辻井伸行 日本ツアー 2013~14

辻井伸行 日本ツアー《ショパン&リスト》

2013年11月末から2014年3月末まで辻井伸行の全国ツアーが19公演予定が組まれている。半年ほど前からチケットの先行予約販売が行われていて各地で早々に売り切れの状態である。未だ辻井ブームが収まらない。

2009年の第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで日本人として初優勝して、ブレイクしてからの日本国民の辻井のコンサートにかける期待は凄まじい。社会現象が起きたと言っても良い。
私が最初に彼のリサイタルを聴いた08年はそれほど知名度が高くなかった。09年のリサイタルのチケットは、彼が優勝して大評判になる前に購入していた。その後、チケットの販売方法が変って座席が指定できないので購入しないことがあった。それでも12年は2回、13年も2回、コンサート通い、今回はほぼ希望通りの席が手に入った。辻井のコンサートは今回が6回目である。
今回は12年1月以来のリサイタルでショパンとリストがたっぷり楽しめた。

辻井伸行の経歴は今更書くまでもないが、クライバーン・コンクール以来の国際的活躍は目覚ましく、彼の音楽性と演奏技術もどんどん向上しているとの評価が高い。11年11月にはカーネギー・ホールの招聘でリサイタル、12年5月にはアシュケナージ指揮フィルハーモニア管の定期演奏会でロンドン・デビュー、7月にはゲルギエフの招きでサンクトぺテルブルグの白夜音楽祭へのデビュー、13年7月には英国最大の音楽祭「BBCプロムス」にデビュー。国際的にも注目されるピアニストに成長している。映画音楽も担当して、作曲家としても活躍している。

日時:2013年12月11日 午後7時開演
会場:札幌コンサートホールKitara大ホール

〔演奏曲目]
ショパン:ノクターン 第20番《遺作》
     ノクターン 第18番 
     アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
     ピアノ・ソナタ 第2番《葬送》
リスト:エステ荘の噴水
    ペトラルカのソネット 第104番
    愛の夢 第3番
    ラ・カンパネラ
    イゾルデの愛と死
    グノーの歌劇《ファウスト》からのワルツ

今回のツアーは辻井のソロ・コンサートでショパンのエッセンスが盛り込まれた作品とリストの超絶技巧を駆使した作品。

「ノクターン20番」(1830年作)は映画「戦場のピアニスト」で使われた曲で忘れ難い名曲となっている。先日この曲を及川浩治がアンコール曲で弾いた。同じ遺作で21番がアンコールで弾かれることがこの数年多かった。20番のメロデイが流れると、いつも映画の場面が目に浮かぶ。美しい曲であるが、いろいろな感情が心の中を行き交う。

《華麗なる大ポロネーズ》はポーランドの民俗舞踊の輝かしい音楽を「アンダンテ・スピアナート」の滑らかで、ゆっくりとした音楽を序奏にして組み合わせた曲で、演奏機会の多い人気曲である。

「ピアノ・ソナタ第2番」を辻井は“コンサートで弾くのが夢だった”と語っている。第3楽章の葬送行進曲だけが、全体の曲の完成2年前に作られていたようである。暗くて重い雰囲気の曲を、辻井は丁寧にゆっくりとしたテンポで曲を紡ぐ。長い行進曲の後の第4楽章は独創的な短い楽章のフィナーレ。

聴衆は行儀が良く、反応もおとなしかった。緊張感が漂っていたのか、静かな雰囲気で何となく盛り上げ方が不足する感じがした。

後半の最初はリストの《巡礼の年》から2作品。「エステ荘の噴水」は《巡礼の年 第3年》(全7曲)の第4番。エステ荘の噴水の水しぶきや煌めきを表現した作品。ドビュッシーに間違いなく影響を与えた作品と解る印象的な曲。「ペトラルカのソネット 第104番」は《巡礼の年 第2年「イタリア」》(全7曲)の第5番。ペトラルカの詩集に基づく曲で恋の喜びや苦しみが描かれていて、今までに数回アンコールに聴いたことがある。

「愛の夢 第3番」と「ラ・カンパネラ」は言及の必要が無いほど、リストの曲として演奏頻度が高く人々に広く親しまれている。誰でもが耳にしたことのあるメロディ。超絶技巧を要する演奏に、おとなしかった聴衆も歓喜の表情でブラボーの声もあがった。

歌劇の一部を編曲した曲が2曲。ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》第3幕で歌われる「イゾルデの愛と死」。ワーグナーのこの曲は聴いているが、リストの編曲を聴くのは初めてかも知れない。ドラマテイックな音楽。「グノーの歌劇《ファウスト》からのワルツ」はCDを持っているので、予め聴いてみた。この曲は「リゴレット・パラフレーズ」などと並んで有名なパラフレーズ(編曲)であり、超絶技巧の有様はやはり生で見て聴くのは大違いであった。
最後の曲として聴衆を感動させるのに充分な曲。一段と大きな拍手とブラボーの掛け声があがった。

今日では当たり前になっている交響曲や歌劇の鑑賞が出来なかった時代に、リストが交響曲や歌劇をピアノ曲に編曲して人々に紹介していた偉大さを改めて痛感するのである。

アンコールに応えて、ショパン:ノクターン 第8番
もう一曲演奏の前に辻井から言葉があった。“2011年3月11日の東日本大震災の際に音楽家としてあげれることを考えて作った曲を演奏します。”
辻井伸行:それでも生きてゆく

ソロ・リサイタルでは最近は稀な満員の客席。P席も3階席も満員状態。ただ5ケ月前に完売になってしまって、演奏会当日に来場できない人が出るのは止むを得ない。それでも完売で50席以上空席の時もあるので、今日はそれほど空きが目立たないようであった。
客層も幅広くて、小さな子供から高齢のご夫婦まで全体として女性客の姿が多く目に付いた。
上品なコンサートと言えば、言えなくもないが、もう少し熱狂的な雰囲気になっても良かったのではないかと思った。

辻井の演奏会は全国どこもチケットが完売。12月、3月と強行スケジュールが続く。毎回、真摯な態度で演奏に取り組み全力を尽くしている様子であるが、くれぐれも健康に留意して頑張ってもらいたいと思う。コンサートでは彼の心にどんどん響く応援が展開されることを切に望みたい。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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