札響 夏の特別演奏会 2014 (尾高&小曽根)

尾高忠明 & 小曽根真 ---協奏曲の夜ーーー

指揮/尾高 忠明     管弦楽/札幌交響楽団
ピアノ/小曽根 真

モーツァルト: ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K.271 「ジュノーム」
プロコフィエフ: ピアノ協奏曲第3番  ハ長調 op.26

小曽根真(Makoto Ozone)は1961年、神戸生まれのジャズ・ピアニスト。83年、ボストンのバークリー音楽大学のジャズ作曲・編曲科を首席で卒業。同年、カーネギーホールでリサイタルを開き、米CBSと日本人初の専属契約を結んで世界デビュー。03年以降、ゲイリー・バートンとのデュオ活動が今も続いている。03年、バークリー音楽大学より名誉博士号を授与された。近年はクラシックにも取り組んでいる。
08年のPMFオーケストラ演奏会“ハッピー・バースディ!バーンスタイン生誕90年~ガラ・コンサート”に出演。バーンスタイン作曲の《交響曲第2番「不安の時代」》を尾高忠明指揮で演奏。この曲の演奏中に携帯電話の音が客席から響いたが、小曽根はその音を即興演奏に取り込んで曲を弾き続けた話は今や有名なエピソードとして知られている。
国内外の主要オーケストラと共演してクラシック界でも活躍。2014年2月にはニューヨーク・フィルのアジアツアーで初の日本人ジャズピアニストとしてソリストを務めた。平成25年度文部科学大臣賞受賞。国立音楽大学教授。

札響とは何回か共演を重ねているが、11年6月の定期において尾高忠明指揮で「ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番」を演奏。(*この時のトランペット奏者にナカリャコフが予定されていたが変更になった。昨日ナカリャコフはKitaraのステージに上がっていた。偶然とは言え、ピアニストとトランぺッターとの擦れ違いは不思議な現象。)

モーツァルト(1756-91)のピアノ協奏曲は第20番~第27番が有名であるが、「第9番」は演奏会では聴いたことがなかった。田部京子のCDは所有していて聴くことはある。彼の初期の作品群のひとつ第9番は71年に作られ、献呈者のフランス人の名をとって「ジュノーム」の愛称がある。
第1楽章がオーケストラで始まるや否や独奏ピアノが登場するのは当時では珍しい。明るい曲がアレグロで展開される。第2楽章はゆったりとして荘重な趣きが感じられた。第3楽章のプレストとメヌエットの対比が印象的。華やかな雰囲気に包まれ、カデンツァも魅力的。鍵盤奏者であるジュノームに触発されて新たに取り組んだ作品と言われる。

小曽根が初めて尾高&札響と演奏した2003年の曲が「ジュノーム」だったが、“緊張して夢中で終わってしまった”と語っていた。今夜の演奏は当時から10年も経ち、クラシックの経験も積み重ねて、楽しんで余裕のある演奏が出来たようであった。小曽根は“マエストロ尾高のお蔭でクラシックの世界に入ることになった”と言う。
オーケストラの楽器編成は管楽器はオーボエ2本、ホルン2本と弦5部。聴衆の盛大な拍手に応える中で、ピアノの響板を下ろしてオーケストラの奏者の顔が見えるように配慮する心遣いは普段のコンサートでの場を踏んだピアニストの姿を見た思いがした。

休憩前のプログラムに小曽根のプレゼント曲として「MO'S NAP」が演奏された。クラリネットとピアノのための弦楽合奏曲(クラリネット独奏は札響首席の三瓶佳紀)。

プロコフィエフ(1891-1953)はピアノ協奏曲を5曲作曲したが、「第3番」が最も有名である。また、難曲としても知られる。エル・バシャとアシュケナージのCD全集はあるが、演奏会では20002年のPMFでアルゲリッチの演奏を聴いた記憶しかない。

「ピアノ協奏曲第3番」はロシア革命の翌年1918年の亡命以前に着手され、亡命中の21年に完成された。ピアノの名手であったプロコフィエフに相応しく、ピアノの技巧がふんだんに駆使されている。21年、シカゴでプロコフィエフ自身の演奏でシカゴで初演。翌22年から20世紀のクラシックとして広く受け入れられた。第1楽章の序奏ではロシアの哀愁漂うメロディをクラリネットが奏でる。ピアノが物凄いテンポで若々しい情熱を歌い上げる。第2楽章は牧歌的な主題と5つの変奏とコーダ。現代的な澄み切った清楚さが感じ取れた。第3楽章はピアノの不協和音の嵐の中、フィナーレへと向かう。終結部が何と言っても迫力があって最も印象的。最終楽章にもプロコフィエフの独特のリズム感、現代感覚が溢れているように思った。ロシア亡命の途中で日本に滞在した折に聞き覚えたのか、「越後獅子」のようなメロディが現れているのも面白い。新古典主義や民族主義などいろいろな要素が混じって、何となく調和している事で人気の作品になっているのかも知れない。

小曽根の超絶技巧の演奏は素晴らしかった。鍵盤の上を走る指の動きは正にジャズで培った能力を遺憾なく発揮していた。クラッシックの演奏家でも簡単には演奏できそうにもない難曲を見事に弾き切った。もはやジャズピアニストという範疇を越えた音楽作り。立派なクラシック音楽の演奏家と言えよう。
演奏終了後の聴衆の反応はクラシックの普通の演奏会の万雷の拍手と歓声とは一味違っていた。客席は満席状態ではなかったが、小曽根のコンサートを楽しみにしてきた人々の感動がホールを包んだような感じがした。曲のフィナーレが感動的で聴く者や観る者の胸を打つ心に響くものであった。とにかく、小曽根が挑んだ新しい試みは成功裏に終った。

マエストロ尾高も最後の札響音楽監督のシーズンでいろいろなお土産を用意周到に準備してきたことを今日の演奏会を通しても感じた次第である。

ソリストのアンコール曲は「オスカー・ピーターソン:自由への讃歌」。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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