樫本大進 & コンスタンチン・リフシッツ

樫本大進(Daishin Kashimoto)は1979年、ロンドン生まれ。7歳でジュリアード音楽院のプレカレッジに入り、その後リューベックでザハール・ブロンに師事。93年メニューイン国際コンクール(ジュニア部門)第1位。94年ケルン国際コンクール第1位、96年クライスラー国際コンクールとロン=ティボー国際コンクールで第1位(史上最年少)と輝かしいコンクール歴を誇る。20歳からフライブルク音楽院で元ベルリン・フィル・コンサートマスターのクスマウルに師事。以後、ソリストとして国際的に活躍。(日本では、96年紀尾井ホールでのリサイタルでデビュー。)10年にベルリン・フィル第1コンサートマスターに就任して音楽ファンを驚かせた。

Kitaraに初登場したのが98年10月。セミョン・ビシュコフ指揮ケルン放送交響楽団と「メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲」を共演した時のワクワクした高揚感は今でも印象に残っている。
2度目は02年2月。ウラディミール・フェドセーエフ指揮ウィ―ン交響楽団と「ブラームスのヴァイオリン協奏曲」を共演。フェドセーエフとは96年に大阪フィルと97年にはモスクワ放送交響楽団と日本で共演を重ねていた。
3度目はリフシッツとのデュオ・リサイタルで02年11月。当時のプログラムによると、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第32番、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番などを弾いた。

コンスタンチン・リフシッツ(Konstantin Lifschitz)は1976年、ウクライナ生まれ。5歳でグネーシン特別音楽学校に入学。13歳でモスクワ音楽院でデビューリサイタル。90年から国内外での演奏活動が本格化して、指揮者のスピヴァコフとの日本ツアーのソリストとして初来日。モスクワ・フィルやサンクトペテルブルグ・フィルとヨーロッパ・ツアーでも活躍。リサイタルのライブCDが96年に米国で話題となり世界的にも注目された。96年アルゲリッチの代役としてクレーメル、マイスキーと共演して世界的評価が高まった。

桁違いの才能で世界の注目と期待を担っていた若き俊英が渡り合う初共演も聴衆の期待度が高かった。2回続いたオーケストラとの共演の後だけに新鮮な印象のデュオ・リサイタルとなった。

次に樫本の演奏を聴いたのは07年9月。小泉和裕指揮東京都交響楽団 札幌特別公演で「ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲」。3回のオーケストラ演奏で3大ヴァイオリン協奏曲を一人の演奏家で聴いたのは偶然ではあるが結果的に珍しい。この頃、樫本がチョン・ミョンフン指揮シュタ―カペレ・ドレスデンと録音した「ブラームスの協奏曲」を購入して、時々耳にする。

樫本は07年から国際音楽祭を毎年開催して来日していることもあって、Kitaraでの演奏会の機会も増えてきた。
直近で聴いたのは10年3月の無伴奏ヴァイオリン・リサイタル。
DAISHIN plays BACH のタイトルで、札幌では「パルティ―タ第2番・第3番、ソナタ第2番」。CDでクレーメールの演奏を聴いたりしているが、世界最高レヴェルのヴァイオリニストによる生のオール・バッハ無伴奏ヴァイオリン曲。このバッハの名曲を集中力を欠かさずに聴けて充実感を味わったことを今でも思い起こすことができる。

それから4年。12年ぶりの樫本とリフシッツの共演。
2014年4月25日(金)19:00開演 札幌コンサートホールKitara大ホール

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4番 イ短調 Op.23
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Op.78「雨の歌」
 ベートーベン:ヴァイオリン・ソナタ第10番 ト長調 Op.96

ベートーヴェンはヴァイオリン・ソナタを10曲作っている。1798年に完成した「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番~第3番」は作品番号が12で一まとめになっている。第4番と第5番は1800年の作曲で作品番号が23と24である。1802年完成の第6番~第8番は作品番号は30でやはり一まとめ。有名な「第9番クロイツェル」が1803年の作品。それから約10年後の1812年の42歳の時に第10番を完成してヴァイオリン・ソナタの作曲には終止符を打った。

全10曲の中で「第5番」と「第9番」には、それぞれ「スプリング」、「クロイツェル」のニックネイムが付いていて最も親しまれており、リサイタルでは演奏機会が断然多い。今回のように定番が入っていないリサイタルは極めて珍しい。私自身余り記憶にない。それだけに今回のコンサートには却って期待していた。
日本で通常「ヴァイオリン・ソナタ」と呼んでいる曲で、私所有のベートーヴェンの「第5番・第9番」のCDでも、演奏者は「オイストラフとオポーリン」、「グリューミオとアラウ」、「シェリングとルービンシュタイン」、「クレーメルとアルゲリッチ」などの組み合わせである。ピアノとヴァイオリンの各部門で世界トップの演奏者がペアを組んでいる場合が多い。

ベートーヴェンは作曲者の曲名からも判るように「ヴァイオリン」と「ピアノ」を対等にして作曲している。ピアノが陰の楽器ではない。モーツァルトの曲についても同じことが言えよう。パガニーニやクライスラーのヴァイオリンの技巧をより生かしたヴァイオリン曲とは根本的に違うと思っている。
本日の演奏でも樫本とリフシッツの対等の演奏が繰り広げられた。これが最も印象に残ったことである。ソリストとして活躍していた時と多分、オーケストラのコンマスになってからのコンサートでは彼自身もこのことを意識しているのではないだろうかと考えてみたりした。それぐらい、自分が目立って演奏するより、あくまで調和を心がけて音楽つくりをしている姿に接した。

14年2月に発売された彼らの「ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全集」を購入して聴き始めたが、なかなか良い曲ばかりである。今迄「第6番・第7番・第10番」が入ったCDは持っていなかった。
「第10番」はベートーヴェンが最後のヴァイオリン・ソナタとして集大成の作品にしようとした意気込みが感じられて重厚な作品に仕上がっている印象を受けた。

ブラームスの「雨の夜」はより親しまれている曲で、ヴァイオリンがリードする場面が少しは多いかなと思った。

アンコール曲は「ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第3番 Op12-3 第3楽章」。アンコール曲も含めて地味な曲のプログラムの割には客の入りは多かったのではないだろうか。3階席と2階P席は発売されなかったが、9割程度の客席が埋まり1300名弱の聴衆がベルリン・コンサートマスターの樫本大進のコンサートに聴き入った。コンスタンチン・リフシッツの見事な演奏に鮮烈な印象を受けた人も多かったに違いない。全体的に派手さはないが重厚感のある演奏会であった。







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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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