チェリスト、ピアニストとの異色のコラボレーション。小山は昨年ヴァイオリニストのレーピンと共演、今年は注目の若手セロ弾きと共演。朗読を担当した名取裕子(Yuko Natori)はさすが経験豊富で何役もこなすナレ‐ター役。司会者のインタビューに答えて「素晴らしいセロ弾きゴーシュ(Cellist)に駄目だしをするのは心苦しかった」と言っていた。アントノフと小山の演奏が聴きごたえがあったのは言うまでもない。宮沢賢治の世界がコンサートで表現されたのは大変面白かった。

名取は物語の最後に、アントノフのアンコール曲を紹介。サン=サーンスの「白鳥」の演奏によるチェロの音色に聴衆は何度も聴き惚れることになった。
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〈曲目〉
 東儀秀樹:地球よ優しくそこに浮かんでいてくれ
 プッチーニ:歌劇「トゥ―ランドット」から “誰も寝てはならぬ”
〈出演〉
 ダニエル・マツカワ(指揮)、東儀秀樹(篳篥、笙)、PMFオーケストラ
 
東儀秀樹(Hideki Togi)は1959年、東京生まれ。東儀家は奈良時代から雅楽を世襲してきた楽家。86年から10年間、宮内庁楽部に勤務。96年、デビュー・アルバムをリリース。様々なジャンルの音楽活動を行い、ヒチリキ(hichiriki )やショウ(shou)などの1400年前から伝わる伝統の邦楽器と洋楽のコラボレーションでKitaraにも頻繁に登場。彼は音楽以外の分野でも多彩な活動を行っている。
現代のフルートやクラリネットという西洋の楽器の元祖とも言える邦楽器を誇り高く守って伝えている東儀の音楽家としての使命が伝わってきた。私自身は十年以上前から東儀のコンサートを何回か聴いていて、その特徴を知っていた。司会者の天羽は今回、この邦楽器の持つ素晴らしさと彼のイケメンぶりと演奏に凄く感激した様子であった。
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〈曲目〉
 アーバン:「ヴェニスの謝肉祭」の主題による変奏曲
 ディニク:ホラ・スタッカート
〈出演〉
 ダニエル・マツカワ(指揮)、セルゲイ・ナカリャコフ(トランペット)、PMFオーケストラ
 
セルゲイ・ナカリャコフ(Sergei Nakariakov)は7月27日の特別コンサートに出演して驚異的な超絶技巧を披露して聴衆を魅了したばかり。司会者は彼の人まねできない循環呼吸法による超絶技巧を聴衆に紹介していた。瞬きも出来ないほどの演奏に聴衆はウットリ!

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〈曲目〉
 ホルスト(田中カレン編):PMF賛歌~ジュピター
〈出演〉
 佐渡裕(指揮)、天羽明惠(ソプラノ)、PMFオーケストラ、北海道大学混声合唱団
 
佐渡裕は2013年4月、BBCフィルwith辻井伸行との共演以来のKitara登場。PMFには90年の第1回でバーンスタインのアシスタント・指揮者、92~97年レジデント・コンダクターを務め、98、99、01年は指揮者として参加。今回は13年ぶりで11回目の参加。ヨーロッパではベルリンを本拠地として活動し、11年にベルリン・フィルと初共演で注目を浴びた。2015年9月からオーストリアのトーンキュンストラー管の音楽監督に就任予定。

天羽は休憩時間にホアイエに聴衆を集めて歌唱指導。PMF賛歌(井上頌一作詞)を聴衆が起立してPMF合唱団と共にオーケストラの演奏で合唱。東儀も演奏に加わり、小山と名取も歌に加わるハプニング。これには天羽も驚いた様子。コンサートの感動が皆に伝わった姿と言えよう。
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第2部 17:00~19:00
 
《PMFオーケストラ演奏会プログラムC》

〈曲目〉
 バーンスタイン:「キャンディード」序曲
 チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲 作品33
 ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 作品47
〈出演〉
 佐渡裕(指揮)、セルゲイ・アントノフ(チェロ)
 PMFアメリカ、 PMFオーケストラ

