札響名曲シリーズ 2013-2014 vol.3

森の響フレンドコンサート 札響名曲シリーズ 2013-2014 vol.3

エリシュカの田園

ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調「田園」
ドヴォルジャーク:スラヴ舞曲集 作品46(全8曲)

チェコ出身のラドミル・エリシュカが2008年に札幌交響楽団の首席客演指揮者に就任してから、毎年4月に定期演奏会に出演してきた。過去6年間でチェコ音楽シリーズを6回開催して、ドヴォルジャーク、ヤナーチェクの音楽を紹介してきた。ドヴォルジャークの交響曲第5番、第6番、第7番をいち早く演奏曲目に取り入れ、スターバト・マーテルや交響詩など比較的に馴染みの薄いチェコの曲を紹介してくれた功績は大きい。

2012-2013年の札響名曲シリーズでは≪古典神話の主人公≫というタイトルで、「ベートーヴェンの《プロメテウスの創造物》序曲」、「ハイドンの交響曲第88番《V字》」、「モーツァルトの交響曲第41番《ジュピター》」を演奏。12月には札響特別演奏会で「ベートーヴェンの第九」も指揮。
これまでにチェコ音楽の祖、スメタナの「わが祖国」も指揮したと思うが、残念ながらその折は聴く機会を持たなかった。

チェコ音楽シリーズは一区切りついたが、今日は「ドヴォルジャークのスラヴ舞曲集 第1集」。来週の10月定期では「ドヴォルジャークのチェロ協奏曲」が予定され、まだまだチェコ音楽は続く。

本日の最初のプログラムはベートーヴェンが自然を愛し、田園への愛情を綴った交響曲。ベートーヴェンの奇数の番号の交響曲と比べて偶数の曲が演奏されることは極端に少ない。ほぼ同じ時期に作曲された「運命」と「田園」は若い時に好んでLPで聴いていた。「田園」は室内楽的なところがあって、聴いていて心が落ち着いて平和的な気分になる。
朝比奈隆はヨーロッパ中で「第6番」を演奏しまくっていたようだ。彼の話によると、オケの常任指揮者が「運命」とか「英雄」みたいな派手な、聴衆に受ける曲を先に取ってしまうので、残った曲が客演指揮者に回ってくる。ベートーヴェンの9曲の中で「田園」は指揮者にとって一番難しい曲になっているらしい。彼自身も常任指揮者になって、第6番を避けることになったと述べている。

交響曲第6番《田園》は5楽章構成。各楽章に標題がついている。
第1楽章:〈田舎に着いたときの愉快な感情の目覚め〉。田園の楽しさが横溢している。
第2楽章:〈小川のほとりの情景〉。木管楽器で奏でられる小鳥の鳴き声が印象的。
第3楽章:〈農民たちの楽しい集い〉。野性味あふれる舞曲。
第4楽章:〈雷雨、嵐〉。
第5楽章:〈牧人の歌。嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち〉。全体に感謝の感情が満ち溢れていて、美しい楽章。
全体的に標題音楽ではなく、ベートーヴェン自身も「絵画描写というよりも感情の表出」と但し書きを付けている。エリシュカにとって、この「第6番」は、むしろ得意とする曲ではないかと思った。ボヘミアの自然を感じながら、札響から美しい音を引き出したのではないか。自然をあるがままに受けいれて生活する人々の感謝の気持ちが聴衆の心にも響きわたったとしたら嬉しいことである。

後半のドヴォルジャークの「スラヴ舞曲集」。演奏会のアンコール曲などとして、その1曲か数曲が演奏されることが多くて、全曲が演奏されることは稀である。「スラヴ舞曲集」は第1集作品46 全8曲と第2集作品72 全8曲があり、全部で16曲ある。ブラームスのお蔭でこの曲集が生まれたことは良く知られている。

第1番:フリアント ハ長調。ボヘミアの代表的な舞曲。
第2番:ドゥムカ ホ短調。ウクライナを起源とする舞曲。
第3番:ポルカ 変イ長調。チェコの代表的な舞曲。
第4番:ソウセツカー ヘ長調。ボヘミアの優雅な舞曲。
第5番:スコチナー イ長調。チェコの急速な舞曲。
第6番:ソウセツカー 二長調。第4番と同じスタイル。
第7番:スコチナー ハ短調。第5番と同じスタイル。木管が印象的。
第8番:フリアント ト短調。第1番と同様、急速なフリアント。

最初と最後にフリアントをもってきているのが特徴的。ボヘミア民謡の旋律が効果的に使われている。チェコ出身の偉大な指揮者ラファエル・クーベリックやヴァ―ツラフ・ノイマンたちの流れを引き継ぐチェコの音楽家には彼ら独特の「口承伝承」の部分がその音楽のなかにあるようだ。

エリシュカはその音楽性と共に、札響のメンバーと心を通わせるものを作り上げた人間性が素晴らしい。札幌コンサートホールKitaraに彼の音楽を染み込ませた。聴く者すべての心に染み入る音を届ける指揮者と言えよう。1931年生まれで80歳を超えているが、その指揮台に立つ姿は若々しい。

アンコール曲に「ドヴォルジャーク:弦楽セレナード ホ長調 作品22から 第1楽章」。ホアイエ出口のボードに「変ホ長調」と書かれていたが、変ではないか。正しくは「ホ長調」だと思う。





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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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