マリア・ジョアン・ピリス ピアノ・リサイタル

ピリスのコンサートは4回目になるが、前回の《ピリス&メネセス デュオ・リサイタル》を除いて、過去2回は《ピアノ・リサイタル》と銘打って開催されてきた。1回目はルークス・ミュラー(テノール)、2回目はパヴェル・ゴムツィアコフ(チェロ)との共演であった。
彼女はオーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン *現在、関西フィルの首席客演指揮者)とのデュオが世界で評判を呼び、最近ではアントニオ・メネセス(チェロ)を始めとする巨匠や若い音楽家とも共演。文字通りのピアノ・リサイタルは11年6月に予定されていたが、残念なことに都合でキャンセルになっていた。そんなわけで、今回ソロ・リサイタルを聴くのは初めてである。
コンサートの案内に【16年振り、待望のソロ・リサイタルが遂に実現!】と書かれていたので、今迄ソロ・リサイタルは聴いていなかったのを改めて確認することになった。勿論、過去のコンサートでピアノのソロは聴いたことはある。

LPレコードやカセット・テープで音楽に親しんでいた私が、CDで専ら音楽を聴くようになったのが2000年になってからのことである。そのころCDショップで偶々手にしたのがピリスの「モーツァルトのピアノ協奏曲第20・27番」、「ショパンのピアノ協奏曲第1・2番」(2枚とも録音は77年)。当時は彼女の名はマリア・ジョアオ・ピリスと書かれていた。安価であったので何気なく購入したが、その後、とても有名な演奏家であることを知って何となく得をした気分になっていたものである。

彼女の演奏はスケールが大きくて派手な演奏というよりは、こじんまりとした感じだが奥行きの深い個性的な演奏を展開するように思う。このスタイルで世界のピアノ界のトップにいる存在感は凄い。ピリスはポルトガルに創設した芸術センターをスペイン、ブラジルにも拡げ、ピアニストや演奏家としての枠を超えた幅広い教育活動も行っている。人間的に素晴らしいピアニストだと思っている。
今回の日本ツァーで富山、大阪、福岡、東京、横浜を回って最後の公演地が札幌である。東京ではサントリーホールの他にヤマハホールでも公演があったのは、ピリスがヤマハ・ピアノを愛用しているからだろう。

2014年3月15日(土) 13:30開演。 札幌コンサートホールKitara 大ホール

〈プログラム〉
 シューベルト:4つの即興曲 Op.90, D899
 ドビュッシー:ピアノのために
 シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960

シューベルト(1797-1828)が30歳を越えたばかりの1827年に作曲した4曲から成る即興曲集。気のおもむくままに自由な形式で書かれた作品。「第1番」ハ短調は正に即興曲の名に相応しい曲。「第2番」変ホ長調は舞曲風の親しみ易い曲。「第3番」変ト長調は抒情味のある曲。「第4番」変イ長調は印象的なメロディが出てくる、品のあるフィナーレ。

ドビュッシー(1862-1918)のこの曲名は初めて聞く。「プレリュード」、「サラバンド」、「トッカータ」の3つの舞曲から成る。ドビュッシー特有のリズムと音色で色彩感豊かで、水面を踊るように進む金魚が目に浮かんできた。音が躍っている感じで、躍動感に溢れる絵画的な作品。ドイツ音楽とは違う、ラヴェルやフォーレなどのフランス音楽の特徴が出ていると思った。

シューベルトは31歳で短い生涯を終える1828年には「交響曲第9番」や「ピアノ・ソナタ第19・20・21番」など、迫りくる死期を前にして夥しいほど多くの作品を書きあげた。
「第21番」はここ数年よく聴く機会があって、曲の偉大さが解ってきたように思う。テーマの繰り返しが多く、とにかく長大である。特に第1楽章は長い。讃美歌風の主題がいろいろな調性で繰り返し現れる。第2楽章は緩徐楽章でメランコリックな表情を持つ。前年に書かれた《冬の旅》を思わせる叙情が漂う。第3楽章は明るい雰囲気を持つスケルツォ。フィナーレの第4楽章は即興曲風で自由な展開。明暗が交互に現れて、表情豊かで心の奥深くに響き渡る。
ピリスは細やかな想いを淡々と綴って歌い上げていった。美しい抒情性豊かな曲が静かに繰り広げられる演奏は確かに心地よく聴衆の心に響いた。

P席と3階の客席は売りに出されなかったが、1・2階を埋めた幅広い年齢層の約1200名の聴衆は世界的に名高いピアニストの奏でる音楽を比較的に静かに聴き入っていた。プログラムが馴染みのある有名な曲というわけではなかったので、聴衆の感動が直接に伝わるほどではなかった。勿論、演奏終了後の盛大な拍手はいつもと変わらない。

アンコール曲は「シューマンの《森の情景》より第7曲〈予言の鳥〉」
《森の情景》は森の動物や花への憧れや畏れを歌った9曲の作品集で、〈予言の鳥〉は《森の情景》の中で最も有名な曲。内田光子のCDにこの作品集が収められていて半年前に購入したばかりで数回耳にした。

今日の午前中はKitaraボランティアとしてKitaraの大会議室で会員向けのダイレクト・メールの発送作業を行った後、開演前の時間を中島公園内にある北海道立文学館で過ごした。時間を有効的に使えて、久し振りに心が満たされた一日であった。





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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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