前橋汀子 バッハ無伴奏ソナタ&パルティータ全曲演奏会

3月15日のマリア・ジョアン・ピリス、17日の藤村実穂子のコンサートから約3週間が経って、今日4月5日は久しぶりのKitaraでのコンサート。実はこの期間中は南米旅行に出かける計画があって、コンサートを聴く予定は入れていなかった。
3日に帰国したばかりで身体が充分に回復していなかったが、何とかコンサートには出かけた。体調が余り優れない時でも音楽を聴くとリフレッシュできる経験を積み重ねているので、クラシック音楽の私の生活に果たす効果は絶大である。

前橋汀子のコンサートは最近は“アフタヌーン・コンサート”として開催されていて、曲目が小品の演奏が多かった。親しみ易いとは言え、何となく物足りなかった。昨年の秋のコンサートの折に、「バッハの無伴奏全曲演奏会」のチケットを早々に買い求めて、本日の演奏会を楽しみにしていた。

〈オール・バッハ・プログラム〉
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番 ト短調 BWV1001
 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番 ロ短調 BWV1002
 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004
---------------- 休      憩 -------------------
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ短調 BWV1003
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ハ長調 BWV1005
 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ長調 BWV1006

J.S.バッハ(1685-1750)は18歳の時にワイマール宮廷のヴァイオリニストとなり、一旦他に移って5年後にワイマールに戻り宮廷楽師兼オルガニストとなった。1717年にケーテンの宮廷から楽長に拝命されてケーテンへ赴任。1717-1723年の《ケーテン時代》と呼ばれる時期に「ブランデンブルグ協奏曲」、「管弦楽組曲」等が作曲されている。「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ及びパルティータ6曲」は「無伴奏チェロ組曲」と共に1720年の作品である。

バッハの「ヴァイオリン協奏曲」は演奏会で聴く機会も多く親しんでいる。「無伴奏のパルティ―タ」はクレーメルのCDで良く聴いていた。ヒラリー・ハーンのCDも魅力的である。演奏会ではアンコール曲に「パルティ―タ第2番シャコンヌ」が取り上げられて耳にすることもある。

「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」や「パルティ―タ第1番」をコンサートで聴いた記憶は鮮明でない。「無伴奏ソナタ」はエネスコの1948年頃録音の古い音源のCDが手元にあるくらいでそれほど親しんでいない。そんな訳で今回のプログラムはとても魅力的で楽しみにしていた。

3つのソナタはとても純粋な感じの曲で聴きやすい。緩ー急ー緩ー急の4楽章構成。典型的な「教会ソナタ」と呼ばれる。各曲の第2楽章がフーガであるのがバッハの特徴かと思った。

「パルティータ第1番」はアルマンド、クーラント、サラバンド、ブーレという4つの古典舞曲の組曲。軽快で躍動感に富むが、荘重な感じも持つ。

「パルティータ第2番」は全6曲の中で最も広く親しまれている曲。アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ、シャコンヌの5楽章構成。4つの楽章の後の重厚長大な「シャコンヌ」が有名。この壮麗な第5楽章は全曲の約半分の演奏時間を要し、高度な演奏テクニックが必要な難曲としても知られる。しばしば単独で演奏され、アンコール曲として弾かれることも多い。又、オーケストラ曲やピアノ曲に編曲されていて演奏される機会が極めて多い。

「パルティータ第3番」は他の2曲のパルティータとは違って前奏曲と6つの舞曲から成る。プレリュード、ルール、ガヴォットとロンド、メヌエットⅠ、メヌエットⅡ、ブーレ、ジーグの7楽章構成。全体に明るい雰囲気の軽快な作品で、第2番と並んで広く親しまれている。

パルティータ(組曲)はドイツのアルマンド、フランスのクーラント、スペインのサラバンド、イギリスのジーグなどのヨーロッパ諸国の色々な舞曲を連ねて「室内ソナタ」の形式になっている。

前半75分、休憩20分、後半70分と3時間にも及ぶコンサート。午後3時開演で終了時間が6時。
前橋汀子の驚異的な集中力と体力には感服した。一応ステージの譜面台に楽譜を置いてあったが、楽譜は開かずに前半、後半の各3曲を一気に弾き切った。伴奏を伴わない一挺のヴァイオリンのみを用いながら、まるで伴奏つきの多声的な音楽が展開された。
全身全霊を注いで奏でた前橋の渾身の演奏に対して、珍しく予備席まで使われて小ホールの客席を埋めた満員の聴衆から演奏終了後には万雷の拍手がおくられた。“ブラボー”の声も上がって、アンコール曲を期待した人もいたようだったが、今日のプログラムの内容では無理であった。
家路に着く人々の口から洩れる感動の言葉が耳に心地よく響いた。私自身も充実感を味わえ、蓄積していた旅の疲労感も解消できた気がした。



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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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