上杉春雄 2013 デビュ―25周年記念コンサートシリーズ

上杉春雄のコンサートは03、06、08、10、12年に続いて6回目である。最近は池辺晋一郎との共演による室内楽のコンサートが多くて、リサイタルは久し振りである。

上杉春雄は1967年北海道生まれ。1981年のピティナ・ピアノコンペティションG級で金賞を獲得して注目され、早くにCDデビュー。北海道大学医学部に進学しながら、マリア・カナルス国際コンクールに入賞。88年東京サントリー大ホール、大阪ザ・シンフォニーホールでデビューリサイタル。リサイタルの他に、オーケストラとの共演、諏訪内晶子との全国各地でのジョイント・コンサートを行なって、医学と音楽の両立を目指して活動したが、一時音楽活動を休止した。東京大学大学院やスウェーデン・ウプサラ大学で研鑚を積んだ後、03年に再デビュー。09年にクロアティアやオーストリアなど海外でもリサイタルを開いた。現在、札幌麻生脳神経外科病院神経内科医長。J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集」連続演奏会の開催、月刊クラシック音楽情報誌《ぶらあぼ》で連載を受け持つ活動など、医者・ピアニストとしてのユニークな文筆活動も注目される。

デビュー25周年記念コンサートシリーズ  ”時を聴く”

〈本日のプログラム〉

バッハ[1685ー1750]:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調BWV903
クセナキス[1922-2001]:ヘルマ(1960~1961)
ベートーヴェン[1770-1827]:ピアノソナタ第31番 変イ長調 Op.110
ストラヴィンスキー[1882-1971]:ペトル―シュカからの3楽章(1914)
ショパン[1810-1849]:ピアノソナタ第3番 ロ短調Op.58

時代的にも音楽的にも異なる5人の作曲家の曲を演奏。バッハの曲はモダンピアノよりチェンバロの響きの方が似合うかなと思った。クセナキスという名は今回初めて聞いた。現代音楽で宇宙を飛んでいるようなつもりで興味津々。ベートーヴェンの第31番は今では聴き慣れた名曲。第1楽章は豊かな詩情が漂い、第3楽章は壮麗なクライマックスで独創的なソナタ。

「ペトルーシュカからの3楽章」は今年のヴァン・クライバーンコンクールでオンデマンド・ビデオで初めて聴いて魅せられた曲。バレー音楽のための曲は聴いたことがあるので、メロディは親しみがあった。見ていても難曲と思えるほどの素早い手の動きとリズム感は魅力的で、直ぐその音楽に惹きこまれてしまう。上杉自身のプログラム・ノートによると、彼が高校1年の時にアメリカ演奏旅行で楽譜を見つけて、その後、この曲を日本で最初に録音したピアニストになったそうである。
圧倒的な演奏テクニックで聴衆を惹きつけ、演奏終了後、一段と大きな拍手がホールに鳴り響いた。初めて聴いた人が多かったのではないかと思った。

10年前のリサイタルでは「ソナタ第2番」を弾いた。当時のプログラムによると、ラヴェル、リスト、メシアンも弾いている。今夜も、すべて持ち味の違った作曲家の大曲を難なく弾きこなして見せた。このピアニストに苦手な曲はないのではと思わせるような見事な演奏。
上杉のコンサートで今日ほど感動したことはない。室内楽での印象とは比べようもないほどの迫力。今日のプログラムでの体力・精神力も合わせて凄いと感じた。
プログラム・ノートでの文筆力、コンサート当日の理路整然とした話も含めて、知性的ピアニストとしての人間力を改めて印象づけた。感性と知性の二つの局面を持つ上杉春雄。医師とピアニストの両立を果たしている能力に感服するのみである。

アンコールに「ショパンのノクターン第21番」。若いころの作品で遺作。もう1曲は良く聞き取れなかったが、乞食同然の生活をしながら80歳近くになって話題になり、85歳で野垂れ死にしたというモーツァルトと同時代の作曲家の作品。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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