大谷康子 ヴァイオリン・リサイタル

2014年6月28日(土) 19:00開演  札幌コンサートホール Kitara小ホール

本日札響の昼公演のコンサートがあって、一日に2つのコンサートをスケジュールに入れることは珍しい。前日の夜に河村尚子のリサイタルの予定が入っていたので、札響の振り替えも出来なかった。土曜の夜開催の大谷康子のコンサートを聴くがどうか迷っていた。彼女のコンサートは一度聴いてみたいと思ったので思い切ってチケットを購入した。

後で、毎年6月の最終土曜日の夜に開催されている会合の案内状が届いたが、今年はパーテイを欠席して、日本を代表するヴァイオリニストの一人である大谷康子のリサイタルを初めて聴いてみることにした。

大谷康子(Yasuko Ohtani)は1955年、愛知県生まれ。東京藝術大学卒業、同大学院博士課程修了。72年、日本学生音楽コンクール第1位。76年、シェリング来日記念コンクール第2位。在学中からソロ活動を始め、81年に東京シティフィルハーモニック管弦楽団のコンサートマスターに就任。90年、ウィーン、ローマ、ケルン、ベルリンなどでリサイタルを開催。95年4月より東京交響楽団のコンサートマスターとなり、現在も同響のソロ・コンサートマスターとして活躍。東京音楽大学教授として後進の指導にもあたっている。

藤井一興(Kazuoki Fujii)は1955年、東京生まれ。東京藝術大学で安川加壽子に師事、3年在学時にフランス政府給費留学生として渡仏。パリ音楽院とエコール・ノルマル音楽院に学び、オリビエ・メシアン、イヴォンヌ・ロリオなどの教えを受けた。76年、オリヴィエ・メシアン国際ピアノ・コンクール第2位(1位なし)。77年にパリ・デビューを飾る一方で、数々のコンクールに挑戦し第1位の輝かしい成績を収め、主要な国際コンクールでは、81年のマリア・カナルス国際コンクールで第2位(1位なし)。近現代のフランス作品を軸に、世界各地でリサイタルを開催し、室内楽での活動の他に、フランスや日本での録音など幅広い活動を行っている。作曲家としても多くの作品が国際音楽祭などで演奏・録音されている。
Kitaraには08年、09年と2度出演。08年は〈メシアン生誕100年記念〉で野平一郎と共演して連弾曲と2台ピアノ曲を演奏。09年は〈Kitaraあ・ら・かると〉でピアノ小品を弾いてベーゼンドルファーとスタインウェイの弾き比べを行なった。両方の演奏会で強烈な印象を残した。

〈前半のプログラム〉
 クライスラー: 愛の喜び
 モーツァルト: ヴァイオリン・ソナタ第28番 ホ短調 K.304
 ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 Op.24 「春」より第1楽章
 R.シュトラウス: ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18より第3楽章
 
ウイーンの薫り高いヴァイオリンの名曲からスタート。モーツァルトのソナタは彼の母が亡くなった年でもあったせいか、彼には珍しい短調の調性でメランコリーな曲。大谷はトークが得意そうで、早口で雄弁に語りながら演奏を展開した。ベートーヴェンの有名なソナタは第1楽章のみで物足りなかった。春の微風が漂う演奏技法の説明は興味深かったが、、、。R.シュトラウスのソナタは聴くのは初めてだったかもしれない。聴き慣れたヴァイオリン・ソナタとは異なる音の響きで高度なテクニックが必要な曲と解った。演奏が難解なようだが聴いていて面白かった。全楽章を聴いてみたい気がした。
前半のプログラムにソナタを入れて重みが出るかと予想したが、トークが多すぎて充実感が湧かない軽めのコンサートの感が拭えなかったのは残念であった。
トークも巧みで、聴衆を楽しませる雰囲気を作って、プログラムには無かったが前半の締めに「ブラームスのハンガリー舞曲第5番」を演奏。

〈後半のプログラム〉
 ドビュッシー: 月の光 (ピアノ・ソロ)
 中野稔: ロンド
  〈お楽しみコーナー〉
 アラール: 椿姫ファンタジー より “乾杯の歌”
 サラサーテ: ツィゴイネルワイゼン

ピアニストの藤井一興はパリ高等音楽院を作曲科、ピアノ伴奏科ともに1等賞で卒業したことでも知られている。ドビュッシーの名曲の演奏後、フランス人も日本人も月をめでる国民として知られていると話しながら、各地を訪ねてこの曲を好んで演奏している様子を語った。札響の元チェロ首席奏者の土田英順と北海道のいたるところを演奏して周ったと懐かしそうに話していた。本格的なピアニストとしても有名であるが、いろいろな場面で気軽に活躍しているようである。

大谷は日本各地の病院・福祉施設などで演奏を行なっているが、筋ジストロフィ―患者の作曲家・中野稔(1961- )に出会い、楽譜を託された作品を機会あるごとに演奏していると言う。

〈お楽しみコーナー〉でイタリアで演奏して大評判となった「外山雄三:“日本民謡による組曲”から第2楽章」、「“アナと雪の女王”の歌から」、映画音楽「慕情のテーマ」、「“アルゼンチンタンゴ”から」の4曲。
彼女は幅広い音楽活動を行なっている。クラシック音楽以外に色々な音楽に出会って人々に音楽を楽しんでもらうために演奏しているクラシック音楽の垣根を越えた活動の証のコーナー。

“乾杯の歌”は楽譜がなくて、彼女だけが演奏していると言う。凄い勢いで一気に弾きぬく、高い演奏技術が必要と思われる一分半余りの曲。

最後はヴァイオリンの名曲中の名曲。
後半のプログラムは気軽にしたためか作品番号など一切なしのプログラム。

アンコールに応えて、「モンティ:チャルダッシュ」をヴァイオリンを弾きながら1階の客席を周るサービスぶり。ピアノ伴奏も呼吸を合わせるのに簡単ではなかったと思われる。

最後の振る舞いなど普通の演奏家ではなかなか出来ないことを気軽に行えるのも才能かも知れない。彼女のトークや振る舞いに好感を持ってクラシック音楽に親しむ人々がきっと増えているに違いない。今晩のコンサートを楽しんだ人も多かったかもしれない。
ただステージで支援してくれている団体や会社の名前を挙げて感謝の気持ちを述べたり、過剰な宣伝活動のような言葉には場違いの感も抱いた。とにかく、トークが余りにも多すぎた印象を受けた。
人それぞれの楽しみ方があるので、コンサートの在り方も色々あって良い。Kitaraで本格的なヴァイオリン・リサイタルを期待していた一個人としては充分な満足感を味わえなかったというのが正直な感想である。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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