クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル 2013

クリスチャン・ツィメルマン(KRYSTIAN ZIMERMAN)は1956年ポーランド生まれ。75年、第9回ショパン国際コンクールに史上最年少の18歳で優勝。一躍世界の注目を浴び、特に祖国ポーランドの期待を背負った。76年、ベルリン・フィルと共演以後、精力的な演奏活動を展開し、初来日は78年。80年には音楽界に身を置く人生に疑問を抱いて演奏活動を中断した。1年半後に演奏活動を再開して、世界のトップ・オーケストラとの録音も行なって、その録音が数多くの賞を受賞。以来、世界中の著名なオーケストラと共演し、定期的に来日公演も行っている。演奏会の回数を年間50回までにしているだけでなく、音楽家としてのキャリアに関わるすべてを自分でコントロールしている。

私が初めて聴いたのが03年Kitara初登場の年であった。03年は6年ぶりの日本ツアーで全国12公演。このツアー期間中に日本での100回目のリサイタルを迎えた。
札幌での演奏曲目は「ブラームスの6つの小品」、「ベートーヴェンのソナタ第31番」と「ショパンの即興曲第2番+ソナタ第3番」。
2度目に聴いたのは10年、ショパン生誕200年記念オール・ショパン・プログラムで「ノクターン第5番」、「スケルツォ第2番」、「舟歌」、「ソナタ第2番・第3番」。初めての時の印象が余り残っていないのが不思議なのだが、2度目のコンサートは最初から最後まで印象深かった。ツィメルマンは自前のピアノを海外ツアーに持ち歩くことで知られている。近年の日本での活動から判断すると、日本にピアノを常時保管しているのではとさえ思われる。今は行なっていないが、コンサートでの調律も以前は自分で行っていた時代もあったようである。完璧主義者で、マイクを用意して録音をしながら自分自身の演奏をチェックしている様子も前回は見られた。

本日1月16日のコンサートは当初13年11月20日の代替公演。ピアニストの急性腰痛症のため延期になっていたコンサート。
ベートーヴェン後期3大ソナタ
 ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 作品109
 ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 作品110
 ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111

50代のベートーヴェンによって書かれた3曲のピアノ・ソナタは晩年期の最後のソナタで傑作として名高い。深い広がりを持つ独創性と崇高な世界はピアニストにとって憧れの曲になっているのが解る。

第30番・第31番は共に抒情性豊かな作品で、それぞれの第2楽章はスケルツォ風で親しみ易い。第3楽章は共に重厚で独創性に富んでいる。

第32番はベートーヴェン最後のソナタであり、ベートーヴェンのピアノ音楽の集大成と言われている最も偉大な作品。ベートーヴェンの苦悩の人生で最後に精神が高揚して浄化されていく過程が巧みに表現されていると感じた。2楽章から成る珍しい楽章構成。
力強く緊張感に満ち溢れた第1楽章と、主題と5つの変奏によって苦難の人生の後にたどり着いた至高の世界が限りなく透明な美しい音楽で描かれる第2楽章とのコントラストが際立っている。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ32曲の中で俗称のある曲は親しんでいるが、後期のソナタの良さが解るようになったのは、つい最近である。

ツィメルマンは病み上がりで心配していたが、思ったより健康は回復していた様子だった。評論家との昨夏の対談で今回の後期三大ソナタの演奏には不安が付きまとっていたと言う。世界最高峰のピアニストにしても、そのような感情を抱くとは意外な感じがした。
演奏に当って楽譜をピアノの台に置いて時折譜面を自分でめくっていたが、暗譜はしていても慎重を期したのか理由は判らなかった。演奏中に左手が空いた時に指揮者がするような手の振りを偶々していたのが興味深かった。

今日の客の入りは1・2階の客席の9割程度の1200名ほどであった。落ち着いて、じっくり鑑賞している聴衆が大部分であった。熱狂的な雰囲気に包まれることはなかったが、演奏終了後に万雷の拍手が続いて暫く鳴り止まなかった。ツィメルマンはステージに何度も出て来て丁寧なお辞儀をして感謝の意を表したが、アンコール曲の演奏はなかった。彼自身もそれなりに満足できる演奏になったのではないか。華やかで大衆受けする曲とは違うので感動の伝わり方は人それぞれだろうが、静かに人の心に広がっていく音楽の素晴らしさが感じ取れた。

ツィメルマンは録音を多く行なっていてもリリースされている曲は極めて少なく、私の手元にも協奏曲のCDしかないので、演奏会場でソナタの録音盤を買い求めたかったが無かった。リリースを容易に許可しないアーティストであることを改めて知った。

13年日本ツアーでキャンセルになった公演が12月に5公演、1月に5公演が延期公演になっている。残る公演は20日の東京と23日の横浜のみ。無事に開催されて日本のファンの満足が得られそうである。
この10年間で日本でのリサイタルが130回には達しているというから、このピアノの巨匠が如何に日本のファンを大切にしているかが判る。今回の延期公演が可能になるアーティストも珍しくて、有難く思うばかりである。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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