デイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

〈Kitaraワールドオーケストラシリーズ〉

チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団がKitaraに初登場したのは1999年6月。Kitaraスイスの名門オーケストラシリーズの一環で、99年5月のスイス・ロマンド管弦楽団に続いての来演であった。
ディヴィッド・ジンマン指揮で当時のプログラムは次のようになっていた。オネゲル:《パシフィック231》-交響的運動第1番、メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏/竹澤恭子)、ベートーヴェン:交響曲第7番。当時、ジンマンとトーンハレはベートーヴェンの交響曲全曲録音で話題を集めていて日本ツアー8公演の全てでベートーヴェン・プログラムが入っていた。自分も第7・8番のCDを何回も聴いていたのを今でも思い出す。
 
最近、ジンマンがN響と共演するプログラムをテレビで数度見て懐かしい思いをしていた。今日は15年ぶりに同じコンビで戻ってきたのだから何か感慨深いものがある。

David Zinmanは1936年生まれのアメリカ出身の指揮者。偉大な指揮者ピエール・モントゥーの助手をつとめた後、67年フィラデルフィア管を振ってアメリカ指揮デビュ―して以来、世界のメジャーオーケストラを客演指揮してキャリアを積んだ。1995年チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の音楽監督に就任してから現在の任にある。
同管と録音を数多く行い、海外公演でも注目を浴びて今日に至る。

1868年創立のチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団はスイスで最も古い歴史を持つオーケストラ。1965年ルドルフ・ケンプが首席指揮者に就任してヨーロッパ有数のオーケストラになったと言われる(~72)。その後ゲルト・アルブレヒト(75-80)、クリストフ・エッシェンバッハ(82-86)、若杉弘(87-91)、クラウス・ペーター・フロール(首席客演91-95 *彼は12月の札響定期に出演予定)に続いて、95年からディヴィッド・ジンマンが音楽監督兼常任指揮者を務めている。日本で人気の楽団である。

ギドン・クレーメル(Gidon Kremer)は1947年、ラトヴィア生まれ。モスクワ音楽院でダヴィッド・オイストラフに師事。69年パガニーニ国際コンクール、70年チャイコフスキー国際コンクールで優勝。現在では世界トップのヴァイオリニスト。独特な音楽活動で唯一無二の存在。現在、ソリスト活動は行っていないようで、自ら立ち上げた「クレメラータ・パルティカ室内管弦楽団」との共演が目立ち、室内楽での活躍が多い。Kitaraに数回登場しているが、初めて聴いたのが2001年5月。同室内管とハイドン、モーツァルト、シューベルトの曲も演奏したが、シュニトケなど現代曲を紹介していた。ヴァイオリンが表に出て演奏していたので、その技巧に満足感を得たのは覚えている。
彼のCDはバッハやベートーヴェンものでしばしば聴いているが、近年の演奏会ではロシアや東欧の現代作曲家たちの作品を多く」取り上げているように思われる。2011年4月の「ギドン・クレーメル・トリオ」の公演が中止になって残念であったが、久しぶりに、しかも馴染みのヴァイオリン協奏曲を聴けるのを楽しみにしていた。

〈本日のプログラム〉
 R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28
 モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調「トルコ風」K.219
 ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 作品98

今年はR.シュトラウス(1864-1949)の生誕150周年に当たるので、彼の作品がコンサートなどで取り上げられる機会が増えるかも知れない。
シュトラウスのオーケストラ作品には《交響詩》が多い。14世紀のドイツに実在したと言われるいたずら者、オイレンシュピーゲルを題材にして、ユーモアとアイロニーに溢れた世界を描いた。いたずらを重ねた主人公が最後には捕えられて絞首台に送られてしまう。しかし、彼は永遠に物語の中で生きている。
4管編成で約100名の大管弦楽。ホルン、クラリネットを中心とした管楽器や打楽器が活躍して、とても面白かった。日本人のクラリネット奏者(Junko Otani)が大活躍したが、他に日本人と思われる楽団員が6名もいた。

モーツァルト(1756-91)全5曲のヴァイオリン協奏曲の中で最も親しまれている。第1楽章は堂々とした音楽。第2楽章は緩徐楽章。第3楽章では甘美なメヌエットと勇ましいトルコ風の行進曲が対照的な音楽。5曲のヴァイオリン協奏曲が全部モーツァルトが10代の頃に書かれたというのには改めて驚く。
弦楽器奏者28名、管楽器奏者4名という小編成のオーケストラは意外であったが、もちろん演奏には何の違和感もなく、クレーメルの楽譜を読みながらの丁寧な演奏を堪能した。一味違う充実感を得たのはオーラが発しているソリストの所為だったのかも知れない。
ソリストのアンコール曲はイザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番 第1楽章 オーロラ。弓を弾きながら、同時にピッチカート奏法で音を出すのは凄い技法。二つの楽器を操っているように思えた。

ブラームス(1833-97)の交響曲は4曲とも親しまれているが第1番、第4番の人気度が高い。第1番の人気度が断然上回ると思うが、この第4番と作曲の過程と内容に好みが少し左右されるのではないかと思っている。
この作品は彼が52歳の時の作品であるが、まるで晩年の作であるかのように回顧的で人生の最後を迎えている風情が漂っていると言われることがある。作曲技法的には円熟した作品と評価されている作品。
今日は久しぶりで指揮者の真正面のP席から鑑賞。ジンマンのダイナミックで安定感のある指揮ぶりを十分に心に焼き付けた。ジンマンとトーンハレ管との最後の国際的ツアーとなるので、指揮者自身も感慨深い想いで指揮している様子が聴衆にも伝わってきた。
演奏終了後の万雷の拍手は割れんばかりであった。客の入りは6割程度で多くはなかったが、いつもより幅広い年齢層の聴衆が目に付いた。ジンマン自身もオーケストラの演奏に最後は拍手を送っていたので満足したようだった。

オーケストラのアンコール曲は2曲。「ブラームスのハンガリー舞曲第1番」と「スイス民謡 エヴィヴァエソチ」。
最後の曲を演奏する前にジンマンが客席に向かって曲名を言ったのだと思うが聞きとれなかった。でも、親しみが込められての発声であると感じた。彼の日本への好感度は高いらしい。「スイス民謡」はいろいろな楽器が特徴を出して演奏された。特に打楽器奏者が自分自身の膝を使っての演奏に客席が湧くほど盛り上がった。最後を飾るに相応しい選曲となって楽しくて温かい雰囲気が会場に広がった。
楽団員がステージを下がるまで拍手を送る客も多数いた。中には客席の女性と握手をしている打楽器奏者もいた。一番最後にジンマンが再びステ―ジに出てきて別れを惜しむ場面はなかなか良かった。

帰宅して1999年にKitaraで演奏した楽団員をプログラムで大雑把に確認してみたら、30名が重複していた。(今回のプログラムは日本公演をサポートするJTグループが無料で入場者に配ってくれたようで有り難かった。)彼らに15年前のKitaraの音響との違いを直接に訊いてみたい気がした。多分Kitaraの職員が印象を聞いていることを期待する。

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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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