バーンスタイン(1918-1990)の作品はPMFで数多く演奏されているが、この序曲はPMFオーケストラ演奏プログラムとして過去98、02、08、12年に続いて5回目となる。華やかなファンファーレとともに始まり、劇中の歌を交えて快活に展開する。200年前に出版されたヴォルテールの小説「キャンディ―ド」を現代と重ね合わせて作り上げたオペレッタ。94年のPMFで佐渡が札響を指揮して日本人だけの歌手陣による日本語上演を演奏会形式で行った。
バーンスタインは89年12月にロンドンでこの「キャンディ―ド」を再演した。佐渡はアシスタントとして演奏会と録音に立会っていた。バーンスタインはロンドンでひいた風邪がもとで体調を崩し、札幌でのPMFをはさんで、相次いで演奏会をキャンセルして、90年10月に亡くなった。ロンドンと札幌での演奏会にかける彼の情熱を感じ取っていた佐渡のこの曲に対する想いは容易に想像できる。

今日の演奏はテレビ収録されるために客席が約50席売りに出されずに最近では珍しい大々的な録音が行われた。
「キャンディ―ド」は得意の曲とあって、佐渡の躍動感あふれる指揮ぶりは面目躍如という感じだった。人気の高い指揮者に対する聴衆の反応は凄かった。

チャイコフスキー(1840-93)は有名な「ピアノ協奏曲第1番」を完成した翌年の1876年に「チェロ協奏曲」と呼べるような作品を書き上げた。オーケストラの序奏に始まり、チェロが華麗な旋律の主題を提示。続いて7つの変奏が繰り広げられる。テーマが魅力的で、とても親しみ易いメロディ。
第1部でのチェロの音色の美しさを今度は協奏曲で堪能。

ショスタコーヴィチ(1906-75)の「第5番」は彼の15曲の交響曲の中で最も有名な曲。PMFオーケストラ演奏曲として94、02、06年に続いて4回目のプログラムになる。第11番も99.、04年と2回、第10番が11年に演奏された。ショスタコーヴィチをマゼールが選曲したことに少々意外だと思っていたが、佐渡は94年のPMFオーケストラを指揮して、3年前のベルリン・フィルとの初共演でも演奏していた曲なので納得がいった。
1936年初頭の頃、ショスタコーヴィチの音楽はスターリン独裁のソ連政府から「反社会主義」の名のもとに糾弾されていた。「交響曲第5番」はこのような複雑な状況下で作曲された。翌37年にムラヴィンスキーの指揮で初演が行われて大成功を収め、ショスタコーヴィチは危機を脱した。(*73年東京文化会館でのムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルのライブ録音が手元にあり、私がショスタコーヴィチに親しむきっかけのCDとなった。)しかし、彼の信念に基づいた作曲活動ができない中での作品で、発表当時から曲に対しての様々な解釈が行われてきた。未だ不明の点は多いが、この曲は一番注目度の高い曲として定着している。
「第5番」は他のどの交響曲よりも解りやすい旋律や親しみを抱かせる響きがある。第1楽章は第2次世界大戦が始まろうとしている暗い世の中が描かれている感じ。第2楽章は諧謔性の濃いスケルツォ。第3楽章は深い悲しみに満ちた緩徐楽章。コントラバスのパート・ソロの響きに無残な死を遂げた人の姿が浮かんだ。木琴の鋭い音色も印象的。第4楽章はティンパニの連打で闘争が始まり、勝利への道が開かれる。

RA席から楽器編成と演奏者の表情を含めて興味深く鑑賞した。教授陣が演奏に加わって実質的に5管編成となった。チェロがヴァイオリンの対抗配置。ハープ2、ピアノとチェレスタは1名で担当、打楽器7を含めて130名以上の大編成のオーケストラは圧巻。コンサートマスターのDavid Chanはメトロポリタン歌劇場管のコンマスで、PMFには08年以降5回目の参加。
教授陣が加わっての演奏は一層オーケストラの輝きを増した。特にフルートを始め木管楽器奏者の教授陣の演奏が目立った。佐渡の体躯を生かしたスケールの大きい、表情豊かな指揮ぶりは印象深かった。
CDで聴いているのとは違うダイナミックな曲の展開に改めて生演奏の素晴らしさを味わった。

演奏終了時間が7時過ぎの予定が8時近くになったが、演奏が終わると拍手の嵐。佐渡は何度もステージに登場し、最後にコンマスを連れて退場。アカデミー生たちは互いにステージ上で握手を交わし、木管奏者たちは全員の記念写真に収まっていた。観ていて彼らの感激の様子が伝わってきた。今日は彼らのKitaraでの最終公演であった。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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