パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマ―フィルハーモニー管弦楽団

〈Kitaraワールドオーケストラ&オペラシリーズ〉

「世界一のベートーヴェン」と絶賛されるP・ヤルヴィ&ドイツ・カンマ―フィルハーモニー・ブレーメンのオール・ベートーヴェン・プログラム

パーヴォ・ヤルヴィは1962年、エストニア生まれのアメリカ人。父親のネーメ・ヤルヴィは偉大な指揮者。(02年スウェーデン国立交響楽団を率いてKitaraで公演。)弟のクリスチャン・ヤルヴィも07年3月に札幌交響楽団を客演指揮。ヤルヴィ一家は80年アメリカ移住。パーヴォはジュリアード音楽院やカーティス音楽院で学ぶ。95年ロイヤル・ストックホルム・フィル、96年バーミンガム市響の首席客演指揮者に就任。

01年、シンシナチ響の音楽監督に就任して、11年に退任するまでに同楽団をアメリカ有数のオーケストラに育て上げて世界の注目を浴びた。03年11月にKitara初登場。04年からドイツ・カンマ―フィルハーモニー・ブレーメンの芸術監督。06年からフランクフルト放送響の音楽監督も務める。10年からパリ管弦楽団の音楽監督も兼務して、世界中を飛び回って活躍している。一時期は4つのオーケストラのシェフを務め八面六臂の活躍に世界が驚いた。15年から日本のNHK交響楽団の首席指揮者就任が決まっている。

今月はパリ管とドイツ・カンマ―フィルの2つの楽団を率いての日本ツアー。歴史と特徴の違う楽団を同時期に率いての異なった指揮ぶりに注目が集まる。

ドイツ・カンマ―フィルハーモニー・ブレーメン(Deutsche Kammerphilharmonie Bremen)は創設が1980年。当初の本拠地はフランクフルトであったが、92年に本拠地をブレーメンに移した。今回の来日公演では「ドイツ・カンマ―フィルハーモニー管弦楽団」とか「ドイツ室内管弦楽団」と呼ばれている。30年余りの歴史しかない新しいオーケストラであるが、現在「メジャー・オーケストラ・トップ10」に入るほどの世界で評判のオーケストラである。

95年にヘンゲルブロックを芸術監督に迎えて優れたアンサンブルを誇る音楽集団となり、99年からダニエル・ハーディングが音楽監督になって更に進化を遂げ、04年にヤルヴィが2代目の芸術監督に就任。09年ザルツブルク音楽祭でベートーヴェンの交響曲チクルスを行うほど、ベートーヴェンの交響曲全曲の演奏と録音で世界的な反響を巻き起こした。

この話題のオーケストラをこんなに早くKitaraで聴けるとは予想していなかったので喜びも一入である。

《オール・ベートーヴェン・プログラム》
 歌劇「フィデリオ」作品72より 序曲
 交響曲 第4番 変ロ長調 作品60
 交響曲 第3番 変ホ長調「英雄」作品55


歌劇「フィデリオ」はベートーヴェンの唯一のオペラであるが、このオペラのために書いた4つの序曲がある。「レオノーレ」第1番、第2番、第3番と「フィデリオ」である。歌劇の内容はレオノーレという女性が男装して、フィデリオと名を変え捕らわれの身になっている夫を救い出す話。「レオノーレ第2番」、「レオノーレ第3番」を聴く機会が多かったので、序曲だけ耳にしているとレオノーレとフィデリオの区別がつかない時期があった。「フィデリオ」序曲は比較的に短い曲で久しぶりに聴いた。

「第4番」は2管編成で、フルートが1本しか使われず、9つの交響曲で最少の編成。
偶数番号で第6番を除いて演奏される機会も少ないが、カルロス・クライバーの名盤を聴いたりしているとエネルギーに溢れた曲である。今日の生演奏でも活気に満ち溢れたメロディが展開され、生き生きとした音楽が繰り広げられた。軽快で明るい曲で、特に木管のソロが美しい旋律を奏でた。
第1バイオリンの対抗配置に第2バイオリン、コントラバスが下手、ティンパニが上手で弦楽器の後に配置。ステージの楽器配置や管楽器奏者の演奏が見易い1階後方中央の座席から鑑賞。
めったに聴く機会のない「第4番」を大いに楽しんだ。第1楽章が終って拍手をする人もいたが、指揮者がそのお客さんを見て、どんどん拍手を続けさせる仕種を見せて会場が和む場面もあった。
絃5部27名。管楽器11名。打楽器1名。39名から成る室内管弦楽団の演奏が充分に発揮された印象を受けた。

前半が終了して大拍手はあったが、ブラボーの声が上がらなかったのは最近のコンサートでは珍しい現象。
休憩時間中にホアイエでパーヴォ・ヤルヴィ関連のCDや雑誌が販売されて指揮者のサインが演奏会終了後に貰えるとあって賑わっていた。私も普通ならCDを買い求めるのだが、今回はその気分にならなかった。

実はパーヴォ・ヤルヴィがKitaraで指揮をするのは今回で3回目なのだが、彼は2003年にKitaraでシンシナチ響と公演を行なったのをすっかり忘れているらしい。Kitara Clubのインタビューに答えて、彼は「2012年5月にフランクフルト放送交響楽団との演奏会で初めて札幌を訪れた」と7月発行の情報誌で述べている。ゲルギエフやマゼールは初めてKitaraを訪れた時にホールの素晴らしさに感動して、彼らは度々Kitaraで演奏会を開いている。海外の指揮者や演奏家はKitaraを絶賛している。大ホールだけでなく、指揮者用の楽屋もステージの真ん前にあって印象に残るのが普通である。パーヴォ・ヤルヴィの父や弟もKitaraで指揮を行なっている。それだけに彼が12年に初めてKitaraを訪れたというのは信じ難いと思った。だが、出版社の話ではインタビューの録音で確かめたが、彼の発言通りに記事を載せたとのことであった。
こんなことがあって、この指揮者への憧れの気持ちが一瞬萎えてしまったのである。

後半の「第3番」の楽器編成が少し大きくなるかと思ったが、ホルンが3本になっただけで、基本的に2管編成で総勢41名。最初は何となく物足りないと感じていたが、気分も高揚してきて、ホルンの三重奏があった第3楽章スケルツォあたりから盛り上がった(これは個人的な気分の問題だったが、、、)。マエストロの動きも大きくなり、踊るような仕種を見せて第4楽章のフィナーレへ向かう盛り上げかたは流石一流のマエストロを感じさせてくれた。「英雄」でこんなリズム感を味わったのは初めてかも知れない。

プログラムの前半はオーケストラ、特に管楽器奏者に目がいっていたが、後半は指揮者に注目する場面が多かった。演奏スタイルが「英雄」では明らかに違っていた印象を受けた。大編成で圧倒的な迫力のある演奏を期待しがちだが、ベートーヴェン時代の2管編成での交響曲演奏の魅力が伝わってきた。ドイツ・カンマ―フィル・ブレーメンが世界の注目を浴びる所以が判ったような気がした。

曲が終ると聴衆の拍手の音も一段と大きくなって、ブラボーの声も上がった。オール・ベートーヴェン・プログラムは人々を魅了したようだ。自由自在にオーケストラを操る世界最高の指揮者の一人の演奏に魅せられた。

アンコール曲が2曲。
 ブラームス:ハンガリー舞曲第1番
 シベリウス:悲しきワルツ

異なった趣の曲でいやが上にも聴衆の感動の想いが深まった様子。家路につく人々がコンサートの余韻を楽しみながら公園内を歩く姿は心地よいものであった。





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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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