METライブビューイング2013-14 《イーゴリ公》 & 《ウェルテル》

MET Live Viewing 2013-14 第6作 ボロディン 《イーゴリ公》
先週、ボロデイン《イーゴリ公》を観てきた。ロシアでは定番のオペラと言われるが、アメリカでは馴染みの作品ではなく、METではほぼ100年ぶりの上演だったそうである。ロシア語上演。
「だったん人の踊り」は有名な曲でしばしば聴く機会があるが、オペラ作品の中では親しんでいないので鑑賞してみることにした。

ロシア五人組の作曲家の一人であるアレクサンドル・ボロディン(1804-57)は化学者であったが作曲活動も行った。彼の唯一のオペラ《イーゴリ公》は未完成のまま、作曲者が亡くなってしまったので、彼の友人のリムスキー=コルサコフとグラズノフが補筆して完成された。1890年にサンクトペテルブルグで初演された。
「12世紀キエフの王イーゴリ公がホロヴェッ人(=だったん人)討伐に向かうが敗北し捕虜となる。最後には脱走を果して故国に帰還するという英雄劇」

時代を19世紀に移して新演出で上演。イーゴリ公の心理描写に重点を置いた演出。舞台とセット映像がユニークであった。オペラに詳しくないので出演歌手の名前は初めて聞くものばかりだった。ただ、指揮者はジャナンドレア・ノセダで有名なイタリア人指揮者。ゲルギエフの薫陶を受け、ロシアの作品にも通じているらしい。2007年からトリノ王立歌劇場の音楽監督を務め、10年には日本でも同歌劇場管を率いてイタリア・オペラの上演を行っている。世界のメジャー・オーケストラとも数多く共演し、N響にも客演指揮をしている。

ロシアのバス・バリトンのアブドラザコフはイーゴリ公の苦悩を素晴らしい歌声と演技で表現。何と言っても圧巻だったのはコーラス。110名の合唱団のコーラスは素晴らしかった。普通は第2幕で演奏される「だったん人の踊り」が第1幕で歌われた。舞台いっぱいに咲き乱れる12,500本もの真っ赤なケシの花畑で踊る大勢のダンサーの踊りがコーラスで展開された。イーゴリ公の至高の境地か? イーゴリ公の理想郷が幻想となって表現されているのかなと思った。

一人の人間としてのイーゴリ公を掘り下げて描いた作品。現代社会でも通じる人物像が描かれており、最後の場面で英雄が再起を目指す場面は観る者の心に響く。歴史絵巻と心理劇を組み合わせた演出は興味深かった。

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MET Live Viewing 2013-14 第7作 マスネ 《ウェルテル》

今日4月16日はゲーテの文芸大作「若きウェルテルの悩み」をフランスの作曲家マスネ(1842-1912)がオペラ化した作品を鑑賞してきた。フランス語上演。
フランスの作曲家のオペラ作品として人気の高いのが「マスネのウェルテル」の他に「ピゼーのカルメン」、「グノーのフアウスト」、「ドビュッシーのぺリアスとメリザント」、「オッフェンバックのホフマン物語」等があげられる。
2011-12シーズン第6作に「フアウスト」がMETで上演されて観た。

マスネのオペラは21012-13シーズン第10作「マノン」をネトレプコ主演で昨年鑑賞したばかり。マスネは約40ものオペラを作って19世紀末から20世紀初頭にかけて大変人気を博したらしい。現在では上記2作品の他にヴァイオリン独奏曲として有名な《タイスの瞑想曲》が間奏曲に使われる「タイス」も知られている。

オペラ《ウェルテル》は登場人物が少なく、舞台装置も大きくなくて上演できる、どちらかといえば小劇場向けの作品と言えるかも知れない。ストーリーは永遠の恋の悲劇。18世紀末のドイツで暮らす詩人ウェルテルは大法官の令嬢で従妹のシャルロットに一目惚れする。彼女には親が決めたいいなづけのアルベールがいた。アルベールとシャルロットが結婚した後も、ウェルテルは恋の炎に身を焦がし彼女のことが諦めきれない。クリスマスイヴの夜、シャルロットは彼の手紙に心が揺らぐが、愛を告白する彼を突き放してしまう。絶望したウェルテルは自分の部屋で銃を手にして自殺を図る。シャルロットが瀕死のウェルテルを発見するが、彼は彼女に抱えられて静かに息を引き取る。

報われない恋に身を焦がす青年の苦悩をヨナス・カウフマンが情緒たっぷりに見事な歌唱と演技を披露する。カウフマンは「フアウスト」と「パルシファル」に続いてMETビューイングで観るのが3回目だが、毎回ただ感動するのみ。歌唱力も演技力も凄い。他のオペラ歌手の追随を許さない程の圧倒的な印象を与えてくれる。幅のある高音域の歌声や声量は聴き惚れるばかりであるし、色々な感情表現が実に素晴らしい。第3幕での「春風よ、何故に私を目覚めさせるのか?」が印象的なアリア。

フランスを代表するメゾソプラノのソフィ・コッシュの名は初めて聞くが、シャルロット歌いとして名高いそうである。カウフマンとこの役で共演するのは、パリ、ウィ―ンに続いて今回が三度目と言う。彼女のMETデビューとなったが、コッシュもカウフマンと堂々と渡り合って、後半の全身全霊で熱唱する二重唱は本当に素晴らしくて感動的であった。

フランス語上演で言葉を大切にして、音楽が言葉をかき消さないような配慮からか、オーケストラも室内楽的だったり、ソロ演奏があったりして、歌手を前面に出す音楽作りのようであった。
映像やフレームの効果的な使用など、新演出での工夫も印象に残った。


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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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